私大天下り役員受入れワースト1は共立女子大、助成金等6億6千万流れる
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私大天下り役員ワースト10。公的資金のお土産付きで官僚が天下っている構図がよくわかる。民主党があっせんを禁止しても全く無意味。カネが流れる以上、あっせんなどなくとも私学側が「引換券」として役人OBを受け入れる。 |
- Digest
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- 私学の「建学の理念」とは相いれない天下り役員
- 「縦割り行政の弊害」で情報クローズ
- 調査概要
- ワースト1は政官学のコングロマリット「共立女子大・短大」
- 天下り問題の基本の「き」を理解していない獨協大
- 元金融庁長官、検察、衆院幹部が役員の駿河台大
- 昭和音大「無回答」、不祥事続出の獨協は「天下り監事」任せ
- 天下り問題の基本の「き」さえも理解していない獨協大
- 立命館、日本女子大、日大、明治学院大等も
- 民主党マニフェストで解決しない“私大天下り”
- 厚労省天下りのメッカ“名ばかり私立”日本社会事業大学
- “エセ私立”産業医科大
- 総務省が支配する「自治医科大学」
私立の大学・短期大学を経営する学校法人に天下っている官僚ОBが一体どれくらいいるのかというと、08年4月時点で1102人、天下り先の学校数は207法人(私大・短大を経営する全学校法人の約3分の1)に及ぶ。(*衆院調査局が取りまとめた「国家公務員の再就職状況に関する予備的調査報告書」に基づく)
私大の天下りポストは、大きく分けて役員、教員、職員の3種類だ。
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今回対象としたのは、私大・短大の「役員」ポストへの官僚ОBの天下りである。
私学の「建学の理念」とは相いれない天下り役員
「役員」の天下り調査の意義は三点。
一点目は、補助金を申請する側が、補助金を交付する役所のОBを雇うこと自体、そもそも不適切であること。しかも一職員ならまだしも、大学・短大を代表して学校法人の業務を総理する「理事長」、学校法人を代表して理事長を補佐する「理事」、学校法人の業務、財産を監査する「監事」の役員ポストに就くことは、一職員とは比べ物にならない権力を持ち、もっとも不適切である。
第二に、そもそも天下り役員は、私学の「建学の理念」と相いれない。もともと私学は、旧帝国大学(今の東京、京都、北海道、東北、名古屋、大阪、九州)に対抗する形で、それぞれ私学としての「建学の理念」を実践するために設立したという経緯がある。
たとえば、私学草分けの「東京専門学校」(後の早稲田大学)は、「学問の独立」を掲げている。これは政府や政党の意のままに左右されることのなく、あらゆる政治権力から独立した存在として学問・研究を行う学府という意味がある。
同じく私学の草分けの「慶應義塾」(後の慶應義塾大学)は、創立者福澤諭吉の思想が大学の理念となっているが、そこにも政府からの自立・独立という理念がある。福澤諭吉の著書「学問のすすめ」の第四編「学者の責任とは」には、「一国の文明を発展させるには、ただ政府の力のみに頼ってはならない」「民間の事業のうち十に七、八までは官に関係している。このおかげで世間の人の心は、ますますその習慣に染まっていき、官を慕い、官を頼み、官を恐れ、官にへつらい、ちっとも独立の気概を示そうとするものがない。その醜態は見るに耐えない」と政府からの独立を鮮明にしている。
他の私学でも、「専修学校」(後の専修大学)、「明治法律学校」(後の明治大学)、「英吉利法律学校」(後の中央大学)、なども、官学教育システムからの「学問の独立」を理念に掲げて設立された。(私学の歴史の参考文献「私立大学の源流――『志』と『資』の大学理念」(大西健夫 佐藤能丸 編著、㈱学文社))
こうした「在野の精神」が私大の源流なのだ。その後、戦中、戦後と大学は増え続け、今年4月1日現在、日本には595校の私立大学(在学者数208万7263人)、399校の私立短期大学(同16万9510人)があるが、ごく一部の厚労省や総務省が支配する大学を除き、いずれも国の手法とは違う教育を志向した理念を掲げて設立された。
そこに、国家公務員の天下りОBが役員として入り込むことは、建学の理念に明らかに反す。
「縦割り行政の弊害」で情報クローズ
三つ目の意義は、公益法人の一種であるにもかかわらず、私大・短大を運営する学校法人は情報公開が遅れていること。
例えば官僚の天下り先の財団・社団法人の場合、HP上で「役員名簿」を公開している。そして役員の中に国家公務員出身者がいる場合は、大抵は最終官歴が記されているので天下り役員なのかが一目瞭然だ。これは財団、社団法人全般を所管する総務省が中心となり、2002年3月29日の「公務員制度改革大綱に基づく措置について」という関係閣僚会議での申し合わせにより、課長・企画官以上の幹部国家公務員が財団・社団法人の役員に就いた場合はインターネットで公開するよう、指導等を行うことに決定したためだ。
だが、学校法人はこの取り決めの対象にはなっていない。理由を総務省に問い合わせたところ「学校法人は財団、社団法人ではないため、総務省の所管ではなく、文科省の責任なので、総務省の公益法人改革の会議などでは議論にあがったことすらない。学校法人に対する情報公開の取り決めがどうなっているかについては、こちらではあずかり知らないので文科省に聞いてください」という。
そこで文科省に学校法人の役員名簿がないのはどうしてなのか問合せると、担当者は「役員名簿を公開するよう法律などで義務付けられていないので、現状、公開するかどうかは学校法人ごとのそれぞれの判断となっています。学校法人の役員名簿の公開を法律で義務づけていない理由は、そもそもそのようなことが議論に上がったことすらないため」という。要するに、学校法人の情報公開が遅れているのは、何か特別な理由があって特例で除外されているわけではなく、縦割り行政の弊害と、それを放置した時の為政者たちのせい、なのだ。
民主党政権は、まず情報公開を義務付けるべきであろう。
調査概要
調査にあたり、私大・短大を運営する学校法人の天下りの実態を知るため、「国家公務員の再就職状況に関する予備的調査報告書」(09年5月公表)という資料を使った。これは民主党が昨年衆院調査局に調査を依頼し、今年5月に公表したもので、各省庁が所管する公益法人ごとの、天下り国家公務員の役職員の人数が記載されている。本資料は民主党のホームページで公開されており、ダウンロードで入手できた。
これだけでは、どんな人物が天下っているのかが分からない。それを知るため、各省庁が毎年公開している「国家公務員の再就職状況」という文書など、他の3つの資料を突き合わせ、経歴や、私学助成補助金など流れている公的資金の額も記入。そうやって、官僚ОBの天下り役員の人数の多い学校法人の順に作成したリストが、私大天下りワースト10(画像1)である。1位から順にみてみよう。
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ワースト1の学校法人「共立女子学園」(東京都千代田区内)![]() |
ワースト1は政官学のコングロマリット「共立女子大・短大」
ワースト1は共立女子大・短大(東京都千代田区)。元文部省事務次官、元文化庁長官、元文部省初等中等教育局長などの天下り役員が合計6人もいて、全体の46%を天下りが占めている。
しかも、当サイトの今年8月26日付の記事「潰れそうな大学・短大の経営情報非開示を放置する『大学族議員』は鳩山弟、島村、古賀誠ら」で報じたように、自民党の元文部大臣の鳩山邦夫氏も理事をしていた。つまり、“政官学”のコングロマリット(集合体)を形成する学校法人なのである。そして、共立女子大・短大には08年度に、私学助成補助金が6億4012万円、科研費が2236万円渡っている。
同学校法人に、天下り役員を雇う理由などを問い合わせた
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ワースト上位の回答文書。上が、ワースト2の日本女子体育大(学校法人二階学園)、中がワースト3の学校法人駿河台大学、下がワースト5の学校法人獨協学園
私大天下り役員全リスト(記事末尾からダウンロード可
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昔の記事ですが、私立大学と天下りの問題を指摘したもの。
巧く、優秀ですね。RT @yamauchitaiji: 「天下り官僚出身者の大学職員の方が、プロパーより優秀だ」と言い放った私大関係者もいました。 私大天下り役員受入れワースト1は共立女子大、助成金等6億6千万流れる
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読者コメント
天下りを根絶すべき立場の国会議員の
船田元の作新学院が16位とは人格を
疑いざるを得んわ!
・共立って、鳩山家との関係が深いよね。
・大学法人化の折、教職員を「看做す公務員」とすることに反対していたのは、誰だ?
・法人化以降、教授も渡り鳥して、退職金を事実上二重取りした例があるって、本当か?
共立(短大)は、他の国立大法人(東大)で懲戒処分を受け(新聞に載った)退職金を減額される前に自分で東大を退職した男性を雇った。
高校の授業料とは比較にならない高額な受験料、入学金、授業料。日本の大学はどこかおかしいですよ。次期参議院選挙ではこの根深い問題、身近な問題を切り込んでいってもいいかなと思うのですが・・
私学の建学精神に立ち返るべきことを再認識させる記事として重要。国立大学法人についても是非調査していただきたい。独立法人化される直前から現在にかけて天下りが急増していると思われる。コネによる不適正な交付金支出を招き、税金の無駄使いの一環となっている。
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