『山陽新聞』販売会社社員が自殺 遺書に「未集金６０万円超」、販売ノルマ苦か
|
| 山陽新聞社の社屋（岡山市）。岡山県で最大の部数を誇るが、多数の押し紙（部数水増し）がなされているのではないか、との指摘がある。筆頭株主で会長の佐々木勝美氏は新聞協会副会長を務めたこともある。 |
◇ 集金締め日の朝に社宅で自殺
岡山県でもっとも多くの発行部数を持つ『山陽新聞』の子会社「山陽新聞東販売株式会社」（本社岡山市）社員の男性Ａさん（４０歳代）が、職場だった支店の社宅で自殺したのは今年３月１５日午前のことである。Ａさんは支店の次長で、新聞勧誘や集金業務を担当していた。
Ａさんは地元岡山の出身で、実家は岡山市から数十キロはなれた山村にある。今年７月、筆者はそこを訪ね、実母に話を聞いた。Ａさんの父親はすでに亡くなっているとのことで、母は一人暮らしだった。７０歳をすぎ、体も具合が悪い。わずかばかりの年金が頼りだという。力を落とした様子で縁側に座り、ときおり涙をこらえながら亡き息子のことを語った。
「（Ａさんが自殺した）３月１５日、私はちょうど、危篤だった兄（Ａさんの叔父）の見舞いに行って留守にしていました。家に戻ったのが夜８時。そうしたら近所の人があっちこっち私を探しまわっていたんです。山陽新聞から電話がかかってきて、様子がわからずに出ました。『兄が病気だったもので（留守にしていた）…』と言いかけたら、電話の相手は『いやそうじゃないんです。Ａ君が自分で命を絶ちました』と…」
突然もたらされた息子の訃報に動転したことはいうまでもない。
「本当に、叫びました…。『明日警察に遺体を引き取りにきてくれ』と（山陽新聞社員から）言われて…もう何がなんだか分かりませんでした。危篤の兄が亡くなったら休みをとって葬儀に帰ってくる、つい数日前にそう電話で話していたんです。妙な様子はまったく感じませんでした。」
なぜ死んだのか。わけがわからない。それでも少し落ち着いて考えてみると心当たりがないでもなかった。
「いま思えば、おかしな（変な）、いうんですか。次々に、お金貸してほしいといってきてたんです。５万とか１０万と借りにきたんです。それで私は『お前、お母さんに何ぼ貸してくれいうとんのわかっとるんか』と。息子は『わかっとる』と言いました。ひとりの生活でなんでこんなにならにゃいけんの、いうたりしていました」
Ａさんは生前、母親にたびたび金の無心をしていた。何のための金なのかは決して言わなかったという。
◇ 「未収金６０万円」のメモ
死の原因を知る手がかりは多くはない。
山陽新聞が遺族に説明したところでは、自殺の第一発見者は同僚社員だ。Ａさんが住む独身寮は支店の３階にある。この日朝、午前９時を回って仕事の時間になってもＡさんは職場に下りてこなかった。不審に思った同僚が部屋に行ってみると、変わり果てた姿となっていた。すでに手遅れだった。死亡推定時刻は午前１１時ごろとされる。
事件後に寮の部屋を訪れた母親によれば、食事の支度をした痕跡があったという。
「ご飯を余計に炊いて一食分だけが冷凍庫に入っていて。洗濯物もかごにいっぱい入っていました。だから、部屋で発作的に自殺を図ったんじゃないだろうか、そう思うんです」
Ａさんが未明に起床した気配もあった。
「目覚まし時計が４時に鳴るようになっていました。早朝に起きて配達の手伝いをやり、いったん部屋に戻ったんじゃないだろうか。そう思います。『配達の人が休んだときには配達もやらなきゃいけないんだ』と話していましたから」
そして遺品の中からは、サラ金や信販会社など何枚ものカードが出てきた。多重債務状態だった。家族のまったく知らない事実である。
趣味は釣りをやるくらい。酒もそんなに飲んでいたとは思えない。ギャンブルもしない。しかも独身で家賃がタダ同然の寮にいるのだから、通常なら生活費に困る状況ではない。
なぜ借金をしたのか。ヒントは遺書にあった
岡山県でもっとも多くの発行部数を持つ『山陽新聞』の子会社「山陽新聞東販売株式会社」（本社岡山市）社員の男性Ａさん（４０歳代）が、職場だった支店の社宅で自殺したのは今年３月１５日午前のことである。Ａさんは支店の次長で、新聞勧誘や集金業務を担当していた。
Ａさんは地元岡山の出身で、実家は岡山市から数十キロはなれた山村にある。今年７月、筆者はそこを訪ね、実母に話を聞いた。Ａさんの父親はすでに亡くなっているとのことで、母は一人暮らしだった。７０歳をすぎ、体も具合が悪い。わずかばかりの年金が頼りだという。力を落とした様子で縁側に座り、ときおり涙をこらえながら亡き息子のことを語った。
「（Ａさんが自殺した）３月１５日、私はちょうど、危篤だった兄（Ａさんの叔父）の見舞いに行って留守にしていました。家に戻ったのが夜８時。そうしたら近所の人があっちこっち私を探しまわっていたんです。山陽新聞から電話がかかってきて、様子がわからずに出ました。『兄が病気だったもので（留守にしていた）…』と言いかけたら、電話の相手は『いやそうじゃないんです。Ａ君が自分で命を絶ちました』と…」
突然もたらされた息子の訃報に動転したことはいうまでもない。
「本当に、叫びました…。『明日警察に遺体を引き取りにきてくれ』と（山陽新聞社員から）言われて…もう何がなんだか分かりませんでした。危篤の兄が亡くなったら休みをとって葬儀に帰ってくる、つい数日前にそう電話で話していたんです。妙な様子はまったく感じませんでした。」
なぜ死んだのか。わけがわからない。それでも少し落ち着いて考えてみると心当たりがないでもなかった。
「いま思えば、おかしな（変な）、いうんですか。次々に、お金貸してほしいといってきてたんです。５万とか１０万と借りにきたんです。それで私は『お前、お母さんに何ぼ貸してくれいうとんのわかっとるんか』と。息子は『わかっとる』と言いました。ひとりの生活でなんでこんなにならにゃいけんの、いうたりしていました」
Ａさんは生前、母親にたびたび金の無心をしていた。何のための金なのかは決して言わなかったという。
|
自殺で亡くなったＡさんが働いていた山陽新聞東販売株式会社。販売店主の証言によれば、新聞購読の数字を出すために社員が自腹を切るのが状態化していたという。 |
死の原因を知る手がかりは多くはない。
山陽新聞が遺族に説明したところでは、自殺の第一発見者は同僚社員だ。Ａさんが住む独身寮は支店の３階にある。この日朝、午前９時を回って仕事の時間になってもＡさんは職場に下りてこなかった。不審に思った同僚が部屋に行ってみると、変わり果てた姿となっていた。すでに手遅れだった。死亡推定時刻は午前１１時ごろとされる。
事件後に寮の部屋を訪れた母親によれば、食事の支度をした痕跡があったという。
「ご飯を余計に炊いて一食分だけが冷凍庫に入っていて。洗濯物もかごにいっぱい入っていました。だから、部屋で発作的に自殺を図ったんじゃないだろうか、そう思うんです」
Ａさんが未明に起床した気配もあった。
「目覚まし時計が４時に鳴るようになっていました。早朝に起きて配達の手伝いをやり、いったん部屋に戻ったんじゃないだろうか。そう思います。『配達の人が休んだときには配達もやらなきゃいけないんだ』と話していましたから」
そして遺品の中からは、サラ金や信販会社など何枚ものカードが出てきた。多重債務状態だった。家族のまったく知らない事実である。
趣味は釣りをやるくらい。酒もそんなに飲んでいたとは思えない。ギャンブルもしない。しかも独身で家賃がタダ同然の寮にいるのだから、通常なら生活費に困る状況ではない。
なぜ借金をしたのか。ヒントは遺書にあった
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数：残り4,750字／全文6,309字
販売店に向けて次々にトラックで運び出される『山陽新聞』の朝刊。このうちの多くは配られないまま廃棄されている、との指摘がある。一方で新聞社側はこれを否定する（午前零時すぎ、岡山市の山陽新聞社新聞製作センター）。
山陽新聞東販売株式会社。Ａさんが自腹を切っていた可能性について刈田社長は取材に対し「そういうのがあったのかもしれません」と述べた。だがそれ以上の詳しいことは明らかにされていない。
公式SNSはこちら
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
自分は新聞関係者ではないし、新聞も購読していないが、新聞業界の斜陽産業っぷりが酷すぎて見ていられないですね。
ネットの発達した現代で、莫大なエネルギーを使って紙に印刷し人力で配達している事自体がおかしい事に気がつかないといけないのでは？
排除はされてません。表向きは注文部数制度となってますが、注文部数を本社に送れば定価の改正やチラシ減、店の改廃等で経営できなくなる圧力が生まれています。合同の定価設定はむごいですよ。
大分合同新聞は、かなり前に共産党の支援で押し紙を排除したはずですが、どうなってしまったのでしょうか？
大分合同新聞もかなりヒドイ状態です。黒藪さんに取材して頂きたいです。
（「公査」の対応の手口）は日本ABC協会は過去の経験で知りつくしている。「提出された資料で判断するので、こちらとしてはどうしようもありません」とは開いた口がふさがらない。日販協からの半世紀以上にわたる新聞族議員への献金の圧力とおこぼれによってまじめに己の仕事をしていない事実はいまでは多くの者が知っている。
岡山県の山陽新聞社に公査に入ります。浦安販売センターです。かなり部数改竄をするとの情報です。しかし、提出された資料で判断しますので、こちらとしてはどうしようもありません。
日本ABC協会職員と名のって述べているが、万が一そうならば、山陽新聞など地方紙の「押し紙」（残紙）を問題にするよりも、桁違いに多い全国紙をなぜとりあげないのか？
現在、日本ＡＢＣ協会の公査の時期です。山陽新聞販売㈱各支店では数合わせで大変らしい。
確かに「業界ヘッドロック」を読んでる人の方が多いかも（笑）
新聞社の落日を週刊現代がよくかいてるが。講談社はＭＮＪの宿敵であったか！
私も何度もコメントしましたが、確かに何人かの「固定読者」が見ているだけで、大きな変化や影響はなさそうに感じます。「マイニュース」より「マイオピニオン」ジャパンにでも改名をお勧めします。自らは取材せず、主張もしない。考えてみればおかしいと思いませんか？このままでは大きくは伸びない気がします。
販売店は今は、何もできません。
裁判に訴えれば様々な手を使って新聞社から潰されるだけです。
誰か助けてぐださい。
私はパソコンがうまく使えないが、誰か世界の方々に連絡を取って新聞業界の押し髪問題と窮状を伝えてほしい。
問題は違うがシーシェパードの連中のような方々。
日本人だけではマスコミの改革はできないだろう
ここでいくら書いても何の進展もない、発言と行動あるのみ。
営業はノルマがあり、地方では代替の職が見つからない。
ゆえに、森永卓郎教授や勝間和代氏の言うように、デフレを埋める金融政策が必要です。新聞やＴＶはほとんど無視！
ＦＲＢはさらに49兆円の国債買取を決めた！
合計１５３兆円
「押し紙」「積み紙」の議論はありますが、広告主にとっては、関係ありません。いずれの場合でも料金を騙し取られているということです。
「積み紙」とやらをぜひ貴紙で報じてください。購読します。
三宅
積み紙の証拠は山ほどあるが、押し紙の証拠なんて見たことないよ。そして粉飾部数により広告料収入に貢献しなかった人間が、その粉飾部数分も補助を受け取るために、補助の目減りが進んでいる。そのツケがこのような末端での悲劇につながっている。次の悲劇を防ぐためにも詐欺店主をきちんと駆逐して、補助金は貢献に応じた配分にすべきだ。
中国新聞では押し紙がないという意味でしょうか。ならば貴重な例外ですね。押し紙タブーのない新聞は稀有ですので、ぜひ山陽新聞のこの事件を報道するよう働きかけてください。
三宅
山陽新聞の隣の中国新聞の関係者ですが、当社では山陽新聞のようなことはありません。
黒藪さんのレポートに詳しいですが、すくなくとも「押し紙」に関していえば、程度の差はあってもほとんどの新聞社がやっています。やっていない新聞社があるとすれば、そのほうが例外のように思います。
信濃毎日新聞では、山陽新聞のようなことはありません。山陽は例外ではないでしょうか。地方紙でも問題がある新聞社はあるでしょうが、同じように見られるのは心外です。
山陽新聞の会長って文化勲章もらったんですよね。派手なパーティーやってたけど、これじゃあブラック企業だな。
県知事の実家も山陽新聞の販売店だし、馴れ合いだな。
地方紙にしては、すごい社屋ですね。
業務報告書入手。実配数と定数の差が９００もある。これは告発しなければならない。
新聞社の拡張に踊らされ今まで多くの販売店主・販売店社員が生活破壊にあった事か、販売店関係者の命を犬、猫、以下に扱う新聞社に抗議しよう。
普通こうなる前に皆辞めていったけど。どうして最悪の結果になったのかわからない。たとえ辞めたとしても未収金は退職金から引かれるが、そこまでしがみつく価値はないと思う。
よく知っている方だけに、ご冥福を祈りたい。
新聞社はついに間接殺人までやり始めたか・・・
正直、亡くなられた方は新聞社に殺されたと思う。無理なノルマを課し続け、精神的に追い込んだんだろう。
最低だ
社長、真実を明らかにしてください。それでも編集出身のやることですか？隠蔽ばかりじゃないですか。社員一同恥ずかしい思いをしています。
押し紙 折込チラシ詐欺と何かと胡散臭い新聞社です。
他の全国紙 地方紙は同じ穴の狢と思われたくないだろう。
ほんとに迷惑な新聞社だ。
A氏のご冥福をお祈りします・・しかし紙ベースの新聞はもう厳しいとか耐えるとかいうレベルではないのかも。
記者からの追加情報
会員登録をご希望の方は ここでご登録下さい
新着のお知らせをメールで受けたい方は ここでご登録下さい (無料)
企画「まだ新聞読んでるの？」トップページへ
企画「納税者の眼」トップページへ