ポスト戦後のキャリア論-10 望む仕事内容に就くには②
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文藝春秋2010年7月号 |
- Digest
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- 2007年が最後の売り手市場だった
- 新卒で独立系を選ぶ(23才~)
- 財閥系デベロッパーへ(26才~)
- 不動産ファンドへ(29才~)
2007年が最後の売り手市場だった
日産自動車は、この氷河期の中途採用が特に顕著だった。ゴーン改革でいったん中高年をリストラして組織を絞りあげ、業績をV字回復させたあとで、「MCS(ミッドキャリアスタッフ)採用」と称して、2003年~2004年の2年間で約1200人も採った。
採用のターゲットとなったのは、当時、業績悪化で新卒採用を控えていた30代前半~中盤の氷河期世代だった。
ただ、景気が回復しても、その時点で能力が磨けていない人材が採用されることはない。単にフリーターをやっていて27才になりました、という人は採用されない。Fさんのように、働いていなくとも、海外でさらにビジネス知識やIT、英語力を増強するなど、付加価値がなければ23才には勝てない。
さらにいえば、今後、国内の人口が減り続け市場が縮小していくことは分かっており、グローバル化の流れのなかで、国内採用枠は小さくなっていく。一方で大卒者数は高止まりのままだ。したがって、上昇志向の強い韓国や中国の学生との競争が避けられなくなる。
国内エレクトロニクスのトップ企業、パナソニックの大坪文雄社長による人材採用グローバル化宣言は、その象徴だ。
徹底したグローバル化は人材採用でも進めます。来年度は1390人を採用する計画ですが、このうち「グローバル採用」枠を1100人としました。日本国内の新卒採用は290人に厳選し、なおかつ国籍を問わず海外から留学している人たちを積極的に採用します。今年度は1250人採用しましたが、内訳はグローバル採用が750人、国内新卒は500人。人材採用の面でも、来年度からグローバル化への対応をドラスティックに進めることになります。
――『わが「打倒サムスン」の秘策』(文藝春秋2010年7月号)
パナソニックの規模で、国内採用をわずか290人しか行わず、それさえも「海外から留学している人たち」を含めた人数。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも、2010年の国内新卒採用者約200人のうち、外国人が半数を占めた。2011年も国内新卒採用予定600人の半数を外国人にすると公表している。
つまり、中国にGDPで追い抜かれる日本にとって、もはや有望な市場は国内にはないから、日本市場向けの日本人社員は既に在籍中の中高年がやればよいのであって、必要なのは、新たに攻めねばならない新興国向けの要員なのだ。そしてそれは国内より現地で採用したほうが低コストで優秀だから、国内で日本人を採用する理由がない。国内の大学を卒業する日本人学生にとっては、「リーマンショック前で小泉政権下の2007年が最後の売り手市場だった」と歴史に刻まれる可能性が高いのである。
したがって、
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読者コメント
2008年の就職活動も売り手でしたが・・翌年ごろからは内定取り消しが相次ぎ、09年、10年と悪化する一方。今の新しい氷河期世代は前の氷河期世代より悲惨かも。それでも仕事にはやりがいが欲しい。
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