トヨタ系アイシン精機社員が語る 「タダ働き10万時間、未払い賃金3億円」の実態
愛知県刈谷市にあるアイシン精機の共同館と名付けられたビル。周辺には本社事務本館、技術本館、医療関係やメンタル疾患を扱う部署があるウェルセンターなど、アイシン関係のビルが並ぶ。 刈谷市には、アイシン精機やデンソーなどトヨタグループの大企業が集中し、その建物群は非常に目立つ。手前は、同社でずっと無償残業撲滅を訴えて活動してきた田村政志氏(ATU=全トヨタ労働組合書記長)。 |
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- パソコンに出張記録を偽装、実際は会社で残業
- サービス残業(無償残業)で経営者逮捕も
- 終業後、海水浴に行けた40年前
- 未払い残業6万8034時間・総額1億7000万円(02年)
- 労基署がアポなしで立ち入り調査
- 労働時間偽装の方法
パソコンに出張記録を偽装、実際は会社で残業
「またか、ようやく賃金ゼロの無償残業が是正されて未払い賃金が払われたというのに・・・」
2010年12 月20 日にアイシン精機の食堂に貼りだされた会社の告知文を見て、やはりと嘆くのは、1970年入社以降、残業しても1円も賃金が支払われないサービス残業(無償残業)をなくせと、有志とともに会社に働きかけてきた田村政志氏である。その田村氏が読んで唖然とした告知文とはどんなものだったのか。
無償残業の結果を社員に知らせるために食堂に貼りだされた直近の告知文を田村政志氏がメモし、あらためてワープロで記入した。 前年の09年に会社は3億円以上のタダ働きをさせ、労基署に勧告されたあげくに翌年3月に未払い金を支払った。 これで大幅に改善されると思ったら、9か月後(発覚時点からは約1年後)には、このありさまである。 告知文には事実の概要と処分が明示されているが、ここまでしないと行政処分される恐れがある。また、無償残業(サービス残業)は犯罪であり、経営者が逮捕された例もあるくらいだ。 |
「この告知文には、社員Aが在社しているのに出張をしたということにして就業時刻を改ざんしたり、終業時刻の申告時刻以降も業務をし、退場ゲートを通過せずに帰宅して勤怠データを改ざんした事例も報告されていました。
これまで何度も賃金を払わないで残業をさせ、そのうち2回は労基署の勧告により、未払い賃金を支払っています。ところが会社は、その責任を明確していなかったし、無償残業をやめるという経営陣の意思は発表されてこなかった。労基署の調査が入ったことや未払い賃金を払った一連の顛末を全社員にきちんと告知もしていなかったのです。
このような過去に比べれば、食堂に告知文を貼って広く社員に知らせたことは会社の本気度を示すという意味で意義があると思います。また労基署の勧告にしたがって未払い賃金を清算したことも含めて、40年かかってようやくここまで漕ぎつけた、というのが実感なんですよね」
またか、という感覚とともに、まがりなりにも会社がタダ働きの残業をなくそうという姿勢を示したことに充実感のようなものが田村氏から伝わってくる。
それは「私の40年間は無償残業根絶にかなり費やされましたから」という言葉からもうかがえる。
サービス残業(無償残業)で経営者逮捕も
従業員を無賃で残業させる行為は、労働基準法違反の犯罪である。残業や休日勤務の割増賃金を定めた37条はもちろん、その他の条項にも反する。実際、2003年に東京の社会福祉法人の経営者が、職員40人にサービス残業(無償残業)を長年させていたとして東京都労働局青梅労働基準監督署に逮捕されている。これがサービス残業で全国初の逮捕事件であった。つまり“サービス残業”は、経営者が逮捕されるほどの犯罪なのである。
ところが、“サービス残業”などと生ぬるい表現が、メディアにも労働側にも広まっている。はっきり言えば、サービス残業=無償残業とは奴隷労働であり、サービス残業などという言語表現は、犯罪の重さを薄める効果にしかならない。
無償残業の経過と処分結果を食堂に貼りだしたアイシン精機は、ある意味では進歩した。しかし、社内の不祥事を全社員に公表する姿勢を示したのには別の理由があるのではないか、と田村氏は見ている。
「これまでに2002年、09年と無償残業が発覚して刈谷労働基準監督署から調査が入り勧告を受けています
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2006年に無償残業が明るみに出た。社員からの通報を基にATU(全トヨタ労働組合)がアイシン精機の山内康仁社長宛てに出した申し入れ書。
アイシン精機の掲示板に貼りだされた告知文を一字一句メモしたうえ、社員の田村政志氏がワープロに打ったもの。02年につづき05年も無償残業がなされた(発覚と発表は06年)。また06年9月には労基署が調査に入ったが、この件については問題となることはなかったと、のちにATU(全トヨタ労働組合)の団交の席上で会社側は説明した。
2009年には大々的な無償残業が発覚した。この文書は、ATU(全トヨタ労働組合)が会社に出したもの。無償残業代を支払うことや、職場のタイムカードと敷地外に出るゲートでのカードリーダ装置を連動させ、15分以上の差があれば警告や注意のルールを設けることなどが要求されている。刈谷労基署が同社に勧告し、無償残業の社内調査を実施、その結果、無償残業時間は10万時間以上、未払い賃金は3億円以上と判明、翌2010年3月19日に清算して支払われた。
09年の無償残業に関する調査を受けた確認書。各社員が申告したものが間違いないか確認し、取りまとめの人材開発部に提出されたもの。
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暴走する組織
「サービス残業」というネーミングが悪いと思う。サービス=精神を連想させる。
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読者コメント
アイシンから出向してくる人は、サービス残業することが当たり前のように働いていますよ。17年4月の今でも。。。
アイシンの車体技術部長は、中国テクニカルセンター駐在当時、権限を利用して会社の交際費を着服して飲み屋の女の子に車を買い与えた人物。一般社員にはけっこうあれこれ厳しいのに、不正行為が発覚してもろくな処分もしないで部長職に置く自浄能力のなさ。これってブラック企業には当たらない?
アイシンは熊本が大変な中、設備を東海地区に移管して逃げ出すことを決めました
このようなことが大企業として許されるのでしょうか
本来ならば雇用を守る義務があるのではないでしょうか
残業代の未払いは社内でもほとんど聞かなくなりましたが「長時間労働ありき」の姿勢はカイゼンされていませんね。
「ヴィトン」はオシャレな女性の優先選択ものです。流行感に持った時計を選び、軽快なムードをプラスします。
ブブカという雑誌に、ブラック企業トヨタ特集が掲載されていますが、中身はアイシン高丘、アイシン機工の問題等、かなり踏み込んだ内容の記事でした。従業員の安全すら軽視する企業ならば、無償残業なんて何とも思わないのでしょう。大手の雑誌に掲載されない理由も、読んでいて理解できました。
海外のアイシン関連はもっとひどいです。
無休残業代ゼロ!ありえん。
昔に比べたら、タダ働きはなくなった。田村氏の行動がなければあり得なかった。御用組合では何も出来ない。その見返りが出世なのだ。
そうですね。組合卒業者がいいポジションにいるなんてのは、沈まぬ太陽のころから一緒です。
フジテレビやJR東日本の経営者の実態のほうがもっとひどいでしょう。フジテレビなんてトップが元労組委員長だしJR東にいたっては…。
『御用組合は組合員のためならず』っていう所でしょうか?
組合の執行委員になると、任期中は組合員からの声を抑え、任期を満了すると上のポストに行ける。でも殆どが元の職場に戻らない。元職場では白い眼でみられるのかな?結局は出世目当て。元組合の執行委員長は、会社に戻らず、他社へ移籍したり、この前の委員長は県議員になったな。御用組合の執行委員の今までやってきた事は、『神様が観てる』だ。
アイシン労組は何をやってる?誰かの投稿に金、場所、地位を会社から与えられてる組合に組合員は守れない様な事が書いてあったが、その通りだ。アイシン労組から役職になる奴等がATUの様な組合員の為に行動をする訳がない。こいつらは組合員の為にやってるのではなく、自分達の為にやってる組合。組合から役職になった奴等を知ってるが、本当にヘドが出る!こんなクズ共がいる限り、アイシンの組合員はATUの活躍に大いに期待する。ATU労組田村さんがいなかったらタダ働きは続いていたと思う。
マイニュースジャパンに最近、アイシンの記事が出ますが、酷い内容だ。アイシン精機のタダ働きに、アイシン機工の従業員を陥れる退職への仕向け方。アイシンの問題は他にも色々あるが、この会社の企業倫理なんてないと見たがいい。いずれは淘汰される会社であるのは間違いない。
マスコミも無償残業、サービス残業なんて名前で掲載して欲しくない。れっきとしたタダ働きなのだから、しっかり掲載すべきだと思う。経営陣は一度逮捕されてマスコミにさらけ出した方が、働く者にしたら、今までの鬱憤も少しは救われる。アイシン精機は従業員にタダ働きをさせたので、タダ働きさせた分の賃金を支払いました。と新聞に掲載して欲しい。それが真実なのだから。
無償残業なんて、どこでもやってますよね。36協定や会社の目標を守るための上司の圧力や、プロジェクトの採算合わせのためや。あと、裁量労働制なんてのも。
三度も繰り返しタダ働きが発覚する企業って、はっきり言えばタダ働きが日常化してるだけの事。1人の従業員が声を上げる事、会社に声を上げる組合の存在は大事だし監視役。それが出来ない組合は存在する意味はない。さすがに四度目は、業務停止に逮捕だから、ないのかも?従業員を食い物にするトップは、逮捕された方が会社の為にはなると思う。
同じくトヨタグループのデンソーでも以前は日常的に無償残業がありました。しかし、ここ最近はATUの活動やCSRといった世間的なこともあり、無償残照は基本的に出来ないしくみになりました。また、無償残業した本人やその上司も処罰されることになっています。大変会社は変わってきましたね。
会社からカネと場所と地位を与えられている組合が、組合員の叫びを伝える訳がない。カネと場所と地位に無縁の組合だからこそ出来る事。本当の組合とは全トヨタ労働組合の事を言う。この組合の存分は貴重である。
アイシン精機がタダ働きをやっていて、全トヨタ労働組合に吉田さんが入ったから?機工でも去年ですが調査らしいものがありました。当社御用組合すらやらない問題を、全ト労組の影がちらつくとやるのだから、全ト労組は相当に煙たいのでしょう。駐車場の当て逃げ問題も全ト労組がやってくれてると聞いています。しかしタダ働きなら毎日やっています。始業前の朝礼にラジオ体操です。時間にすれば10分、15分でしょうが、毎日タダ働きをやらせれている事になります。アイシン機工にも取材お願いします!
ついにやっと記事になったのですね。どこの新聞もまともに取り上げなかった、タダ働き問題!本当に胸がスカッとする思いです。御用組合であるアイシン精機組合ですら、何も出来ないこの問題を、全トヨタ労働組合が、しっかりとやってくれました!全ト労組がアイシン労組と変わって貰いたいです!
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