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富士ゼロ 社員を恐喝して自主退職に追い込む犯罪的手口の全容

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画像1:富士ゼロ人事部。長身の人物がAさんを脅迫して自主退職させた主犯格・人事部規律チームの平牧。左端が磯谷。(10月4日、東京地裁で撮影)
 富士ゼロックスでパワハラに遭いクビを宣告されたD氏(30代後半、男性)の件は前回報告したとおりだが、被害者は他にもいる。Aさん(40代、女性)は、人事部に呼び出され、出退時刻と交通費を偽って計1万7千円弱の利益を不正に得ていたと指摘され、「このままでは必ず、懲戒解雇になる。それを避けるには自主退職するしか道はない。自主退職すれば退職金は出る」などと脅迫を受け、退職に追い込まれていた。Aさんはその後、東京地裁に不当解雇だと訴え、2011年1月、全面勝訴を勝ち取っている。富士ゼロの犯罪的手口の全容をレポートする。
Digest
  • 新たな被害者
  • リストラの嵐の中で突然異動
  • まるでドラマの容疑者…扱い密室で取り調べ
  • 「自主退職か懲戒解雇しか道はない」と脅迫
  • 富士ゼロ労組「会社と同意している。解雇は当然」
  • 原告勝訴の判決下る

新たな被害者

7月8月に、富士ゼロックスでパワハラに遭い一方的にクビを宣告されたD氏(30代後半、男性)の件を報道すると、他にも不当解雇の憂き目に遭った社員がいるという情報提供が富士ゼロ関係者からあった。その社員は富士ゼロを相手取り、東京地裁で訴訟を起こし、一審は勝訴。現在、二審で係争中である。

筆者がその社員の存在を知ったのは10月の初めで、ちょうど数日後の10月4日に、東京高裁でその社員の裁判があるというので、法廷を訪れた。

開廷5分前に現地に着くと、傍聴席には富士ゼロの人事部が数人いた。その中には、後述する不当解雇の主犯の人事部・規律チームの平牧氏もいた。被告席には、富士ゼロが雇っている30代とみられる男性弁護士が2名。原告席には、原告である40代前半の女性1名と、40代ほどの男性弁護士が1名。

間もなく裁判官3名が登場し、一礼。すると裁判長は、直後に、次の和解交渉の日取りを決めます、という趣旨のことを言い始め、原告、被告両サイドの弁護士と日程調整して、約1か月後に開くことが決まり、ものの数分で閉廷した。

その後、富士ゼロ人事部のメンバーは退席し、エレベーター前に集まり、約3分の打ち合わせをして、去って行った。画像1はその時の写真である。一方、原告サイドは、控室に入り、話し込んでいる。はたから見ると、弁護士が原告の相談に応じているようにも見えるし、原告に、こんこんと何事かを説明しているようにも見える。話の内容までは聞こえないが、2人の表情からは、深刻そうな感じが伝わってくる。

筆者は原告に取材を申し込みたかったが、次の予定があったため、後日、原告側弁護士の「旬報法律事務所」佐々木亮氏に申し込んだ。裁判は10月以来、和解交渉を重ねている最中だったため、内心、取材は難しいとは思っていた。すると案の定、同氏から、「まさにおっしゃるように和解の最中なので、原告が取材には応じることはできません。私から裁判についての見解をコメントすることもできません」という返事がきた。

こういう事情のため、判決文を中心とした裁判記録を徹底的に調べてみた。すると、衝撃の事実が浮かび上がってきた。全容を時系列で解説しよう。事件は、次のようなものだった。

リストラの嵐の中で突然異動

被害に遭ったのはAさん(仮名、40代前半の女性)である。Aさんは1989年3月に短大卒業後、同年4月に富士ゼロックスに入社。以後、20年以上に渡って同社で勤務してきた。

入社当初は事務職に従事し、1997年4月、かねてから希望していた営業職に異動し、カラースペシャリストという専門職に就いた。これは、色やDTPの専門知識をもち、主にグラフィックアーツ市場(広告代理店、デザイン、出版、アパレル、印刷など)の顧客を担当し、一般営業職社員に同行し、新規開拓や、既存の顧客に新製品の導入を勧めるのが業務内容。Aさんは、この職を11年間勤めた。

Aさんの社内評価は高かった。こんなこともあった。ある顧客に業務改善を提案し、大きな改善効果が得られた、と評され、「KYX賞」(ここまでやるかゼロックス賞)を受賞し、木製プレートを授与されたこともあった。他にも売上への貢献が評価され、「支店長賞」を受賞したり、「部門長特別賞」を受賞したこともあった。

「自分にとって、天職と思えるほど仕事が楽しく、充実した毎日でした」とAさんはつづっている。(陳述書より)

そんなAさんの頭上に暗雲がたれこめたのは2008年11月の時のこと。突然、異動を命じられて、営業職から、新規ビジネスの企画立案を行う「CDPオフィス準備室」という新設の部署のスタッフ職へと異動することになったのだ。

7月の記事でも記したように、ちょうどこの頃、富士ゼロは大規模なリストラを行っていた。当時、ニュースにもなっていた。

富士ゼロックスはグループ社員2万5千人の10%にあたる2,500人を対象に、半数を営業部門へ配置転換し、残り半数からは早期退職を募る。

(2008年10月31日付の日経朝刊より)

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画像2:Aさんが勤務していた千代田区内の如水会館

それまでの勤務先は、千代田区神保町にある如水会館ビル。新しい職場は、六本木本社のある東京ミッドタウン。地下鉄で片道約30分の距離である。Aさんは年末まで、引き継ぎで、双方を行ったり来たりしていた。その時のある行為が、会社を辞めさせる口実に使われることになろうとは、夢にも思っていなかった。

災いが降りかかったのは翌2009年の1月初旬のこと。突然、人事部の沢柳に、会議室に呼び出され、こう聞かれた。

「12月26日の朝はどこにいたの?

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画像3:犯罪的手口で社員のクビを斬る富士ゼロックス代表取締役社長の山本忠人

画像4:Aさんが書かされた退職願の原本(D氏のケースと同一)。Aさんは人事部に脅されて、ここに氏名、社員ナンバー、住所、所属、退職事由を記載した

画像5:Aさん勝訴の判決文が記載された「労働判例」(2011年9月15日号)。全文は記事末尾からダウンロード可

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労働者の声2012/09/16 10:44
まさ2012/09/16 10:00会員
私は他の情報を調べて2012/04/12 11:28
社員にこうした...2012/04/11 21:37
「富士ゼロ 社員を恐2012/04/10 08:37
武士さん、こんなモノ2012/04/10 08:17
三河武士2012/04/09 20:13
三河武士2012/04/09 20:13
三河武士2012/04/09 20:12
秘密結社の存在...2012/04/09 13:23
コピー機の重要...2012/04/09 12:53
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川獺2012/04/08 09:08
川獺2012/04/08 09:02
ケンジ2011/12/01 21:03
嫌なら辞めて結構2011/11/25 22:40
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