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妊娠中の母親の電磁波ばく露で子どもの肥満・ぜん息リスク上昇、米の13年間追跡研究で

情報提供
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2011年8月に妊娠中のばく露で子どものぜんそくリスクがアップする研究が紹介された米『Slate』記事。電力会社ほか巨大スポンサーに支えられる日本のマスコミは報道できない。
 妊娠中の電磁波のばく露を測定し、出産・育児の過程で子供にどのような影響が出るかを13年間も追跡したアメリカの研究結果が先月、発表され話題を呼んでいる。米国医師会誌や『ネイチャー』など一流誌に掲載されたもので、子どものぜんそくが3.5倍、肥満が1.8倍増えるという、衝撃的な結果だったためだ。同じ母親グループで流産の影響を調べた論文でも流産リスクは1.8倍に増えていた。しかも、電磁波の影響を受けた妊婦は、調査母数の過半数に及んでいた。他の研究者による再試が求められるなか、日本でも環境省が子どもの環境要因の調査を実施中であるが、電磁波は対象から外された。政治的・経済的にインパクトが大きすぎる研究は無視され闇に葬られることも多いが、その典型例といえる。
Digest
  • 流産1.8倍、子どものぜん息3.5倍・肥満1.8倍のリスク
  • 無視され続けた研究結果
  • 環境省の10万人追跡調査計画でも電磁波は対象外
  • 日本でもほとんどの人に影響がでる可能性
  • 妊娠中にどのように気をつけるか

電磁波による健康影響について、新しい研究結果が7月下旬に発表された。妊娠中の母親のばく露を測定し(1998~1999年)、生まれた子どもをその後13年間にわたってフォローアップ(~2012年)して健康への影響を調べた研究である。

私達の身の回りの電磁波は、大きく分けて送電線や電気製品から発生する超低周波の電磁波と、携帯電話に代表される高周波の電磁波(いわゆる電波)の2種類に分けることができる。

今回の研究は前者の、送電線からの電磁波(磁場)についてのもの。これまで小児白血病のリスクが2倍になることが世界中の疫学調査で明らかにされている。その小児白血病の研究を根拠に、WHOの国際がん研究機関(IARC)は2001年、「発がん性の可能性あり」という評価を下した。

問題は、リスクが2倍になる高ばく露グループ(子ども部屋の平均的な磁場が0.4マイクロテスラ以上)は人口の何パーセントぐらいを占めるのか、だ。日本での疫学調査の結果をみると、全体の調査対象者746人の内、高ばく露グループは9人(1.2%)にしか過ぎなかった。

では、残り99%の人たちが浴びる程度の磁場では影響がないと考えてよいのかというと、そうではない。我々が日常的に浴びている、より低い磁場のほうでも影響が出ることを明らかにしたのが、今回明らかになったアメリカでの新しい疫学調査の結果だ。

流産1.8倍、子どものぜん息3.5倍・肥満1.8倍のリスク

より低線量での影響を調べるためには、特に影響を受けやすいグループを見つける必要があった。

アメリカ最大の非営利総合医療団体である「カイサーパーマネンテ」研究者であるデ・クン・リー博士たちは、環境中の様々な影響を最も受けやすいと考えられる妊娠中の胎児に注目した。

同医療団体のカリフォルニア州北部地域の医療保険に加入している人たちの中で1998年から1999年にかけて妊娠した母親969人から参加承諾を得て、10分おきに電磁波を記録する測定器を24時間装着してもらい、1日のばく露量を調べた。

測定した磁場の周波数は40~800Hzなので、電力・電気製品関係から出る超低周波の磁場だけであり、携帯電話などの高周波やIH調理器の長波などの電磁波のほうはモニターしていない。そもそも1996年~1998年の段階では携帯電話もIH調理器もあまり普及しておらず、主なばく露源は電力関係の低周波の電磁波と見てよいだろう。

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流産と子どものぜんそく、肥満のリスク

子供への影響を調べるためには13年間(~2012年)のフォローアップが必要だったが、同じ母親のグループについて流産の影響について調べた論文は、既に2002年に発表済み。結果は、一日のうちで最大1.6マイクロテスラ以上の磁場を浴びていた母親では、流産のリスクが1.8倍になる、というものだった。

ただ、10ヶ月の妊娠期間のうち磁場を測定したのは1日だけという点は気になるところだ。1日だけの測定結果が10カ月の妊娠期間の平均的ばく露量の目安として利用できるのか?

そこでリー博士らは、追加的な分析として、測定を行なった日の行動パターンが日常通りだったという622人のグループと、日常とは違ったという387人のグループに分けて、分析を行った。もし磁場が流産に影響を与えているとすれば、日常通りと答えたグループでリスクはより上がるはずだ。

結果は、日常通りのグループではリスクは2.9倍に上昇し、日常とは違ったというグループではリスクは上がっていなかった。

注目したい点は、最大1.6マイクロテスラ以上の磁場を浴びていたグループは717人と全体の74%を占めているところだ。つまり過半数の母親が、磁場の影響を受けて流産リスクが上がっているという結果なのだ。

その後、無事に生まれた子どもたち734人を13年間フォローアップし続け分析した結果が、昨年と今年に発表されたものだ。

第一弾が昨年8月に発表された論文で、子どもがぜん息にかかるリスクを調べたもの。妊娠中の磁場の平均値をもとにばく露量によって10グループに分けた

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