トクホ「脂肪を断つんだジョー!!」のキリンメッツコーラ、断てる脂肪は極端な条件下でも10%未満
あしたのジョーから宍戸錠に変わったキリンメッツコーラの宣伝。確かに宍戸錠の方がふさわしいが… |
- Digest
-
- 矢吹ジョーは飲んではいけない
- 脂肪吸収を抑える効果は10%未満
- マーガリン入りパンでの臨床試験
- パンをフランスパンにした方が効果的
- 宍戸錠ならよいのか?
- 食後の中性脂肪の上昇どこまで抑えるべきか
- 品格が感じられない「下剤系トクホ」
矢吹ジョーは飲んではいけない
脂肪を断つんだジョー!!のCMで大ヒットになったキリンメッツコーラ。「史上初のトクホのコーラ」を宣伝文句に今年4月発売になり大ヒット商品となった。
CMの中では矢吹ジョーがピザとハンバーガーを両手に持ち、ポテトチップスやフライドチキンもテーブルに並ぶ。「ジョー、何考えとるんじゃ」と騒ぐ丹下段平に向かって、ジョーが得意げに「おっつぁん、これトクホのコーラだぜ」と言い、その直後に「食事の際に脂肪の吸収を抑える」というテロップが入る。
いかにもインパクトのあるCMだが、減量中のボクサーでもピザやハンバーガーなどを食べても大丈夫という内容は明らかに誇大広告だ。
力石徹の減量の苦しみを原作で読んでいる著者としては、CMの中の能天気なジョーを見るのはつらい。ふざけすぎだ。
脂肪吸収を抑える効果は10%未満
もし食事で摂った脂肪のほとんどを吸収させない効果が本当にあるというのならばまだ許せるが、そこまでの効果はメッツコーラにはない。
メッツコーラと黒ウーロン茶の効果比較 |
キリンのホームページに示されている、メッツコーラと対照飲料とを飲み比べた場合の、脂肪吸収の効果の違いを示したグラフが、左記の図①である。
論文をみると、確かに統計的には有意な差が出ている。統計的有意とは、偶然の結果ではないのだろうと判断できる、ということだ。しかしその効果の大きさが十分なのかというと、問題は別だ。
論文の別のグラフに脂肪吸収の抑制量の比較がでている(図②)。なぜかグラフだけで数値が書いていないので正確な値は不明だが、対照飲料に対して被検飲料(メッツコーラ)との差は、10%もないように見える。
これは血液中から検出された中性脂肪の値の比較なので、食べた脂肪の吸収率と全く同じではないが、そのデータから推測するにメッツコーラを飲んでも食事に含まれる脂肪の9割はしっかり吸収されると見ても、全くの間違いではないだろう。
ちなみに、同じ効能をうたっているサントリーの黒烏龍茶でも同様のグラフが示されている(図③)が、そこでは20%減少となっている。文字面だけから判断すれば、黒烏龍茶の方が2倍の効果があることになる。それでも2割減程度で、8割は吸収されてしまうのだ。
マーガリン入りパンでの臨床試験
ハンバーガーやピザやフライドチキンを食べてもメッツコーラを飲めばチャラになると本当に信じている人たちは、そんなに多くないだろうと思う。しかし10~20%の減少でも0%よりはましだ、と思う人は多いかも知れない。
確かに現在のトクホの制度は、「同じ飲むのであれば、こちらのコーラを選択してほしい」という程度の効果で許可をだしている。
しかし実際に飲食をする消費者としては、普通のコーラよりまし、というだけでなく、どういう条件で、どの程度の効果があると確認したものなのか、について少しは考慮して許可を出してもらいたいと思う。
そこで、臨床試験ではどのような食事内容で効果を調べたものなのかを確認した。論文には
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り2,864字/全文4,220字
臨床試験で使われたバターロール。パンの中にはマーガリンがびっしり。
脂肪摂取を半分にすると血中脂肪も半分に
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
植田さん、製品だけでなく、
「あしたのジョー」に対する愛も凄くて、
真面目にやっているのだけど、少し微笑ましかった。
記者からの追加情報
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい
新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)
企画「CMリテラシー」トップページへ
企画「食の安全」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、info@mynewsjapan.comまでご連絡下さい。会員ID(1年分)進呈します。