「嫁さんの下着も宝石も、みんな押収するからな」と自白強要 陸自釧路駐屯地「警務隊」のデタラメ冤罪捜査
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物証がまったくないにもかかわらず窃盗犯人の容疑者にさせられ、「任意」の名のもとに連日過酷な取り調べを受けた陸自2曹の横山利弘さん。領収書はすべて整理されていて不審な点はなかった(右の箱)。だが、警務隊は犯人だときめつけた。 |
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- 平穏な糧食班でおきた「現金紛失」事件
- 職務命令でDNA検査にポリグラフ
- 雑談がきっかけで「窃盗容疑者」に
- 精神的拷問という地獄の日々
- 10万、20万、30万・・・露骨な誘導尋問
- 白紙の令状みせて「嫁の下着押収するぞ」
- 楽になりたい、と虚偽の自白
- 「どろぼーくん」と呼ばれて
- ひとり暮らしの娘を深夜アポなし訪問
- 不起訴決定でも謝らない警務隊
- 冤罪でやめていった隊員たち
平穏な糧食班でおきた「現金紛失」事件
2010年の夏まで、横山利弘さんの生活はおおむね順調だった。高校卒業後に自衛隊に入隊して以来20余年。成績は良好、中堅幹部の2等陸曹として仕事に励んでいた。
釧路駐屯地業務隊糧食班に配属されたのは2009年3月。委託している給食業者の監督をする「監督官」の仕事だった。2010年夏のボーナスが支給されたのは6月30日。横山さんの人生を狂わす事件は、その約1ヶ月後に起きた。M2曹という女性隊員が「職場で現金を盗まれた」と訴え出た。これをきっかけに横山さんは冤罪に巻き込まれてしまうのだ。
以下、主に横山さんの証言をもとに事件をたどりたい。
M2曹が糧食班に着任したのは2010年3月。ちょうど横山さんの1年後だ。仕事は食材の仕入れ担当で、横山さんの部下のような位置にいた。
その彼女が出した被害届によれば、ATMで40万円を下ろして事務机の下に設置する方式の鉄製キャビネットの引き出しに入れていたところ、何者かが持ち去ったという。引き出しに、鍵はかかっていなかった。
お金を下ろした日時も目的も明らかにされていないが、ボーナス支給の直後である可能性が高い。M2曹が現金の紛失に気づいて上司に報告したのは7月20日。被害届けを出したのが2週間近くもたった8月3日というから、いささか不自然な印象は否めない。
もっとも、事件発覚時点で「40万円」という額は一般には知らされていない。それでも、大金らしい、と噂になった。横山さんも同僚と「封筒に入っていたんだろうか」などと雑談まじりに話した。この雑談が後に横山さんを苦しめることになる。
問題のキャビネットの引き出しは、もともと雑誌やお菓子を入れていて、職場の誰もが勝手に開け閉めしていた場所だった。昔から鍵などかかっていたためしがなかった。
そんなところに大金を入れっぱなしにしていたとは--横山さんは呆れた。
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横山さんが身に覚えのない窃盗容疑をかけられ、苦しんだ陸上自衛隊釧路駐屯地。以前、窃盗をしたとして懲戒免職なりながら、「俺はやっていない」と叫んで隊を去った隊員がいたという。![]() |
職務命令でDNA検査にポリグラフ
捜査を担当したのは、陸上自衛隊第121警務隊の釧路派遣隊だ。すぐに十数人いる糧食班の隊員が集められて、6月20日から7月20日まで1ヶ月間の行動を紙に書かされた。預金通帳の写しも提出させられた。続いて、ひとりひとり呼ばれて事情聴取が行われた。横山さんも聴取を受けた。尋ねられたのは「買い物」のことだった。
「『最近大きな買い物したか』と尋ねられました。車をローンで2台買ったのと、自作でウッドデッキを取り付けた、と正直に答えました」
賭事はしない、酒も飲まない、たばこは吸わない、外食しない。
金を使う機会は買い物くらいで、領収書はすべて保管している。「トヨタ関係」「電気関係」などと分類してクリアファイルにまとめ、箱に入れている。金の流れは明瞭で、疑われる余地はないとの自信が、横山さんにはあった。
同様の事情聴取は、2度ほどあった。それで終わったと思っていた。
異変が起きたのは2週間以上がたった9月17日のことである。横山さんがいつものように出勤すると、上長の班長が「警務隊がDNA型の検査をやりたいと言っている。協力してくれ」と言った。
職場の隊員全員にDNA検査を受けさせているのだろう。横山さんはそう考えて、快く協力した。警務隊に行くと、唾液を採取されて解放された。
翌日は休日だったが、上司が連絡してきた。「今日も警務隊に行ってもらえないか」と言った。「ポリグラフ」(嘘発見器)の検査があるのだという。やはり全員検査の一環だろう。横山さんはそう思って応じた。
警務隊に行くと、警務官とともに専門業者らしい白い服を着た男が待っていた。男は横山さんの体に電極を取り付け、画面を見て質問に答えるよう指示した。
「100円均一の書類ケース、銀行の封筒、裁縫セット、いろんな銀行の通帳、エコバッグ。見てください、答えてください
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警務隊員が横山さんの事情聴取をした様子の再現写真(訴訟に国側が提出した証拠より)。国は否定しているが、横山さんによれば黙秘権の告知はなかったという。
横山さんが起こしている国家賠償請求訴訟の中で、国側が出した証拠に改ざん疑惑が浮上した。右は国側が出した2010年9月28日の「呼出状」。左は横山さんが保管していたもの。出頭時間や右上の印鑑部分が明らかに異なる。
精神的拷問といっても過言ではないような警務隊の取り調べを受けた結果、横山さんはPTSDを発症する。取り調べが原因でうつ病などを発症したとする医師の診断書。療養を要すとの診断書が出ても取り調べは続いた。
指紋もなし、目撃者もいない。自白調書もない。物証ゼロのまま警務隊は送検、釧路地検は証拠不十分で不起訴にした。無実が証明されたにもかかわらず、警務隊からは一言もないという。
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読者コメント
みなさんコメント有難うございます。警務隊は、私を送検して、証拠不十分で不起訴に成ってからも、裁判に提出した証拠書類を捏造し、改ざんして犯罪をおかしてまで、今だに、謝罪すら無しで、警務隊は、裁判の被告なのに検察の先生たちが10人も、毎回裁判に来て、捏造した事実をごまかそうと、悪戦苦闘で裁判の引き伸ばしをしている。これが、今の日本の現実、そんな人たちが国を守れるなんて、とうてい思えない。
外部の警察がこれまた輪をかけて酷いのも問題。
客観的な証拠に基づかず、強引に自白を迫る体質は、
警察も警務隊も変わらない。
実際に取り調べを行った警務隊員らも追跡して欲しい。
日米安保破棄、沖縄主権回復で自主防衛が必須であるが、
松任の空軍基地と同様の捏造犯罪ではとても国防など程遠い。憲兵隊のマネゴトか欲求不満の解消か、これではシナ人民解放軍とは戦えません。
個人的に少しでも支援したい。
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