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ALSOK、「未払い勤務」を告発した警備員に報復の雇い止め 最高裁判例に目を背ける警備業界の闇

情報提供
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アーバンセキュリティのフロムエー求人広告。アルソックの名が前面に出ている。有賀氏はこの類の求人に応募して入社した。
 警備大手アルソック子会社アーバンセキュリティの契約社員・有賀公雄氏(50代前半、仮名)は、警備業務における賃金未払いを労基署に告発した。それは「出社前の朝礼」と、「緊急対応のため原則外出禁止となっている休憩・仮眠時間」についてだった。労基署が会社に対し警告・指導を発令する事態となり、その直後、有賀氏は「黒田社長の意見」として勤務日を減らされ、収入を3割減とされたうえ、指導・警告書を計5回発令され、クビになった。労基署から指導票を出された会社が、訴えた社員に対し、仕事減で“兵糧攻め”した挙句、指導書を連発して雇い止めにしたのだ。有賀氏は12年8月、同僚3人と共に会社を相手取り、地位確認と未払い賃金など計1185万円(提訴時)の支払いを求める訴訟を東京地裁に提起した。裁判資料に基づき事件を詳報する。
Digest
  • 労基署に告発して是正勧告・指導発令
  • 会社は報復的措置で指導書4回→警告書→クビ斬り
  • 地位確認・未払い賃金等請求で提訴
  • 仮眠時間に対する最高裁の見解と対処法

労基署に告発して是正勧告・指導発令

訴状によると原告の一人・有賀公雄氏(50代前半、仮名)は、2010年春、アルソックの子会社の警備会社アーバンセキュリティの求人を見て応募し、以下の契約を締結した。

勤務地 東京支店

職務内容 警備

勤務時間 

日勤 原則として9時から18時まで(休憩時間:正午~午後1時(1時間))

夜勤 原則として18時から翌日9時まで(休憩時間:午後9時~午後10時(1時間)、午前3時~午後5時(2時間))

当務 原則として午前9時から翌日午前9時まで(休憩時間:正午から午後1時(1時間)、午後5時~午後6時(1時間)、午後10時~午前2時(4時間)、午前4時~午前5時(1時間)、午前7時~午前8時(1時間))

時間給 1,000円

契約期間 2010年4月5日~2011年3月31日まで

有賀氏はこの契約を締結した。なお、勤務時間については、上記は就業規則の条文だが、実際は、勤務先の勤務基準表に基づいていた。有賀氏の勤務地は、東京都港区内にある、NTTファシリティーズが入るNTT青山ビル。

ここの勤務時間は、基本的に「当務(午前9時~翌日午前9時)」で、休憩時間は、昼休み(午後1時~3時までに1時間)、夕休み(午後8時~午後10時までに1時間)、仮眠時間(午前2時~午前6時までの間に2時間)の計4時間だった。

具体的な勤務内容は、常時2人の警備員が、1階の防災センター室に基本的に詰めることになっていた。防災センター室は広さ約6畳。ここには警報盤があり、火災などの異常があった場合は、場所を示すランプが点滅し、警報ブザーが鳴る。

防災センターの向かい側には、ロッカーと鉄製ベッドが置いてあり、仮眠室として利用されていた。ちなみに、この仮眠室の補助用のオレンジ色の小さい電球は、部屋が真っ暗になるのを防ぐため24時間点灯していた。

警備員2人は、防災センターで警報盤を監視しつつ、地下2階、地上11階の同ビルを定期的にパトロールした。また、防災センターのある裏手口は、基本的には出入りが禁じられていたが、特定の社員や業者は通行していたので、その出入りのチェックも担当した。

こうして勤務をするなかで、有賀氏は、休憩・仮眠時間の取り扱いに疑問を持つようになったという。

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金メダリストの吉田沙保里、伊調馨が「ALSOK体操」を披露するアルソックCM

昼・夕の各1時間の休憩については、上司のA警備士長、B警備課長から、「休憩時間に何かあったら対応してもらう必要があるから、弁当を購入するための外出以外はできない。昼食、夕食は防災センター内でとり、外食することはできない」との指示を受けた、と有賀氏は訴えている。

2時間の仮眠時間についても、何かあったときに対応するため、外出することは禁止で、「仮眠室にいるように」と指示を受けたという。

そもそも防災センターの警報盤が鳴った場合、仮眠室にいる人を、起きている人が起こし、一人が異常を感知した場所に向かい、もう一人がNTTファシリティーズの問い合わせに対応することになっていた。

実際、こんなこともあった。有賀氏が入社した2010年当時、青山ビルは老朽化しており、増築を繰り返した結果、漏水が複数個所で発生していた。特に地下の一室はひどくて、常時、漏水部分にビニールシートを設置し、漏水をバケツに集めるようにしていた。雨が降った日は、1~2時間おきにバケツの水を捨てていた。

なかでも集中豪雨のときは、1時間かからずバケツが一杯になるため、1人がバケツ対応をしている間、仮眠時間の警備員が防災センターで警報盤の対応をしていた。バケツ対応は、ビル改修のおわる2012年3月まで続いた。

また、こんなこともあったと有賀氏は訴えている。東日本大震災以降、屋上の高架水槽の満水警報が、満水でないのに表示するようになってしまった。そのため、1人がその確認に行き、仮眠をしている者が防災センターにつめることが、たびたびあったというのだ。

仮眠・休憩時間だけではない。有賀氏によれば、始業前に、着替えや朝礼などで、約30分の未払い労働があったという。

 こうして2011年10月下旬、ついに有賀氏は、都内の飯田橋にある中央労働基準監督署に相談に行き告発した。

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労基署が会社に対して出した是正勧告書概要。(※筆者が裁判資料をメモして作成したもの=コピーや撮影はできないため)

その後、労基署の担当者は、アーバンセキュリティや有賀氏らに事情聴取した。そして2011年11月25日、アーバンセキュリティに対し、朝礼と休憩時間の賃金支払いを指示した。

同日付の「是正勧告書」にはこう記されている。

「労働者有賀公雄の一昼夜勤務にあたり、始業時刻前の出勤勤務に対する法定の時間外手当を支払っていないこと(上記に関しては、遡及調査が可能な範囲で、確認の上、相当数を追給すべきこと)」

さらに翌12月16日付の同社に対する「指導票」には、こう書いてある。

「あなたの事業場の下記事項については、改善措置をとられるようお願いします。

なお、改善の状況については、1月31日までに報告して下さい」

「勤務状況の検証確認を行い、その結果を時間外実績に対する遡及清算を行われたいこと。1 始業前出勤に関して ①着替え、申し送り等業務上の必要のために、30分程度の準備時間を要することが推認されること。(略)④警備員に対して、現場へ始業30分前までに到着するよう指示されている状況が窺えること」

「2 休憩に関して ①警備員が配属先のビルから外出を原則的に禁止されている状況が認められること。②防災センターや仮眠室における在室が指示されている状況が認められること。③休憩中であっても、電話の収受、警報や突発的事態に対応した必要な措置をとること等が義務付けられている状況が認められること。飲酒その他の娯楽が禁止されていること」

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労基署が会社に対して出した指導票概要

これに対し会社側は、同年12月21日に、有賀氏に対する始業前の出勤時間15分の時間外手当を追加支給した。具体的には、

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会社が有賀氏に対して発令した警告書と解雇通告の文書

仮眠時間に対する最高裁判例。最高裁HPより

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