LEC元講師が語る東京“イリーガル”マインドが「名ばかり個人事業主」で稼ぐ貧困ビジネスの現場
LECの内情を語る社会保険労務士の須田美貴さん。 |
- Digest
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- 揺りかごから地獄まで
- 1人で複数の契約をLECと結ぶ
- 妊娠を告げたら「辞めてくれ」
- タダ働きを強要する社長メール
- 団体交渉拒否で都労委へ
- 雇用契約と業務委託を使い分け残業代ゼロに
- 弱みに付け込んだ貧困ビジネス
揺りかごから地獄まで
資格試験予備校の大手LEC(東京リーガルマインド)の講師を務めて、契約解除=“解雇”された社会保険労務士の須田美貴さんは、かつての職場を振り返ってこう言う。
「資格をとるために受講生として通っていた人が、試験に合格しても就職先もなく食べていかれない。そこで、かつて受講生として通っていたLEC(レック)に講師として戻り、劣悪な労働条件で働かざるをえなくなっても、抜け出せない・・揺りかごから墓場まで、という感じ」
つまり、試験を突破する前の専門家のたまご(赤ん坊)を引き入れて受講させ、試験に合格させる。しかし、現実的に各種試験に受かったとしても就職は難しく、独立開業はなおのこと至難の業だ。
食べていくために、自分が通っていた学校に講師として戻る。しかし、とてつもなく安い収入できちんと生活できない。けれど、すぐに辞めるわけにもいかず、資格試験学校という場にずっと囚われつづけるわけである。
事務スタッフで月収12~13万円、講師は登録制なので年に1回しか仕事がない人もいるため、年収5000円の講師もいる。この実態を見れば、揺りかごから墓場まで、というより地獄まで、と言った方がぴんとくる。
それでは、須田さんが雇用契約を解除され、つまり「業務委託」を解除されるまで、内部で見聞した体験を聞いていこう。須田さんは社労士として独立するまでに、塾講師、小学校教員、営業、深夜の工場ライン、ティッシュ配りなど、数々の職場を経験。いじめで鬱になったり解雇されたり、波瀾万丈の職業生活を送ってきており、独立して事務所を開いた今は、その経験と資格を活かして、労働相談を受けている毎日である。
「2005年にこの学校の受講生、つまりお客さんとしてLECに通い、翌06年に社会保険労務士の試験に合格しました。そのあと違う仕事をやっていたのですが、08年12月に退職して無職になったので、社労士として開業しました。
もちろん、社労士としてすぐに仕事はありません。昔は入社退社や社会保険の手続きが主な仕事でしたが、それならば資格がなくても方法を覚えて書類に書けばいいわけですから、今では『手続き』という仕事だけでは、食べていけないんです。
なので、コンサルをやっている人が多い。しかし、コンサルを雇う余裕のある企業は少ないのが現状です。試験に受かって社労士になったからといって、それだけで生活が成り立つわけではありません。
ですから、かつて受講生として通っていたLECに、講師として戻る人もいるのです。
2008年に私がLECで受講していたクラスは、週2回のコースでした。週に1コマ2時間半を2コマ。
私は11月から3月までの講座に通い、8月の試験に向けて5月から7月は直前講座に通いました。
合格後、お世話になったLECで講師をしたく、応募したところ採用されたので、講師と、講座運営や講師管理の仕事の、両方をしていました」
3枚ともLEC東京リーガルマインド内で交わされているメール。業務委託契約を結んでいる独立事業者のはずの講師を、従業員としてみていることがわかる。 |
1人で複数の契約をLECと結ぶ
「講師をやりながら内勤もどうか、つまり契約社員として本社の事務もやらないか、とLEC側から打診されたのです。
それはありがたいことなので、申し出を受けることによって、雇用契約が生じました。事務職員は契約社員ですから雇用契約があり、講師のほうは(内勤業務を掛け持ちしている人を除き)全員が業務委託です。
私の場合は、三つの契約を交わしていました。一つは講師として業務委託、二つめは事務職で契約社員、三つめはキャリアコンサルタントの採点の仕事で、別の契約です。
この会社は一人で複数の契約をしているのが通常で、8割くらいの人が業務委託だと思います」
ここでの重要な点は、講師が独立した事業者として業務委託契約を結び、会社(LEC)と雇用契約を結んだ労働者ではない、と表向きはなっており、これによって、労働者を守るための労働基準法などが適用されなくなることだ。
「社長が講師向けに出したメールによれば、LECには講師が2000人くらいいるらしいのです。私が結んでいた契約社員としての雇用契約では、業務内容に講師の管理が含まれていました。講師でありながら、講師の管理をしていたのです。
応募があれば面接をして採用し、誰がどの講座を持つか、割り振りをするような仕事内容でした。
この会社の業務委託は、実質的にただの登録制です。だから1年間、仕事がまったくない講師もいるわけです。ただ登録しているだけ。
雇用契約を結ぶ際、『給料はいくら欲しいのか』ときかれ、前の所が25万円くらい、と答えると『40万円くらいにしておこうよ』と会社側に言われましたが、結局35万円になりました。
あとで知ったことですが、正社員でも手取り12~13万円の人もいるため、私の給料は破格に高かったので、削除される対象だったと思います」
妊娠を告げたら「辞めてくれ」
「この会社がおかしいのは、契約期間中に契約内容を変え、その時点でまた契約を結びなおすのです。はっきりいえば契約内容を変更するために契約を結びなおすのです。
私は月給35万円から始まり、途中で妊娠を告げると、『(契約社員としての仕事を)すぐに辞めてくれ』といわれました
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業務委託にもかかわらず従業員のように各回のテキストページまで決められ、指揮監督している。それにもかかわらず、労働者ではないとの建前で講師は労働基準法で守られない。
須田さんは派遣ユニオンに加入して団体交渉を申し入れたが、会社は完全に無視した。須田さんに対する未払い賃金もある。
(上)講師に対する説明会の発注書。(下)は須田さんの実績。説明会を開いても講座への申し込みがなければ、説明会での仕事の報酬はゼロになる。
須田さんが書いた『資格ビジネスに騙されないために読む本』鹿砦社933円+税は、資格を取ろうと考える人に向けて書かれた内容だが、名前こそ出していないものの、LECの実態にも触れている。
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「資格試験の予備校大手「LEC」を展開する㈱東京リーガルマインドは、登録講師約2千人を個人事業主扱いとして業務委託契約を交わしているが、その実態は雇用された労働者」
「登録講師約2千人を個人事業主扱いとして業務委託契約を交わしている」/「資格を持っている専門家に対して不法行為をするところがすごい」不正コピーで和解を金払ってたような。
LEC大学は募集停止に。
LECもブラック企業だったか・・・。
資格学校は事務職員も他業種からの転職組ばかり
あれだけの受講料をあれだけの人数からとっておいて、お金はどこに融けているんだろう?
一時期ここで資格勉強して、ここの雇われ講師もやってたけど大体あってる。率先して著作権法違反に手を染めて、三倍請求を打破したLEC先生に痺れない憧れない。
LEC元講師が語る東京“イリーガル”マインドが「名ばかり個人事業主」で稼ぐ貧困ビジネスの現場:MyNewsJapan はてなブックマーク - 新着エントリー B!
違法コピーのLECか。法を教える側が積極的にグレーに足を突っ込むあたりアジアンのカヲリがしないでもない。 http://www.itmedia.co.jp/news/0212/12/njbt_07.html
LECは“「資格を持っている専門家に対して不法行為をするところがすごい」”
年収5000円
社労士の女性が自身の経験から語る、資格取得専門校の雇用の実態。考えさせられる内容です。
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読者コメント
成る程、職員が労働事情抱えていたら、生徒への対応が不十分になるのも分かりますね。
林克明様
発言したお偉いさんのことは録音まではしてないのです(LECさんの方ではありません)。
最後の、あるC社というのは、My News Japan 佐々木奎一 さんの記事にも出てくる会社です。
林さんの記事は、よく読ませてもらっています。応援しています。それでは
匿名希望 15:20 03/23 2013様 ぜひ詳しい話を聞かせてください。
ブラック企業とブラック士業がイイとこ取り。「労働行政は大した罰則がないから指導が来てから対応を考えれば良い。」と言ったお偉いさんを思い出しました。民事訴訟を起された場合を除き、会社側が丸儲けになるからでしょうか。違法な働かせ方をしていた経営者や役員はほとんどの場合、詳しく公表や報道もされず、もらった報酬を返還しないです。あるC社の役員は警備員をつけ、偽装請負をやり、役員報酬をアップさせていました。
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