各店舗に送り付けられたポスター。店舗オーナーに貼ってよいかお願いするトーク例まで社内メールで指示された。
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創業者・渡邉美樹氏が参院選に出馬したワタミは、選挙活動もブラックであることがわかった。経営企画本部を中心に会社ぐるみで公示前から事実上の選挙活動を展開。社員1人あたり20人の支援者名簿収集ノルマを課し、支部長の名刺や選挙ポスターを各店舗に強制送付。支援者を多く集めた順に全社員を並べたリストを配布し、ノルマ未達成者にプレッシャーをかけた。指示は、会社のパソコンと社内メール、社内の人材を使い、ボランティアを装いつつも堂々と行われ、会社を集票マシーンとして活用。給料を支払っている立場と、社内の厳しい上下関係を利用し社員の「選挙の自由」を侵害する行為は、事前の選挙運動を禁じた公選法に違反するにとどまらず、同221条(買収及び利害誘導罪)、225条(選挙の自由妨害罪)にも違反している疑いが濃厚だ。
【Digest】
◇回収されたDVDは真っ黒
◇表向きは「ボランティア」
◇1人20人ノルマの支援者集め
◇「社長の命を受けて」「どう言う事なのでしょうか?!」と圧力
◇回収されたDVDは真っ黒
「5月下旬から、事実上の選挙運動として、本社からの指示が始まりました。ポスターを貼れ、サポーター(支援者)名簿を集めろ、と。社員全員が、『応援する会』の支部長にされ、ポスターや、支部長名の名刺が勝手に送られてきて、1人20人集めるよう指示されて。面白くないですね、通常業務だけでも大変で月に2日ほどしか休めてないのに…。結局、公示日前に5370人集まったそうです。例の
ビデオレターは、さすがに違法と気付いたらしく、本社の指示で回収されました」(ワタミ店長)
このビデオレターとは、毎月1回送られてくる、渡邉美樹氏のメッセージが収録されたDVDで、休憩中にバイトも含め全社員が見て、感想を紙に書いて本社に送らねばならない。休憩中に見させることで勤務時間にカウントさせないところがまたブラックなのだが、公示日前に選挙の応援を明確に依頼したもので、フェアな選挙活動を規定した公職選挙法で禁止されている選挙の「事前運動」に該当するブラックな内容だ。
選挙の「事前運動」はこれだけにとどまらず、5月下旬に「自民党の全国比例代表候補に立候補するのでよろしく」という趣旨の手紙を株主宛に送るなど、公選法を守る気はないようだ。
◇表向きは「ボランティア」
社員に課せられた数々の“選挙活動”は、表向きはボランティアとなっているが、これはワタミの常とう手段。実際、ほぼ全社員が、以下3つの活動資金を“ボランティア”の名目で毎月、給与から天引きされている。①SAJ(スクール・エイド・ジャパン)=1千円、②RFL(Return to Forest Life)=500円、③夢会員=150円。
なぜボランティアのはずが、ほぼ全員加入となっているのか。「入らないと、本社から指示が出て、地区長(旧エリアマネージャ)から社員に『なんで入ってないの?』と来る。『企画者が一所懸命やってるのに』『夢を叶える会社なんだから』などと説得を受けるんです」(店長)
会社側は人事権も評価権限も持っているため、断ると不利益が予想されることから、入会するほかない。これは、もはやボランティアではない。こうした社風のなかで、会社ぐるみの“選挙活動”は行われてきた。
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渡邉美樹会長の応援に関するお願い |
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5月31日付の社内メール「渡邉会長、立候補の件」では、「渡邉美樹会長が、この夏の参議院議員通常選挙の比例代表に自由民主党より立候補することが決定いたしました。」と報告。
その後、6月11日付の内部事務連絡では、「渡邉美樹会長の応援に関するお願い」(左記参照)が同じく社内メールで流された。
つまり、選挙に出るから応援を、としか解釈できない流れだ。公示日まではまだ1カ月近くあり、公選法違反(事前活動)の依頼といえる。
その依頼文書によると、応援の内容は、サポーターの募集。
サポーターにお願いすることは、facebookコメントへの「いいね」、Twitterのリツイート、家族や友人への拡大、助言や提案、といった4点だとしている。
強制的に全社員が「わたなべ美樹を応援する会」の支部長に任命され、実際に「大田(※店舗名)支部長」などと役職名の記された名刺が、全員分、勝手に送り付けられたという。
◇1人20人ノルマの支援者集め
その後、ワタミフードサービス経営企画本部の亀本伸彦氏から、再三にわたって社内メールでプレッシャーがかけられ、公示日前日の7月3日までに、1人あたり20名のサポーターを集めるノルマが、各社員に課された。
6月23日の「支部長通信」では、「各支部の登録状況を確認していただけるように発信いたします!」として、各社員のノルマ達成状況を公開し、プレッシャーをかけることを発表。
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ポスター設置の依頼文。店舗オーナーにお願いするトーク例まで記載されている。 |
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さらに、レジ横に、サポーターの「申込用紙」を設置させ、ワタミの店舗にやってくるお客にも「応援する会」を紹介するよう指示している。
ポスターも各店に送付され(記事冒頭画像)、テナントとして入っている店舗オーナーに許可を得て、ポスターを目立つところに貼るよう、設置依頼の指示もなされた。内容は、①店外にポスターを貼って良いか②店頭に看板を置いて良いか③店舗周り以外で、ポスターをはらせていただける場所がありますか(オーナーが管理されている他の建物の外壁など)、というもので、かなり厚かましい。
「フランチャイズ店では(※自分で店舗を保有するケースが多いため許可が不要)、ポスターを貼っている店が多いです。僕は抵抗していますが…」(店長)
ポスターについては、前回の都知事選(2011年4月)に渡邉美樹氏が出馬した際は、もっと露骨だったという。「自分がいた店の店長も、ポスター貼りをやらされていました。ワタミの店もないのに、八丈島まで貼りに行かされた店長もいます。やはり後援会の支部長にされて、会社のPCで集合がかけられていました」(元社員)
◇「社長の命を受けて」「どう言う事なのでしょうか?!」と圧力
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「社長の命を受けて」と会社の命令であることがわかる社内メール
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そして、6月28日。こんな全社メールが流された。
「社長の命を受けてみなさんを代表して以下の窓口を努めております。澤村です。この活動に対しては、ご理解とご協力を頂きまして、この場をお借りして改めて厚く御礼を申し上げます。但し、再三再四のお願いにもかかわらず、未だに未登録の方々が多数居ますが、どう言う事なのでしょうか?!.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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応援する会の名簿獲得数を多い順にランキング形式で記載。これは1枚目。全11枚。トップは1人で390人集めた澤村氏。ノルマ20人に達していない社員にプレッシャーをかけている。 |
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