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ブラックカフェ・ベローチェが正社員化回避を狙い、「鮮度が落ちた」(人事部長)と雇止め 女性店員が損害賠償求め提訴

情報提供
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雇止め事件が進行中の「カフェ・ベローチェ」。運営する㈱シャノアールは、カフェ・ベローチェ181店舗、コーヒーハウス・シャノアール31店舗、カフェ・ラ・コルテ1店舗を擁する。従業員5161名のうちパート・アルバイトは4769名だ。
 「若い女性は鮮度が高い。そういう子を揃えたほうが男性客の集客につながる」。雇止めを通告された女性が不服を申し立てると、折衝の中で、会社側はこのような旨を言い放った。全国に181店舗の「カフェ・ベローチェ」を運営する㈱シャノアールは今年6月15日、8年半にわたり働いてきた安西京子さん(仮名・29歳)を雇止めした。これに対し今月23日、安西さんは地位確認と200万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴。4月1日に施行された改正労働契約法では、通算5年を超える有期雇用労働者は無期契約に転換できるようになったため、これを回避するため同社は12年6月15日以降、全従業員の9割以上を占める約5000人のアルバイト(3か月更新)の契約回数上限を一律15回4年に変更。改正労働契約法を脱法し、人間を野菜や魚と同列に扱う“ブラックカフェ”の実態を報告する。(訴状ダウンロード可)
Digest
  • 「鮮度が落ちる」と言われ提訴を決意
  • ブラックカフェと呼ぶ3つの理由
  • 名ばかりパートで業務実態は正社員店長
  • 一度は雇止め撤回するも一方的に合意を破棄
  • 狙いは労働契約法の脱法。1千万人超の有期契約労働者に影響

「鮮度が落ちる」と言われ提訴を決意

大学院で研究を続ける安西京子さんは、親の支援を受けず、奨学金とアルバイトで学費と生活費を稼いできたので、雇止めは死活問題だった。迷いに迷った末に提訴を決意した胸の内を安西さんが話す。

「それまでも、ずっと悲しい思いをしたけれど、大好きなお店で働きたいと思ったので会社と交渉してきました。裁判を起こす決め手になったのは、ユニオンを通しての折衝で、会社に、野菜とか魚のように鮮度・新鮮さがなくなったから、賞味期限が来たから、もう必要ないんだ、と言われたことです。

若い女性のことを“鮮度が高い”と言い、そういう子をそろえた方が男性客の集客につながると、平然と言ったのです。カフェ・ベローチェで働く約5000人のパートのほとんどは女性。一生懸命働く私たちがそんな目で見られていたのか、ということを外の人にどうしても知ってもらいたいと思い、提訴を決意しました。

生活を支えるための職場を奪われただけでなく、人としての価値まで奪われる発言をされたことが、決定的でした」

安西さんは、2003年9月にカフェ・ベローチェ千葉店に、オープニングスタッフとして入店。就職のため2007年3月に退職。その後2008年7月に再度、カフェ・ベローチェ千葉店に入店し、3か月ごとの契約更新を繰り返し、働き続けてきた。

そして2012年3月に、会社は契約更新15回(3か月×15回=4年)の通達を発表し、安西さんについては翌2013年3月15日で雇止めになると通告した。実は、会社が彼女に雇止めを通告した2012年3月23日は、改正労働契約法が国会に提出された、まさにその日だった。(同年8月2日可決、今年4月1日施行)

この法律によって、有期契約労働が通算で5年を超えて更新された場合は、労働者が無期契約への転換を申し込めることになった。それを阻止するための一律15回4年の決定としか思えないタイミングだ。カフェ・ベローチェを運営する㈱シャノアールの従業員は5161名、パート・アルバイトはそのうち約93%を占める4779人で、彼らが一律4年で雇止め対象となることになった。

実際、安西さんに雇止めを通告した3月23日に店長は「そういう法律ができるみたいです」と話し、4月8日には、部長が店長に対し「今回の通達は、法律の改正に伴う対応です」と述べたという。

親の支援をまったく受けずに、奨学金とアルバイトにより大学院で研究する安西さんにとって、職場を失うことは非常に厳しく、困った彼女は、首都圏青年ユニオン(東京公務公共一般労働組合 青年一般支部)に加入して、交渉を始めた。

交渉中と言う理由で、当初は今年3月15日で雇止めと主張していた会社は一度だけ3か月の契約更新し、最終的に6月15日をもって雇止めを通告。そのため7月23日の提訴となった、といのがこれまでの経緯だ。

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被告であるシャノアールが説明する雇止めの理由が変遷していることがわかる。今年1月31日に行われた折衝において、重要員の“鮮度”について言及された。(訴状より)

ブラックカフェと呼ぶ3つの理由

青年非正規労働センター事務局長の河添誠氏(前・首都圏青年ユニオン書記長)は、この事件の意味について次のように語る。

「雇止めになった理由が本当にひどい、という案件です。交渉では、パート労働者が一律に契約更新上限15回にされるのは合理的理由がないではないか、と繰り返し主張しました。

長く働けば働くほど労働者の技能が高まるわけだし、店舗としても会社としてもいいだろう、と。それなのになぜ切るのですか、と言ったところ、会社はその理由を『(パート労働者の)鮮度が落ちるからだ』という言い方をしたのです。

『若くて新しいアルバイトがいたほうがお客さんにとっていいことで、これを入れ替えるのは会社の方針だ』と言いました」

“鮮度発言”が飛び出したのは、今年1月31日の折衝の席上である

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基本時給は800円。経験と役職を得るにつれて少しずつ上がり、最高のファーストPAマネージャーは時給950円。(訴状より)

事件の概要をまとめた記者会見資料。

改正労働法の負の側面を指摘した「首都圏青年ユニオン」のニュースレター第138号(2012年10月21日発行)。法の趣旨と真逆に、契約更新の上限を使用者が設定する危険性を訴えている。ベローチェのような事例が認められれば、1000万人を超える有期契約労働者に波及するかもしれない。

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読者です2013/08/02 11:43会員
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