富士ゼロ“障がい者は用済み”訴訟 一審で芝本昌征裁判長が社員の訴え棄却――サビ残推奨、OB訪問禁止、詐欺的クビ斬りも容認
富士ゼロックスの山本忠人社長(就任期間2007年6月26日以降、同社HPより)。山本社長の下、えげつないクビ斬りが横行している |
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- 判決を下した東京地裁民事第19部・芝本昌征裁判長
- 内臓病む障害者が、痛くて机に突っ伏すと居眠りと見なす
- 労基法違反の突然フレックス禁止にお墨付き
- 「サービス残業」にもお墨付き
- リストラ部署で5分毎に日報に行動記録
- OB訪問を認めない司法判断
- 「退職届を出さないと失業保険出ない」と虚偽説明のリストラ手口に裁判所がお墨付き
判決を下した東京地裁民事第19部・芝本昌征裁判長
判決の前日、D氏から、勝訴の場合は記者会見を開く、と連絡があった。D氏の代理人をつとめる弁護士たちは、証人尋問で被告側の主張をかなり崩せたため、D氏勝訴に自信を持っていたという。
その判決の現場を見たい――そう思った筆者は判決当日の14年3月14日、法廷に向かった。
東京地裁521号法廷に着いたのは、10分前の13時。筆者は一番乗りで傍聴席に着いた。D氏とその代理人3人(中年男性2人、30代位の女性1人)が、向かって左側の原告席に着席。
その後、新聞記者らしき男性、女性が4、5人、傍聴席に着た。
13時7分ごろ、裁判長が入ってきた。
依然として、被告の富士ゼロックス(以下「富士ゼロ」)側は、一人も来ない。
13時9分頃、裁判長が口を開き、事件番号を読み上げ、こう言った。
「主文 原告の請求はいずれも棄却する」
D氏側の敗訴だ。
D氏側は一同、呆然とした様子で退席した。
それにしても、東京地裁民事第19部の芝本昌征裁判長は、一体何をもって、このような判決に至ったのか?それを知るべく、一審判決文を検証してみることとした。
記事末尾PDFの通り、一審判決文は全69ページに上る。そのなかでも肝心かなめは、55ページ下段の「(2)検討 以上を踏まえ、本件解雇の有効性について検討する」という箇所以降である。そこで芝本裁判長は、どういう見解で判決を下したかを記している。
その箇所を精査したところ、驚くべきことに芝本裁判長は、後述のように被告自身も証人尋問でしどろもどろになっている点についてさえ、被告を擁護するかのような判断を積み重ねていた。
しかも、D氏の非を指摘する被告の主張を全面採用してもなお、「必ずしもその事実単体としては重大な問題と評価されない」「さほどの実害を生じたわけでもない」と、芝本裁判長自身が、D氏の解雇を合法にもっていくには材料がまったく弱過ぎる、と認めていた。
以下、判決文の55ページ以降の芝本裁判長の指摘を、四角枠で抜粋し、それについてのD氏の反論や証拠に基づき、芝本裁判長の思考回路を検証していく。
なお、既報のようにD氏は、09年12月に身元不詳の女性から、D氏からセクハラを受けた、という通報があってから、得意の営業の仕事を取り上げられ、反省文や雑用を強いられる日々を送った。その頃から会社は、D氏の行為を監視し、ネチネチと注意し出した。のちに解雇するときの理由付けのための「粗探し」と推察される。以下の各項目は、全てその時期に当たる。
内臓病む障害者が、痛くて机に突っ伏すと居眠りと見なす
これについては、D氏はこう反論する。「2月3日と同月10日は病院に行っていました。領収書もあります。いずれも大病院で、1か月以上前に予約をして、上司には伝えています。上司本人は忘れているんです。無断ではありません。
それに、『サイボウズ』(富士ゼロ社内で運用されている予定表を書くPCシステム。いわゆる、ホワイトボードの役割)に、病院へ行くと書いていました。予定表に入れていれば伝えたことになります。他の社員にはそれで伝えたことになるのですが、私に対してはそれは認めないというのです」
上司のメール。傷害により病院に通院する部下を気遣う様子は絶無だった |
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上は被告の準備書面。2枚目はD氏の勤務実績。3枚目以降は被告樋口氏の証人尋問(左側のメモ書きはD氏記載)
富士フィルムホールディングスHP
上は被告吉田氏の証人尋問。下は吉田氏が作成したD氏の粗探しを列挙した書類。人事部の命令で作成していた
被告三枝氏の証人尋問
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