My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

飲み会は仕事なのか――『Nスペ』スタッフが中国ロケで白酒を一気飲みし死亡…労基署は認めず、地裁が労災認定

情報提供
ReportsIMG_J20140618155620.jpg
亡くなったNHK孫請けスタッフの大島聡史氏(死亡時31歳、仮名)は09年8月11日放送のNHKスペシャル「日本海軍400時間の証言 戦争裁判 第二の戦争」)の制作のための中国ロケ中に、アルコール度数56度の白酒を半強制的に浴びるように一気飲みさせられて死亡した(画像は同番組より)
 NHKの孫請けスタッフとして報道・ドキュメンタリー番組の照明音声を担当する大島聡史氏(死亡時31歳、仮名)は09年4月、NHKスペシャル「日本海軍400時間の証言」(09年8月11日放送)の中国ロケ中に、中国共産党幹部と宴会を行い、「返礼の会」と呼ばれる二次会に参加。そこで白酒(パオチュウ、アルコール度数56度)の一気飲みによる「乾杯」を繰り返した。ホテルに帰ると従業員らが大島氏を病院に連れて行くよう勧めたが、NHKのディレクターは「大丈夫」と拒否。その約4時間後に「吐しゃ物による窒息死」で亡くなった。遺族は10年5月、渋谷労基署に労災申請したが「宴会は仕事ではない」との趣旨で棄却。東京労働者災害補償保険審査官も棄却、労働保険審査会でも棄却され、12年4月、国を相手取り、労災不支給処分の取り消しを求め東京地裁に提訴。今年3月19日、ついに労災認定の判決が下った。飲み会が仕事と認められるために、なぜこうも苦労するのか。事件を検証する。
Digest
  • NHK正社員の4分の1、孫請けスタッフの年収
  • 中国軍事施設の空港撮影許可を何度も当局に要請
  • ロケ最終日の前夜に宴会スタート
  • 二次会(返礼の会)で白酒(56度)を10回以上一気飲み
  • 病院に行くよう勧めたのに上司が「大丈夫です」と拒否
  • 中国での“宴会”の位置付け
  • 労災認定の判決下る
  • Nスペ取材班執筆本で死に触れるも反省、謝罪は一切なし

NHK正社員の4分の1、孫請けスタッフの年収

裁判資料によると、亡くなった大島聡史氏(死亡時31歳、仮名)は2000年5月(当時23歳)に「㈱ホットスタッフ」(派遣会社)に入社。そこからNHKの下請け制作会社である「エクサート松崎」と請負契約を結ぶ形態で、NHK取材スタッフとして照明音声業務を担当するようになった。

遺族提出の資料によると、大島氏は、子どもの頃から正義感が強く、嘘と間違ったことが大嫌いで、とても律儀な子どもだった。将来については、14歳の頃から、映像に携わる仕事をすると決めていた。それが念願叶ってNHKで仕事をするようになり、幸せそうだったという。そのためか、仕事が休みになると、不満そうな顔をするほど、働くことが大好きだったという。

同僚の証言でも、大島氏は、「真面目な性格」で「人一倍仕事熱心で誠実」「番組をよくするために、率先して面倒な役回りや大変な仕事を引き受けるなど、番組を良くするための労を惜しまない性格」だったという。

そんな大島氏が担当したNHK番組は、NHKスペシャル、クローズアップ現代、ニュースウォッチ9、首都圏ネットワーク、おはよう日本、おはよう首都圏などの報道・ドキュメンタリーだった。

そんな大島氏の待遇は、月収は基本給17万円、住宅手当8,700円、業務手当1万6千円~4万2千円など、合わせて平均月収26万円程度、ボーナスなし、年収312万円程度だった。

ちなみに、NHK正社員の平均給与は今年度予算で年間1163万9505円。福利厚生・退職手当を含めると一人当たり年間1777万590円もらっている。(NHK「平成26年度 収支予算、事業計画及び資金計画」より)

そんな格差社会のど真ん中にいる大島氏は、現場のNHK正社員と飲みに行くこともあった。例えば後述のNHK報道局社会部ディレクター内山拓氏(実名、大島氏より1歳年下)と飲んだ際、内山氏が「どうしてそんなに仕事を入れるのか?」と大島氏に聞いたことがあったという。そのとき、大島氏は「仕事をした分だけ給料がもらえるし、彼女もいないから…」と答えたという。

中国軍事施設の空港撮影許可を何度も当局に要請

このように仕事三昧だった大島氏は、NHKスペシャル「日本海軍400時間の証言」(09年8月9~11日まで3夜連続放送)のなかの、3夜目の「戦争裁判 第二の戦争」)の制作のため、09年4月1日から中国ロケに行く事になった。このロケは、旧日本海軍が中国南部の三灶島(さんそうとう)の住民を大量虐殺した事件の取材だった。

ロケのスタッフは、前述のNHK報道局社会部の内山拓ディレクター、NHK報道局映像取材部の佐々倉大(実名)氏、大島氏の3人。この3人は08年12月にもハワイ真珠湾のロケで一緒だった。

中国ロケの準備は、現地へ行く4か月前の08年末頃から、中国現地で通訳を担当する楊昭氏(以下、新たな登場人物は全て実名)が何度か三灶島現地に入り、取材対象の場所、人の選定、取材許可申請を進めていた。その頃から、

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り8,297字/全文9,709字

三灶島の地図(同)

白酒(パイチュウ)の一気飲みを繰り返した(写真はイメージ。「ガイドブックよりわかりやすくレビュー発信!ITエンジニアの満作ブログ「どうする満作!?」より)

上二枚は戦時中の三灶島の空港。下は現在(同番組より)

「日本海軍400時間の証言軍令部・参謀たちが語った敗戦」(著:NHKスペシャル取材班/新潮社刊)より

公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

プロフィール画像
sny220152014/06/21 00:42

中国ロケ、それも共産党相手の返礼接待なら仕事そのものじゃねえか。それに向こうの飲み方は、杯を逆さにして飲み干したことを見せるのを繰り返すんだろ。死んでも不思議じゃねえよ。

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

本文:全約10100字のうち約8600字が
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい

新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)

企画「ココで働け! “企業ミシュラン”」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、info@mynewsjapan.comまでご連絡下さい。会員ID(1年分)進呈します。