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飲んでも肌には届かない、機能性表示食品・キユーピーのヒアルロン酸サプリ『ヒアロモイスチャー240』の“自作自演”ぶり

情報提供
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機能性表示食品として届出されたキユーピーの「ヒアロモイスチャー240」。2008年にトクホを落ちたサプリだ。証拠不十分なまま6月には機能性表示食品として発売予定。
 企業が自己責任で機能性を表示できる「機能性表示食品」が2015年4月から始まった。4月16日発表の8件の中には、2008年に国が許可する特定保健用食品を証拠不十分で却下された、キユーピーの「ヒアロモイスチャー」もあった。企業が提出した証拠資料の論文を読むと、動物実験でヒアルロン酸が肌まで届くと確認された量は最大でも0.3%程度。人間での肌の潤い効果を調べた論文は3件すべてがキユーピー社員が書いたもので、キユーピーの別の社員がそれらを再評価して「効果アリ」と結論付けており説得力がない。しかも詳細にみると、試験終了2週間後にだけ時間差で効果が出たという不思議な論文も含まれていた。このように、新制度では、トクホを落とされたものも、その後、証拠不十分なまま自社の研究を自社の社員だけで判断し“自作自演”で機能性を表示できてしまう。これでは消費者の信用は得られない。
Digest
  • 加齢で減ったヒアルロン酸は飲んでも補充されない
  • キユーピーの動物実験でも3日後には90%が排出
  • 飲んだヒアルロン酸のどの程度が肌へ届くのかは不明なまま
  • 肌のうるおい試験終了2週間後にしか効果がでない臨床試験
  • キユーピー社員の研究を別の社員が評価して「効果あり」と判定
  • トクホを落ちたサプリを機能性表示商品にしてよいか

加齢で減ったヒアルロン酸は飲んでも補充されない

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現在販売中の「ヒアロモイスチャーbioうるおいの力」の宣伝の一部。食べたヒアルロン酸がそのまま体内に入り補えると宣伝している。

左図は、現在キユーピーの通販サイトで売られているヒアルロン酸サプリメント「ヒアロモイスチャーbioうるおいの力」のホームページの一部だ。

「美容に大切なのはヒアルロン酸!30代、40代、50代と年齢と共に減少し始めます。」

「どうやってヒアルロン酸を摂ればいいの!? 食材からとるのが難しい成分ですが、『ヒアロモイスチャーbioうるおいの力』ならもっと手軽に続けられ、ヒアルロン酸を体の内側から補えます!」

この宣伝文句を読んだ100人中100人は、サプリメントで摂取したヒアルロン酸が体内に吸収されて、加齢とともに減る体内のヒアルロン酸を補充してくれると考えるだろう。

しかし、口から食べたり飲んだりしたヒアルロン酸が、そのまま腸から吸収されて、体内でヒアルロン酸としてとどまるということは、あり得ないとされている。

キユーピーはトクホを落ちた後も、その事実を公表せず、あたかも飲んだヒアルロン酸が体内へ吸収され、補充されるようなイメージで、自社の通販サイトで販売を続けていた。その問題点については、2009年に記事を書いている。

厚労省、トクホ不許可の情報を隠匿「飲むヒアルロン酸サプリに効果なし」

厚労省がトクホとして認めなかった理由として以下の3点が挙げられている。

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トクホを却下された2008年の審議会部会の議事録要旨

1) 体内動態が不明確であること(口から入ったヒアルロン酸が吸収されて皮膚に届くことの証明がされていない)

2) 有効性が認められないこと(ヒアルロン酸を飲んだ結果、肌の保水力が上がるのかの証明が不十分)

3) 健康の維持増進に寄与することが期待できそうにないこと(示されている肌の保水力の若干の上昇が、肌の健康維持に意味があるのか)

たとえ過去に証拠不十分でトクホに落ちたとしても、その後新しい証拠で効果が証明されたのであれば問題はないのだが、今回4月から始まった機能性表示食品への届出として提出された情報で機能性は証明されているのだろうか。以下、論文を検証した。

キユーピーの動物実験でも3日後には90%が排出

そもそもヒアルロン酸は、体内に入って肌まで届くのか?キユーピーが消費者庁へ届け出た資料の中に「作用機序の説明資料」という文書では、「経口摂取したヒアルロン酸Naは、腸内細菌によって2~6糖にまで分解され一部は小腸から吸収され、皮膚などの組織に移行するという報告がある」と説明し、3件の動物実験の論文を紹介している。

 しかし、その3つの論文を読んでみると、

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2002年の臨床実験論文の効果を示したグラフ。実験途中の2週間目だけ差がついているが、4週間目には差はない。

2014年発表の臨床実験の論文のグラフ。肌の水分量の変化量を比べたもの。ヒアルロン酸の摂取中は差がなく、摂取を止めて2週間後に差が出てくるという不思議な結果。

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Magaret 2015/04/24 20:37
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