細木数子に見捨てられそうな老舗出版社KKベストセラーズ、会長がパワハラで社員18人を退職に追い込む
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15年6月、KKベストセラーズから突然倉庫勤務を命じられた同社の編集者・山﨑実さん(実名) |
- Digest
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- 出版界の「鬼才」が作った出版社
- 社員個人を名指しし、「辞めてくださいよ」
- 編集者自ら自転車で書店回り営業も…
- 「もう、ねっ、向こうの倉庫行けって」
- 「事前に解決するって方向は難しいか?」
- 「細木さんから見捨てられる」
- 編集経験者不在の「企画会議」
→栗原会長による叱咤激励、あるいはパワハラ(※長時間バージョン=4分16秒=は記事末尾よりお聞きいただけます)
出版界の「鬼才」が作った出版社
2015年8月に出た「平成28年版」で累計発行部数が9800万部に達したとされる『細木数子の六星占術 あなたの運命』。年末になるとコンビニの文庫本売り場や書店で必ず目にするこのシリーズを大看板に、『一個人』『歴史人』などのカルチャー雑誌や、『メンズジョーカー』『ストリートジャック』などのファッション誌を刊行する東京都豊島区にある出版社が、「株式会社ベストセラーズ(KKベストセラーズ)」である。
従業員数144人、出版業界紙『新文化』の売上ランキング(2014年)では業界92位と規模としては中堅のベストセラーズだが、日本出版史における存在感はかなりのものだ。
ベストセラーズでは14年12月に栗原武夫代表取締役社長が就任しているが、現在も事実上のトップは、同社のオーナーで、武夫氏の実の父親でもある栗原幹夫会長であるという。
同会長は、岩瀬順三の生前に経理・総務担当として引き抜かれ、岩瀬没後の86年、会社を整理統合して現在のKKベストセラーズを設立。以来12年1月まで26年の長きにわたり、同社の社長だった人物だ。
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東京都豊島区南大塚にあるKKベストセラーズ本社。コンクリート打ち放しの建物は、建築家の山本良介氏が設計。![]() |
社員個人を名指しし、「辞めてくださいよ」
だが2015年12月現在、ベストセラーズ社ではこの栗原会長をめぐって不穏な騒動が持ち上がっている。13年末から15年秋までの2年足らずの間に、刊行した書籍や雑誌の売れ行き不振、刊行点数の少なさなどを会長から非難された結果、18人もの社員・役員が退職に追い込まれたというのだ。
自身も退職勧奨の標的にされ、15年6月に埼玉県深谷市にある倉庫(株式会社ベストセラーズ倉庫)への異動を命じられた同社の入社14年目の編集者・山﨑実さん(46歳)は、次のように証言する。
「すでに辞めた18人のうち14人は編集畑の出身で、しかもそのうち何人かは、会社に多大な貢献をした人たちでした。『一個人』『歴史人』などの創刊編集長を務め、看板雑誌に育て上げた元副社長のほか、男性誌の『ザ・ベストスペシャル』『CIRCUS』の元編集長や、書籍のヒット作を何本も出して業界で「名物編集者」と呼ばれたような編集者も…。それが皆、栗原会長から一般社員の面前で罵倒され、時には『辞めろ』と恫喝されて辞めていったのです」
これに対しベストセラーズ側は、会長が月頭朝礼などで社員に向かってした発言は「厳しい経営状況を説明するとともに、社員の奮起を促すための叱咤激励に過ぎず、業務に必要な合理的範囲内のものであって、特定の社員に向けた退職勧奨を示す暴言などない」と主張している。すでに退職した18人についても、育児や介護など個人的な都合により退職したに過ぎず、「会長の退職勧奨により退職した者はいない」(東京都労働委員会に15年11月15日付で提出された準備書面より)と述べている。
だが筆者は、栗原会長が14年から15年にかけて、ベストセラーズ社の朝礼などの場で行った発言の録音記録を入手した。少なくともこれらを聴く限り、同会長はベストセラーズ社の社員個人を他の社員の面前でこき下ろしているほか、直截的に「辞めろ」と口にしている場面も複数確認できる。以下、その幾つかを引用しよう。
「一つも良くなんないのは、会社へどうやって来ていると思っているんですか皆さん?一つも危機感がないんですよ!会社も、給料だけもらいに来ているんだから、みんな。そういう人は辞めてくれ会社から!!そうじゃないと、いくらどこまでいっても、同じですよ!」
「ほんで広告部。広告のなんだこれ?S(広告部社員)なんて酷いじゃないですか?! 1月、2月は20万ですよ!? 3月は350万いったけど、4月になったら42万ですよ!? こういうのは辞めさせてくださいよ!ねっ、もうどうしようもないでしょ?何も言わないんですから。ねっ?みんなそう言うんですよ。自分の給料も稼げないで会社に来ているんですよ!」
「3か月も4か月も(本が)出ない人もいる。ほんで給料なんか毎月もらっているんだよ。3か月、4か月出ない。どうなんですか?こういうの! ね〜、3か月も4か月も健全に出ないじゃないですか!?昨日入った1年生と同じですよ。本当に。だからそういう人は会社に来ないでくれ!」
「書籍(編集部)も、こちらから言いますから。『辞めてくれ』と。ねっ?みんなわかるでしょう!?会社へ来ててどれくらい利益出ないってのが。そんでも平気で来ているんですからみんな!1回も給料削ったことないけど、もう来月からみんな削りますよ。そんで嫌な人はもう辞めてくれ! ねっ、もう辞めてくれ!!」(以上は15年6月16日の「緊急昼礼」での発言)広告部会議や、書籍編集部においても、以下の通り、パワハラ的な発言が多く録音されている
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KKベストセラーズの社長を26年間務めた栗原幹夫会長。菅原茂副社長に後継社長を2年任せた後、実の息子である武夫氏がその跡を継いだ。
KKベストセラーズの最近の刊行物
某コンビニの文庫本売り場に置かれていた細木数子『六星占術』の平成28年版
山﨑さんが異動させられそうになった埼玉県深谷市にあるKKベストセラーズの倉庫(株式会社ベストセラーズ倉庫)。写真はグーグルストリートビューより。
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読者コメント
社内で全体朝礼が開かれ、栗原武夫社長が前日限りで社長を退任したことを事後報告。廃業支援などを行うコンサルティング会社代表で、33歳の公認会計士・塚原浩和氏の新社長就任が発表された。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54482
(2018年2月1日)
占いなんて頭の弱い人を騙しているだけなんだから細木の本なんて売れなくなって当たり前。
どっちにしてもKKベストセラーズなんて潰れるっしょ。なんらかのタイミングで転職した方が全従業員にとって良い。
インターネットを始めとする情報通信技術の進歩と普及拡大、そして昨今の劣悪な雇用労働情勢に端を発する国内労働者の収入低下と失業増加による内需の減退。 正に自明の理だな。
悲しいなあ。これが出版界の現実。例え軽減税率が導入されたと仮定しても大して変わるまい。古いものの生き残りを助けてはいけない。
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