ファンケルが「『えんきん』の記事は根拠のない虚偽報道だ」として取消しと謝罪を要求
ファンケル社からの2月22日と3月14日の通知。3月14日の通知では記事について「何らの根拠のない虚偽報道」だとして、「記述を取消し、謝罪を行なうこと」を要求している。(ファンケルからの通知書2通、こちらからの返信2通は記事末尾に全文掲載) |
- Digest
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- 海外の安全基準を超えるという事実を報道すると違法?
- 抗酸化物質の摂り過ぎリスク
- 基準は国それぞれ?
- 1日許容摂取量以上でも安全と言うのか?
- 肝臓肥大は起こらなかったという新データがある?
- 「消費者を装った」取材は認められない?
- 唐突で揚げ足取りの取材だったか?
海外の安全基準を超えるという事実を報道すると違法?
ファンケルの「えんきん」 |
1月24日の記事の趣旨は「ファンケルの『えんきん』に含まれる機能性成分の一つ『アスタキサンチン』の量は、欧州食品安全機関(EFSA)が定める1日摂取許容量(ADI)の2倍も含まれているため安全とは言えない。動物実験では肝臓肥大が起きているので要注意」というものだ。
以下、ファンケル社の通知書の内容を紹介し、どの点で筆者の見解と相違があるのかを明らかにしたい。
まずファンケル側は、記事を「何らの根拠のない虚偽の報道」と指摘しながらも、その一部については事実を認めている。
通知書では、以下のように主張する。
文面を読む限りでは、ファンケル側は、自社の『えんきん』のアスタキサンチンの量が欧州食品安全機関のADI(1日摂取許容量)を超過していることは事実として認めているようだ。
ADI(一日摂取許容量)とは、食品添加物や農薬などのように意図的に食品に使用される物質について、 一生涯毎日摂取しても健康への悪影響がないとされる一日あたりの摂取量のこと。
たとえ海外の基準を超えることが事実であっても名誉棄損は成立する、とファンケル側は主張するのだろうが、それは、公共の利害に関する事実なのか、また公益を図る目的であったのかによるのだろう。
「えんきん」に含まれるアスタキサンチンの量が海外の摂取基準を超えているという事実は、日本の消費者にとっては、公衆衛生上非常に重要な情報といえる。
したがって、この事実を提供することは公共の利害に関わることであり、消費者の健康を守るという公益的な価値は高いと思われる。
抗酸化物質の摂り過ぎリスク
そもそも筆者の関心は、近年、健康食品やサプリメントが増えてきたことで、抗酸化物質の摂りすぎによる有害影響が起きていないか、という点にある。
一般にビタミンAやE、動植物の天然色素であるカロチノイドやポリフェノールなどの抗酸化物質は、健康維持や老化防止、がん予防に効果があると言われ、サプリメントや健康食品の素材としても多く使われている。
しかし、喫煙者にがん予防のため抗酸化物質のβカロチンを与えたら肺がんの発症率が増えたという研究結果は有名である。
最近の例では2015年10月にも、抗酸化物質が、既に体内に存在するがん細胞の転移と成長を促進しているという研究が「ネイチャー」に発表された。
このように、抗酸化物質には、条件によっては有害な影響が出る場合があるという事は、一部研究者の間ではよく知られてはいるものの、消費者の間では、サプリメントの宣伝の多さに埋もれて、ほとんど知られていない。
アスタキサンチンもカロチノイドの一種で、ネット上では、ビタミンEの500倍~1000倍の抗酸化力などと宣伝されているが、そんな強力な抗酸化物質をどれだけ摂っても安全といえるのかについての情報は見つからない。
健康食品やサプリメントの機能性成分の情報は、企業発表の都合の良い情報が氾濫しており、消費者にとって必要な安全性や機能性の真偽の検証が、圧倒的に不足していると思われる。
そういう意味で、筆者としてはこのアンバランスさを埋めるために、微力ながら取材を続けている、ということだ。
基準は国それぞれ?
一番理解に苦しむのは、以下の記述だ。
筆者としては、日本の食品安全委員会(2004年)と欧州のEFSA (2014年)の評価結果の両方を多角的に検証し、その結果、EFSAの評価結果の方に妥当性があると判断をして、記事を書いた。
2004年の長期摂取の安全性試験を見ていない日本の評価と、その10年後の2014年の長期摂取の試験も見ている欧州の評価を比べたら後者の方が、信頼性が高いのは誰の目にも明らかだろう。
盲目的で、多角的検証を怠っているのはどちらなのだろうか?
ファンケルのこの理屈に従うと、日本の食品安全委員会は放射能のリスクについて100ミリシーベルト未満のリスクは不明だと評価しているので、100ミリシーベルト未満でも有害影響はあるとする国際放射線防護委員会(ICRP)の見解を報道することは、東京電力の名誉を棄損する、という事になる。
そんな理屈を、認められるだろうか
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有害作用が再現されなかったといファンケル側の根拠と推察される2016年の論文。利益相反の記述に「論文著者は、合成アスタキサンチンを製造するDSNNutritionalProductsLtd.の社員である」と明記してある。
ファンケル「えんきん」の新聞広告(2016年1月24日)
同じ新聞広告。「手元の小さい字が読みにくい」人へ勧めているのに、「消費者庁の個別審査を受けたものではありません」とか「疾病に罹患している方を対象にした食品ではありません」とか消費者に読ませたくない表示については、限りなく小さい文字にしている。
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読者コメント
キャノーラー油 読売新聞販促で頂いたもの、350グラム×3本→
非常時灯油使用にして、大豆油かオリーブ油を買い込んできます。記事本当に、渡辺さん有難う。
ファンケルはまるで韓国が日本に対して永遠に謝罪を求め続けるような対応をするのでは無く、何がどう問題なのか、何が違うのか、消費者の視点を考えた対応をするべきだろう。ファンケルは都合の悪い情報を削除させようという卑怯な対応をするべきではない。MNJはひたすらに事実の報道に徹して欲しい。
記者からの追加情報
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