引越社“アリ地獄”の給与制度 有給休暇を取ると給料が下がる、謎の「ポイント制」
![]() |
営業職→アポイント部へ配転させられ、給料は約50パーセントの減額となった |
- Digest
-
- 次々に明らかになる引越社のアリ地獄状態
- 頑張って働くと給料がさがる!?
- 有給休暇を取得すると給料が下がる
- 名古屋集団訴訟でも給与減額が問題に
- 社内預金50万円の意味
次々に明らかになる引越社のアリ地獄状態
同社の実態が外部にもれ始めたきっかけは2015年7月31日、現役社員と元社員12人が㈱引越社を名古屋地裁に提訴したことだ。同じ日に東京本部勤務の西村孝三さん(仮名・当時34歳)も㈱引越社関東を提訴。仮名とはいえ、西村氏は顔を出して社外に向けて内情を訴えたことが大きい。
さらに同年8月20日、㈱引越社関西を相手取り元社員1名が大阪地裁に提訴。8月24日、㈱引越社関東を相手取り元社員4名が東京地裁に集団提訴した。
その後、訴訟に参加する社員・元社員が新たに加わり、2016年5月20日現在では以下のように原告が膨れ上がっている。
◎引越社(名古屋地裁)訴訟15人◎引越社関西(大阪地裁)訴訟2人
◎引越社関東(東京地裁)23人
関係者によると、このほかにもいるという。
現役社員が会社を訴えただけでも話題を呼んだが、その後、ユーチューブで同社の井ノ口晃平副社長らが強圧的な態度で労働争議を威圧する様子が流され、16年5月24日現在で再生回数は約218万回に達している。
この映像は、前述の西村さんが会社に対してものを言い始めたあとにシュレッダー係に強制配転させたことに対し、西村さんが加入するプレカリアートユニオンらが抗議活動している様子を映したものだ。
また本サイトで報じたように労基署提出書類の改ざん書類(ビフォー&アフター)が発覚したことも多くの人々の関心を集めた。(ブラック企業大賞ノミネートの引越社、長時間労働隠蔽のため労基署提出書類を28ヵ所改ざん 副社長が指示)
こうした背景もあり、15年11月29日発表の第4回ブラック企業大賞では、㈱引越社関東が、WEB投票賞 (全投票数の約55%)とアリ得ないで賞 をダブル受賞した。ちなみに大賞は、㈱セブンイレブンジャパンが受賞した。
名古屋・大阪・東京で係争中の裁判では、給料から天引きされた、車両や荷物などの破損弁償金を返せ、という請求が中心だが、給与の体系も問題にされている。
訴状をはじめ関連書類を見ると、社員に給与明細が渡されず、しかも一方的に給与が減額されてもその理由がわからないと原告たちは訴えているからだ。いったい同社では、どのような給与体系になっているのだろうか。
頑張って働くと給料がさがる!?
![]() |
いつまでたっても這い上がれないアリ地獄のポイント制、ランク別の給与制度。独身・既婚でも差がつく![]() |
2015年初頭に退職した元管理職のAさんが説明する。
「私は退職してからユニオンに入って、給与から天引きされた弁済金などの支払いを求めて仲間とともに東京地裁に提訴しています。『業績不振』を理由に給与カットされていました。しかし、業績不振といいながら、その当時は新たに2店舗を出店していたんです。
給与が下がるのは、一定のポイントを下回ると給与が下がるシステムになっているからです」
画像に示した「採用・諸手当の取り決め」を見ながらAさんの話を確認すると概要はつかめる。
「トラックのドライバーは4トン、3トン、2トンとトラックの大きさによって分けられ、支店ごとに登録されています。そのドライバーどうしが競争させられ、月ごとのポイント数によってAランク、Bランクと、ランク付けされます」。
なお、平均的なポイントを取得した場合はFランクとなる。
「そのランクによって給料が変わるんです。たとえば、あるドライバーが現場作業を午前と午後にやったとしましょう。『積み』と呼ばれる作業をすると2ポイント、『降ろし』という作業が2ポイント。さらに、自分の作業が終わって別の現場の応援にいくと『応援』で2ポイント加算される」
いまAさんが話した例よれば、そのドライバーは1日に10ポイント獲得ということになる。
「また、支店によって違いはありますが、営業業務により成約させると4ポイントあるいは5ポイント付く仕組みになっています。
このようなポイント制になっているので、ドライバーによって差が出てきます。月々のポイントを集計し、その支店の登録ドライバーの平均ポイントが仮に100としましょう(この場合、100ポイントの人はFランクになる)。
中には200ポイントの人もいますから、平均値Fランクより100ポイント高くなるためAランクになります。もし50ポイントだったら
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り3,343字/全文5,180字
営業職だったころの西村さんの給与明細。引越社関東の営業職70~80人のうち成績がナンバーワンだったこともある。しかし、モノ言う社員になったとたん、配転・減給され、現在会社を提訴している。
異動となり、半減したままの給料明細。一日中シュレッダーに書類を入れる作業をさせられている。これは追い出し部屋だ。
現役社員と元社員が集団で提訴した名古屋訴訟における原告たちの請求金額。業務上の破損の弁償金を給料から天引きされたり、一方的に減額された分を取り返そうとしている。
車両事故や引越破損の弁償金を支払うために社員は社員会の「友の会」から借金し、毎月給与から天引きされる。社内預金は、事実上の担保金で、退職するときに「友に会」に借金が残っている人は、社内預金を友の会にまわす。
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
労働基準法の理解が無い経営者が多い。企業には、定期的に労働法規研修会等の受講~審査を義務付ける必要があります。
記者からの追加情報
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい
新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)
企画「CMリテラシー」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、info@mynewsjapan.comまでご連絡下さい(会員ID進呈)