「シャープ従業員の皆様へ」と題され、全社員にPDFで送られた、鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)総裁・戴正呉副総裁の連名による、2016年5月12日付メッセージ後半
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世間では連休となるゴールデンウィーク(GW)、鴻海精密工業の子会社となることを受け入れたシャープ幹部たちは、休日返上で、多忙を極めていた。シャープ全体を20程度の事業領域に分けた各領域ごとに、日本にいる事業部長と海外の拠点責任者が、中国・深センなど鴻海の拠点に呼び出され、一週間泊り込みで、現状報告&今期の見通しを説明。鴻海側からは、各拠点のビジネスモデルをどう変えていくかについての詳しいレクチャーを受けていたのだ。ある事業部では、事業部長はホテルだったが、部長クラスは連日、従業員向けの不衛生な寮に寝泊まり、という扱いだったという。大阪本社でも、リモートの質問対応で各事業部数十人の社員が待機、休日を拘束された。正式な出資前のグレーな時期ながら、郭台銘(テリー・ゴウ)総裁の本気度とスピード感が早くも姿を現している。
【Digest】
◇甘い海外拠点は鴻海が仕切る
◇「日本人は全員、日本に帰る」流れ
◇国内は――「シャープはアップルになれ」
◇阿倍野本社の人は「バッサリ」の見通し
◇ストックオプション貰えるかも――確実に残される人たち
◇8千人レベルの削減は十分ある
◇甘い海外拠点は鴻海が仕切る
このGWのレクチャーで、鴻海(ホンハイ)が考えているシャープの未来図が見えてきた。
たとえば、そこで示された、シャープのタイにおけるビジネスモデルを描いた英語の資料によると、冷蔵庫などを生産しているタイの製造子会社「SATL」(シャープタイ工場)は鴻海がレントして運営する、物流は「JUSDA」(鴻海の物流会社)が担う――といった、鴻海側からの、明確で具体的な未来図が描かれている。
各拠点ごとに、拠点長や部長クラス以上に対して、こうした鴻海側のアイデアが示され、その実現可能性や障害について検討するよう、指示を受けた、というのだ。
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メッセージ全文 |
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鴻海はアップル『iPhone』をはじめとする最先端の製品を受注生産するメーカーとして、ダントツで世界一の規模であり、おそらくは世界一の生産性も誇る。
シャープ買収によるシナジーを生もうと考えたら、生産や物流については、鴻海式のコスト構造に統一するのは、当然といえば当然だ。
「実はシャープは、海外拠点もコスト管理が甘くて、人件費が高いんです。
鴻海のようなブラックな労務管理ではなく、現地では『シャープは甘い』とナメられている。給料を上げて当然、と思われていて、ストでも、国営企業の次に標的となります。
こうした管理が甘いシャープの海外拠点は、3年くらいで切っていくのではないでしょうか」(シャープ社員)
◇「日本人は全員、日本に帰る」流れ
現段階で示されている未来図は、鴻海からの提案書、という位置づけだ。シャープの拠点がある各国(タイ、ベトナム、インドネシア、中国)、各商品について、「東南アジアの白モノはこうなる」「中国での液晶はこうしたい」といった、ビジネスモデルの変更を提案してきているという。
提案といっても、この夏を過ぎれば、正式にシャープの66%の株式を持つ親会社となるため、むしろ指示書、事業計画書ともいえる。鴻海にレントされた生産子会社は、鴻海から送り込まれた経営陣によって、鴻海の人件費相場に下げられ、下がらないと見るや、切られる可能性は高い。
「家電などコンシューマー商品事業で、アジア・中国での販売会議があると、鴻海の社員が乗り込んできて販売状況や在庫の現物照合データについて聞いて回っています.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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3つの構造改革の1番で「鴻海拠点の活用による海外拠点の集約」「グローバルでの人員適正化」が掲げられ、もう一段のリストラは不可避(2016年5月12日付『2015年度決算概要』より)
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上:「経営信条」は毎朝、全社員が唱和している。
下:「経営理念」のほうは、研修で触れる程度。
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