元大企業社員の医師が語る「医者になるなら、決断は早いほうがいい」理由、AIで変わる放射線科医の仕事
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社会人を経て医学部に入り直して医師10年超のインタビュイー(現在40代後半) |
- Digest
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- ストレート組は半数
- Z会と模試だけ、会社も辞めず2年で受かった
- 数学がネックになる
- 2人以外は同期全員、医者になった
- 昔は暇な職場だった放射線科
- 教授になれる年齢制限がある
- 「医局に残ったほう得策」という判断
- リズム感がない日本語が障壁に
- CT・MRI画像を月400枚診る
- 胃の検診画像を週750枚診る
- 見逃しは表沙汰にならない
- クオリアの把握をAI化できるか
- 人間を下支えする未来
- 医者の世界はパターナリズム
- 医学部時代、貯金が500万増えた
- 8年目で急に上がる県立病院の設定
- 23区内は、もう当直バイトがない
- 国立大病院の給料は他学部と同水準
- 互助組合的で、歳をとるほどありがたい医局
- 医師の専門別、性格の特性
- 社会人が医者を目指す際は…資金計画、年齢、受験

ストレート組は半数
医者は成績優秀者が集まる偏差値エリートの世界ですが、それでも、高校生から現役で医学部に入って6年で医者になるストレート組は、せいぜい半数。残りは、受験で浪人しているか、社会人経験者、他学部・他大学の既卒・中退者、院卒を経ているか、医学部入学後に留年または国試留年するなど、多様です。
医学部の同期に「10浪」で入学した人もいましたし、社会人経由では日産自動車やANAを辞めて来た人もいました。下の代には、50代の人もいました。だから、特にアラサ―くらいまでなら、遅すぎるということはないです。僕が医学部に入ったのも、29歳でした。
医学部はどこも定員が100~110人程度で、国公立大でも約3割は医者の息子・娘でしたが、僕は医者の家系ではありません。僕が入学した国立大医学部同期だと、社会人出身者は10人ほど。どの大学でも、社会人経由は概ね1割強、10~20人はいるのが普通です。高知医科大学(現・高知大医学部)が、社会人経験者もしくは他学部、他大学の既卒者、院卒者を、30~40人とって話題になったこともありました。
医学部は現在、二次で面接があるのが普通ですが、基本は、ただでさえ医師デビューが遅れる社会人受験者の場合、「ちゃんと6年で卒業できるかどうか」がみられていると思います。年齢だけで落とされることは基本的にありません。
Z会と模試だけ、会社も辞めず2年で受かった
最初に入った大学は、一浪で旧帝大の農学部でした。その時点で医者になるつもりはなくて、医学部志望はなかったため、仮面浪人も考えませんでした。
学卒で就職したのはノンビリした大企業で、3年目に研究部門に異動になってマーケティングの研究をしたり、4年目に情報システムを入れ替える仕事をしたり、といったローテーション人事のなかで、研究職に興味を持ち、転職を考えました。でも、シンクタンクは院卒しか採らないし、経済にあまり興味がわかなかった。「研究職志向はあるが、経済には興味がない」、さらに当時(90年代)は、まともな企業の第2新卒採用もほとんどなく、医師への道を志しました。
会社に勤務しながら3か月ほど勉強して模試を受けたら、田舎の国立大の医学部(山口大、愛媛大)に駿台予備校でB判定(合格ライン)。これで、いけそうだと思えました。東大オープン理Ⅱ(理Ⅰより易しい、医学部保健学科など)はA判定、北大・東北大がD判定、九大がB判定で、大学別模試では半々の確率。受験勉強から8年以上も遠ざかっている割に、鈍っていなかったのです。
地方国公立大、大半の私大の医学部試験は、概ね、フローチャートでマニュアル通りにやれば解けます。よい参考書が目白押しだからです。ただ僕は、資金的な負担も考え、国立大(※学費は6年間で350万円ほど)に絞りました。1年目は会社の仕事の関係で受けられませんでしたが、会社に在籍したまま勉強して臨んだ2年目、国立大の医学部に受かりました。Z会と模擬試験だけで、あとは参考書による自習でした。
数学がネックになる
社会人が受験する場合、上位の旧帝大に受かったことがある人でないと、キツいかもしれません。数学がネックになると思います。たとえば微積分は、出題が狭い範囲でパターンが決まっていて、理系だと一回やって覚えているから、そのバックグラウンドがある。実際、同期の社会人出身者は、東大、京大、阪大など、ほとんどが旧帝大出身でした。文系出身者であれば、理科は化学、生物選択1択が良いと思います。勉強のやり方、頭の働かせ方が歴史・地理と基本同じだからです。
資金面に余裕があるなら、私大は中堅以下なら受かりやすい。ただ、外部からはなかなか分からないと思いますが、私大医学部は入学難易度・出身医師の実力ともに、下から上まであって、聖マリアンナ大、帝京大、杏林大、川崎医科大、藤田保健衛生大あたりは、突き抜けてダメだと言われています。それでも昔に比べると平均レベルは相当上がった、というのがベテランの先生方の意見です。逆に、岩手医大や久留米医大は意外に評判がいいです
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医局支配下にある、県立病院のキャリアパス
人工知能による画像分析で1ミリ未満の癌を早期発見できると主張するベンチャー企業「エンリティック」(NHKスぺシャルより)。現状、CT検査でも人間の眼では1センチ以下の腫瘍発見は難しいとされている。
インタビュイーの、医学部1年目からのバイト代含む総年収推移(大学1年時は民間企業の退職金等を含む)
ある県立病院の年間給与額設定。免許取得後の年数によって決まる。
医師8年目以降に就任する「医長」(県立病院)の給与明細
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