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原発大推進の「関電労組」系政治団体が無届団体に違法な闇支出を続行、使途不明金は過去8年で9400万円に――NHKは放送できず

情報提供
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政治団体「関電労組政治活動委員会」が、政治団体届けのない「ヤミ政治団体」多数に「職場後援会活動費」などの名目で多数の支出をしていることを示す収支報告書の記載。2015年は1400万円あまりの使途不明金が確認された。
 原発推進政策を支持する連合(日本総労働者連合会)。その傘下・関西電力労働組合と表裏一体の関係にある政治団体「関電労組政治活動委員会」が無届けのヤミ政治団体多数に違法な支出を行っている問題で、MNJの指摘にもかかわらず2013年以降も続けられていることがわかった。発覚した使徒不明金、いわば裏金は、2015年までの8年間で計9400万円。原資は関電グループの労働組合費等で、元をたどれば電気料金だ。電気料金の値上げは国の認可が必要で、原発も再稼働させたいとあって、裏に表に、活発に政治活動を行う構図がある。この裏金は、関電の社員議員たち(関電社員が地方議会の議員を兼務している)に裏工作費として流れているのか、あるいは単なる組合員たちの宴会費に消えているのか――。真相は不明だが、使途を知られたら絶対に困る、よほどの事情があることは想像にかたくない。違法性は確定しているにもかかわらず、NHKが取材だけして放送しないなど、日本の大手メディアは沈黙している。
Digest
  • 前例のない無届24団体への支出
  • 取材しながら放送しなかったNHK
  • 原発問題に詳しい弁護士もスルー
  • 8年間で使途不明9400万円
  • 「答える必要ない」と開き直る政治活動委
  • 絶望の御用組合「連合」とメディア

前例のない無届24団体への支出

政治団体は、法人税や相続税が課されないなど税制優遇される代わりに、支出の透明性が義務付けられている。政治団体は公益を目的とする事業を行うために組織されている名目なので、その使い道が明らかであることを条件に、本来支払うべき税金も免除され、優遇されている。逆にいえば、政治団体に使途不明金があるならば脱税に等しい犯罪であり、懲罰的な追徴課税が必要、ということにもなる。

政治資金規正法は、政治とカネの流れを透明化するためにつくられた法律だ。収支を伴う政治活動をするには、総務大臣か都道府県選挙管理委員会に政治団体の届け出をしなければならない。政治団体は帳簿を作成し、年に一度、領収書の写しととも収支報告書を提出することが義務づけられている。報告書は総務大臣や選管を通じて公開される。

同法3条は、「政治団体」をこう定義している。

1 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体

2 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体

3 前二号に掲げるもののほか、次に掲げる活動をその主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体

イ 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること。

ロ 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること。

団体の設立届けをせずに収支を伴う活動をすれば、禁錮を含めた罰則が課される。

(届出前の寄附又は支出の禁止)
 政治資金規正法第8条  政治団体は、第六条第一項の規定による届出がされた後でなければ、政治活動(選挙運動を含む。)のために、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附を受け、又は支出をすることができない。

こうした厳しい仕組みによって政治家とカネの流れを誰の目にも見えるようにしているわけだ。

届出をしていない「ヤミ政治団体」についてみれば、その存在が発覚した瞬間に問題視され、新聞などで叩かれ、当事者はたちまち改めるというのがこれまでの常であった。

ところが、「関電労組政治活動委員会」(総務大臣届、壬生守也代表)は、過去に例がないほど大規模な形で無届団体への支出を行っていながら、大手メディアはいっさい問題にしてこなかった。奇妙というほかない。

関電労組政治活動委員会は連合傘下の関電労組と表裏一体をなす政治団体だ。会員は約2万人。年間5600万円の収入のほとんどは会費でまかなわれている。

この関電労組政治活動委員会が多額の使途不明金を発生させている問題に筆者が気づいたのは6年前。東日本大震災とそれに伴う東電福島第一原発の大事故の直後、2011年春のことだった。

「関電労組政治活動委員会」の政治資金収支報告書のなかに、「関電労組政治活動委員会大阪北地区本部」「関電労組政治活動委員会大阪南地区本部」といった名称を見つけた。「関電労組政治活動委員会」という名称を冠している点から判断して、「関電労組政治活動委員会」の下部組織で、かつ政治団体であることは明白だった。

「関電労組政治活動委員会」の下部組織とみられるこれらの団体は、大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、富山県、福井県、愛知県の2府5県で24団体を数えた。

政治団体の設立届けをしているにちがいない――当然のように筆者は考え、各府県の選管に問い合わせた。無届を疑ったわけではなく、それぞれの団体から提出されているはずの収支報告書を確認したかったからだ。

取材しながら放送しなかったNHK

各選管に問い合わせた結果は、意外なものだった。24団体のいずれも政治団体の届け出がなく、すべて無届の政治団体だった。

無届の政治団体というのは1つ見つかれば問題になる。24もの無届団体に支出がなされた例を、少なくとも筆者はほかに知らない。

先に触れたとおり、政治団体は総務大臣や選挙管理委員会に届出をする義務がある。それをしないまま収支を伴う活動をすれば政治資金規正法違反に問われる。

 かりに無届団体の活動が許されるのなら、もはや収支報告書を提出する必要がなくなる。政治資金はヤミからヤミに動かされてしまう。そういう事態を避けるために政治団体の届け出を義務づけているのだ。

2015年には下村博文文部科学大臣(当時)の関連6団体が、政治団体の届け出をせずに政治活動を行っていたとして刑事告発がなされている。

 有罪になるケースはまれだが、発覚すればその瞬間に社会的批判を受けて訂正を迫られるのが常である。最近では安倍晋三首相の政治団体の支出先のなかに無届団体ひとつが含まれていたことがわかり、『日刊ゲンダイ』などで批判された。 

関電労組政治活動委員会の場合、この無届団体の数がじつに24である。桁違いに多い。そればかりか、それらの無届団体に対する支出の額も異常に大きい。2008年~2010年の3年間で112件、4100万円にのぼる。これだけのカネが素性のわからない団体に払われたことになる。無届団体だから収支報告書を提出していない。よって何に使われたのかを一般の者は知ることができない。すなわち使途不明金ということである。 

政治とカネの流れを透明化するための政治資金規正法を完全に無視し、ザル法にしかねない行為といえる。

重大な問題だと考えた筆者は2011年4月、〈「原発推進」関電労組政治団体が“資金洗浄” 使途不明4163万円、正体不明の無届団体通じ〉と題してMNJで報告した。大きな社会問題になるだろうと予想していたところ、さっそくNHK大阪放送局から連絡があった。筆者はちょうど名古屋で取材中だったが、記者は極力早く会いたいとのことで、名古屋まで男女2人の記者が出張してきた。

記者らはMNJの記事をよく読み、問題があることを理解していた。筆者は資料を提供し、さらに詳しく説明した。そして筆者は、こう念を押した。

「NHKは原発問題をちゃんと批判できるんですか」

男性記者は自信ありげに答えた。

「大丈夫ですよ。大阪は東京とはちがいますから。株主総会が近いのでその前にぜひ番組にしたい」

そして、別れぎわにこう言った。

「三宅さん、政治資金に詳しいS弁護士が興味をもっている。ぜひ連絡してください」

番組が放送されるのを楽しみに待った。だがとうとう放送はなかった

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日本の電力会社のなかで原発依存度がもっとも高い関西電力本社(真ん中のビル)。連合傘下の関電労組も経営者にならって原発推進を掲げている。

原発を強力に推進し、民進党や自民党の原発政策にも大きな影響を与えている連合。

無届のヤミ政治団体「関電労組政治活動委員会東海地方本部」が入る東海関電ビル(名古屋市)

関電労組政治活動委員会の2013年分収支報告書の一部。無届団体多数に支出がなされている。この年は約900万円の使途不明金が確認できる。

関電労組政治活動委員会の2014年分収支報告書の一部。無届団体多数に支出がなされている。この年は約840万円の使途不明金が確認できる。

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通行人2017/08/05 14:22
 2017/08/03 00:05
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