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オリエンタルカレー3代目社長・星野益八郎氏を、従業員がセクハラで提訴 「女性蔑視、何も制裁を受けないことが許せない」

情報提供
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株式会社オリエンタル元社長、タイム現社長の星野益八郎氏(公式サイトより)
 社長と従業員という圧倒的な力関係の違いがあり抵抗が困難ななかで、セクハラの線引きはどこにあるのか――。インスタントカレー元祖として有名な『オリエンタルカレー』(星野益一郎氏が創業)。その孫で3代目社長の星野益八郎氏(2016年の発生当時、その後2018年1月24日付で全役職から離任)に対し、在職中にセクハラ被害に遭ったとして、元社員の既婚女性(現30代前半)が2018年2月23日、東京地裁に提訴した。原告女性は、セクハラとその解決施策をめぐるストレスから出社できなくなり、不安障害・自律神経失調症などと診断、退職に追い込まれたとしている。職を失い、精神・健康・生活面の損害を被ったことから、計150万円の賠償を求めている。星野社長は、原告女性の頭・顎・尻を複数回さわった事実関係は認めつつも、「自分は合意があったと思っているので、これはセクハラにはあたらない。そこは譲れない」と取材に対して答えた。
Digest
  • 即席カレーの老舗グループ
  • 「やめて、と言わなかった」VS 女性「言えるわけない」
  • 時系列経過
  • 星野社長の主張「好意も合意もあった」
  • 解説:結論として――上司→部下はハイリスクローリターン
  • 電通の2つのケース――証拠を残しておく

原告代理人=フォートレス法律事務所・田中良弁護士
担当部=民事25部、事件番号:平成30年(ワ)第5725号
※訴状ほか証拠書類甲1~12は、末尾にてPDFダウンロード可

即席カレーの老舗グループ

オリエンタルカレーは、名古屋市中村区にて、故・星野益一郎氏が1945年に創業した、日本における即席カレーの草分け。

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上:看板でもたまに見かけるキャラクター「オリエンタル坊や」
下:主力商品の1つ「オリエンタル・マースカレー」

2014年からは、その息子である星野倶廣氏が株式会社オリエンタル会長、そのまた息子・星野益八郎氏が同社長を務める経営体制となり、セクハラ事件発生当時、益八郎氏は社長の地位にあった。

セクハラと社長退任の関連については不明で、そもそも社長の就任時(2014年)は公表していたが、退任については公式サイトにも開示されておらず、秘密裡に行われた印象だ。食品会社の情報開示姿勢としても不安になる。

同社行動規範には「オリエンタルは、社長はじめ全従業員が社会環境の変化に適切に対応し、法令や条例、公正なルールや社会規範を遵守し、社会倫理に沿った企業活動を進めていきます」――とあるが、社長自らこれを遵守できていないのでは、と疑わせる事態が発覚した。

創業3代目にあたる星野益八郎氏は、オリエンタルのグループ企業として2005年に設立された「タイム」(本社・渋谷区恵比寿、現在もオリエンタルが31.3%出資)の代表取締役も兼務しており(現在もその任にある)、週に2日程度は定期的に恵比寿に出社していた。この会社は、イベントや講演会に芸能人など有名人の派遣を仲介する業務を行っている。

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タイム社業務紹介(公式サイト)

タイム社は、2013年にジャーナリストの鳥越俊太郎氏とマネージメント契約を結び、現在も取締役に北原照久(なんでも鑑定団等に出演するなど玩具コレクターとして有名)、顧問に徳光次郎(アナウンサー徳光和夫の弟でミッツマングローブの父。英国伊勢丹の初代社長)が名を連ねるなど、芸能マスコミ関係のつながりも深い。

セクハラ問題は、このタイム社・正社員の女性と社長との間で発生したものだ。

 タイム社は売上高非公開であるが、主要取引先として以下を公表している。

■芸能事務所:ホリプロ、ワタナベエンターテインメント、オスカープロモーション
■広告代理店:電通、博報堂DY、アサツーディケイ、東急エージェンシー、朝日広告社
■自治体:東京都、神奈川県、北海道、沖縄県、京都市、福岡市
■学校・教育関係:慶應義塾大学、大阪経済大学、東京女学館、愛知県私学協会
■医療・福祉関係:日本赤十字、日本健康医学会、聖隷福祉事業団、大阪府社会福祉協議会
■保険:日本生命、明治安田生命、第一生命、住友生命、アフラック
■金融:ゆうちょ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、野村證券、SMBC日興証券
■マスコミ:日本経済新聞、時事通信、SBSラジオ、北日本放送、Gunosy ほか多数

取引先には芸能・広告・マスコミ業界が目立つ。同業界では、昨年12月、元電通の女性社員によるセクハラ告発記事に対し、当時の上司にあたる岸勇希氏が株式会社「刻キタル」の代表取締役辞任と退社を発表し(12月18日)、話題となった。セクハラは昨年来、ハリウッド発の#MeToo現象として、国内外で社会問題化が顕著だ。

今回のオリエンタル事件は、単なる上司と部下・独身同士の話ではなく、伝統ある有名企業における創業一族社長という絶対権力者が、新婚である女性社員に対してセクハラ行為を行ったもの。社長と一従業員という間柄におけるセクハラ認定のラインという点からも、公共性が高い事件といえる。

「やめて、と言わなかった」VS 女性「言えるわけない」

一般的に、セクハラ事件において、やられた側の被害感情はやった側の想像をはるかに超える。今回も、被害側と加害側との温度差が訴訟に発展した。星野社長は、複数回にわたって原告(既婚女性)をダイニングバー等に誘い、頭、顎、臀部など被害者の体を繰り返し触った行為に対して、「(その場で被害女性が)『やめてください』などと言ったことはありませんでした」(甲第10号証)と反論している。

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原告の、夫とのLINE記録には、星野社長のセクハラ当日の様子が時系列で残っている。「酔っ払いすぎてセクハラ」「だいぶやだ」など、嫌がっていることが記録されている。

だが、社長と従業員との力関係の違いから発生するパワハラ・セクハラ問題の背景を理解していない。『やめてください』と言えない絶対的な関係性にあるからこそ、深刻なのである。

「そんなことをはっきり強く言ったら、私が職場にいられなくなるし、仕事もやりづらくなるから、言いたくても言えません。言えるわけがない。会食の誘いも、行かなければあとで何を言われるかわからないから、断れないんです」。被害女性は取材に対してそう説明する。

実際、セクハラをやめるよう社長に進言した結果、解決に至ることなく、退職に追い込まれてしまっている。小規模企業では、社内に異動先の部署がないため、いったん職場環境が崩れると、会社そのものを辞めるほかなくなるため、従業員は多分に気を遣う。

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2016年11月15日付の診断書。不安障害・自律神経失調症と診断されている。

時系列経過

具体的に、どのようなことが起きたのか。双方の書面やりとりや両者への取材にもとづき、時系列でまとめると、以下のとおりである。

・2013年4月、原告入社。星野社長は「おれの誘いには絶対断ってはいけない」と原告に発言していた(原告LINE記録より)。

・2016年8月30日、星野社長は原告を誘い、恵比寿の「すし京辰」に2人で訪れ、頭部や顎に触れる行為を行った。2軒目のバー「メデューサ」とその帰路でも、頭、顎、臀部に繰り返し触れた。

・2016年10月5日、星野社長は原告を誘い、目黒の「かつ壱」に訪れ、同様に、帰路において臀部を触った。

・同日夜、原告は、同僚に対して「嫌すぎて恐怖すら感じる」「エレベーターで叩かれたの。尻。」「会社の上司に触られるのいいって人いないよね。これ、立派なセクハラだよね」とのメールを送信した記録が残っている。

・2016年10月7日、原告は意を決して星野社長にクレームし、星野氏は反省する旨の返事を行った。

・その後、セクハラ事件解決に向けた合意書の内容を決める段取りとなったが、口止め条項の有無をめぐって折り合わず。原告は社内の新入社員らに情報共有するのは当然と考え、口外禁止を受け入れる意思はなかった。交渉は決裂。

・2016年11月15日、一連のストレスから原告は不安障害・自律神経失調症との診断を受け、出社できない状態に。

・2016年12月上旬、退職。

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会社の同僚に送ったLINE記録。「嫌すぎて恐怖すら感じるんだけど。てか、会社の上司に触られるのいいって人いないよね。これ、立派なセクハラだよね」

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comuchi2018/03/10 07:11

被害女性の人かわいそう・・・(>_<) あごを触られるの、お尻なんかより数倍イヤでしょ!

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編集部2018/05/17 10:37会員
オリエンタル子2018/04/19 00:25
  2018/03/14 18:53
  2018/03/09 20:16
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