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まるで独裁国家の将軍様  “面従腹背”「東進」ナガセ社員たちが語る“裸の王様”永瀬昭幸社長の評判

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東進ハイスクール・ナガセの社章。紛失すると始末書。規律が異様に厳しい。
 ナガセに新卒で入社した社員は、2年以内に約3割が辞める。残った30人ほどが、3年目の夏に1週間ほど、数人ずつ時期をずらして、バンクーバー研修(カナダ)に行く。「お土産を買うよう人事部から指示があって、数万円の『ドンペリ』(シャンパン)など、買う場所も指定されます。参加者は全員1本ずつ、社長に買って帰れ、と。取引先等にプレゼントするものだ、と説明されます。このドンペリは、社員が結婚したり出産すると、お祝いとして戻ってきます」(若手社員)。もともと社員が自腹で買ったものなので、お祝いを貰うというより、「戻ってくる」という感覚なのだという。
Digest
  • ほぼ個人商店、毎年11億をファミリーへ
  • お土産1つに至るまで「答えを予め、ぜんぶ持っている」
  • 自分への拍手や最敬礼を強要「北朝鮮みたい」
  • 過度の忖度と恐怖統治
  • “人を信じない”永瀬流
  • 香典「10万円よこせ」「この役職で、こんなもんか」
  • 「社員は家族」のワタミ以上に介入――自宅や結婚式も
  • 社長のワガママに振り回される日常
  • 何の権限もない部長、全稟議が社長決裁

ほぼ個人商店、毎年11億をファミリーへ

この、若手社員が高級ワイン30本ほどの運び屋となる“研修”は、飛行機代や現地の交通費だけ会社が負担し、宿泊先は現地にある社長の別荘。ブロック長(6校舎ほどを束ねるライン部長)が付き添う。

「日中は観光で、夕方はリモートで地球の裏側から校舎業務、夜は半徹夜で理念を深めるグループディスカッションと、体力的には辛いですが、行くのを楽しみにしていた同期も多く、会社を辞める時期をあえて帰国後に設定した人もいました」(元社員)

確かに本格的な研修ではないが、なぜか数日間の公休(一般企業の土日祝日にあたり、月に8~9日)を消化させられ、「業務外に自発的に参加している」という建前だ。実質的に全員参加の「業務」なので違法性が高く、トヨタのQC活動と同様、本来は賃金や日当が払われなければならない。

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株主構成と配当(2018年3月期)。永瀬一族への配当総額は年間9億4千万円、役員報酬含め11億円超

『東進』事業は創業者・永瀬昭幸のファミリービジネスで、永瀬社長(と資産管理会社)及び一族郎党(2歳下の弟・昭典と昭典の資産管理会社であるナップル、8歳下の弟・照久、ひとみ)で株式の約82%を保有。自由自在に意思決定できる。いったい何のために上場しているのか分からないほどの高い支配率である。

一族への配当は年9億4千万円に及び、役員報酬(社長1億2千万、照久5千万、昭典3千万)含めると計11億4千万円。

ナガセという法人とは別に、毎年、実質11億4千万円ずつの資産が、ファミリーへと流し込まれる仕組みになっている。

JASDAQ上場会社ではあるが、感覚は完全に個人商店のまま運営され、家族的な独裁体制。社員の誕生日にバースデーカードが届いたり、社員の配偶者の誕生日に1万5千円もする「胡蝶蘭」など豪華な花が届くこともある。胡蝶蘭は、成績トップの校舎にも贈られる。「社長は、そういう派手な贈り物にカネを使うのが大好きなんです」(若手社員)

バレンタインデーには、本社の各部署の女性社員が、社長室前に列をなして永瀬社長にチョコを献上する、というイベントまで、つい数年前まで存在していた。「秘書室長のおばさんが号令をとり、規律正しく執り行われていました。独裁文化を維持するための、いい仕事をしていたと思います」(元社員)。ようは、秘書室長による忖度である。

お土産1つに至るまで「答えを予め、ぜんぶ持っている」

ナガセは本質的に、証券・保険等と同じような営業中心の会社なので、教育業界では珍しく、前年度の高業績者を対象とした報奨旅行(ご褒美・インセンティブ)として『ニューヨーク研修』や『上海研修』がある。冒頭の「お土産ワイン」献上ルールは、これら研修や海外出張でも同様にあり、現在も続いている。

「永瀬社長は、事前にぜんぶ自分で答えを持っていて、社員が言うことまで決まっています。研修や出張で海外に行ったら、上司の指示通り、ドンペリを買って帰らないといけない。それで、『社長向けの報告会』があって、そこでお土産として社長にあげる。これも決まりごと(答え)の1つです」(元社員)

こういう会社では、社長の意見とぶつかった使用人は、即、辞めるしかない。

「宗教団体みたいなものか、北朝鮮の将軍様と同じ、と考えてください。たとえば、社長の前で発表するときは『社長。本日はこのような機会を与えてくださり、誠にありがとうございます。ご指導の程、よろしくお願い申し上げます。』という文言から始め、企業理念の文言を入れないと、罵声が飛んできます。だから上司も、怯えている。予め『答え』が決まっているので、自分の意見は言えません。『そんなの、おかしくないですか?』と上司に言ったら、『会社を辞めたらいい』と言われました」(同)

実際、この社員は、ほどなくして、ナガセを去った。

この思想統制的な発言強制については、昨年まで在籍した別の社員も、疑問を感じていた。

「新校舎長に任命された社員は、全社研修会の檀上で、抱負や目標を発表するのですが、そこで企業理念の『独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成するために...』という文言を入れなかったために、みんなの前で社長に怒鳴られていて、かわいそうでした」

この儀式では、『○○校校舎長を拝命しました○○です。社長の代理人として○○の地から独立自尊の社会・世界に貢献する人材を育成します。直近の目標は○月末在籍○人。……』と、言うべきセリフが決められており、いわば穴埋め問題になっているわけだ。

予め、答えは決まっており、社員はその通りに動かないと叱責される。完全に予定調和の世界。クリエイティビティを発揮できないのでは、答えのない21世紀を生きる人材を教育できるとは到底、思えないが、自分で考えた企業理念が、かわいくて仕方ないらしい。

自分への拍手や最敬礼を強要「北朝鮮みたい」

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“裸の王様”永瀬昭幸。「北朝鮮の将軍様と同じ、と考えてください」(元社員)。見た目も二代目将軍・金正日にそっくり(公式サイトより)

毎月1回の『全社研修会』は、社長の独演会が中心だ。2時間以上、一方的に社員に向かって話し続ける。

当日は、10時15分くらいに京王プラザホテル5Fに集合。部門単位で出欠をとり、10時30分までに「全員そろいました」等と人事部に報告する。10時30分には、全員が事前に決められた座席表どおり、着席して待っている。

会が始まるのは11時20分ごろ。その日、優秀校舎として表彰される校舎長が檀上にあがり、「東進宣言」を全員で唱和する。なお、部署によっては毎朝の朝礼で、この東進宣言を唱和している。そして、いよいよ社長の登場となる。

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会議風景が似ている某国。ナガセでは内定者時代の研修から教え込まれ、全員が拍手を強要されている(「聯合ニュース」より)

「社長の登場の仕方は、まさに北朝鮮の将軍様です。会場にいる約500人全員が、拍手を始めなければいけない。永瀬社長が会場の後ろからやってきて、拍手が鳴りやまぬなかを歩き、檀上に上がります。

2時間以上の “独演会”のあと、表彰者の報告等があり、16時ごろに終わるのですが、退場の際にも、拍手で見送ります」(中堅社員)

これら決まりごとは、大学生時代に、内定者研修で叩き込まれる。「企業理念や東進宣言は、最初の研修で暗記します。穴埋め試験があり、覚えていない人は人事部に呼び出されて、怒鳴られていました」(若手社員)

共通の理念を持つことは、ビジョナリーカンパニーにとって重要なことだ。だが内定者研修では、客観的にみて奇異な礼儀も、たくさん躾けられる。一言でいうと、社長崇拝を形式化したものである。

「内定者研修で、《全力で拍手をする練習》をしました。拍手をしつつも、社長が自分の前を通る時には、頭を下げなければいけない、など決まりがあります。ほかに、《社長室に入る練習》までありました。社長室は秘書室の先にあるのですが、まず秘書室の前で敬礼。そして、社長室入口で最敬礼。入ったら、こういう順番で座れ、と。これを、別室で練習するんです。ここは小学校か?と思いました」(同)

「起立!きをつけ!礼!」も、みんなで一斉にやらせるという。ナガセの社章(冒頭画像)をなくしたら始末書なので、「ジャケットを着替えるときは気を付けろ」と指導される。

自己崇拝を強制し、最敬礼をさせ、鳴りやまぬ拍手をさせる。この絶対君主のような発想は、いったいどこから生まれるのか。

「社長から、『ギリギリまで拍手するように』と言われたこともあります。理由は、『エレベーターに乗って、姿が見えなくなったからといって拍手が鳴りやんだら、気分よくないだろ!(エレベーターの中でも拍手が聞こえたほうがいいだろ)』だそうです」(若手社員)

よほど自己愛に満ちた感性の持ち主らしい。自身を、宗教指導者にでも見立てているかのようだ。客観的にみると、「イタい」の一言である。

「これは私が社内で聞いた話です。見れば分かりますが、社長は背が低く、顔も見た通り。幼少期時代に鹿児島の田舎で、相当にひどいイジメにあっていて、それが原因で独裁者を志向するようになったのだ、というのです。その話を聞いて、真相は本人にしかわからないことですが、自分としては、納得してしまいました」(中堅社員)

コンプレックスが原動力、という説だ。宗教指導者や独裁者の分析ではステレオタイプな背景の1つと言えるが、ここまで徹底して従わせようとする姿勢や、気に入らない報道記事を消し去ろうと裁判で3千万円を請求するという類まれなる暴君ぶりをみるにつけ、ありうる話である。

過度の忖度と恐怖統治

ここ数年で新卒入社した現役社員は、内定者時代に、この会社の“恐怖統治”を感じたという。ナガセでは、内定後に、永瀬社長と学生のグループ面談がある。5人1グループくらいで、一人ずつ、簡単な志望動機を述べ、社長への質問をする、というものだ。

「ここでの違和感が2つありました。1つ目は、志望動機を話して社長に質問をするための練習の時間がとられており、事前の練習を何度もさせられたことです。

2つ目は、社長にしたい質問内容を事前に3つほど人事部に提出し、『これは質問してはいけない』『これはこういう風に聞いた方がいい』と、添削みたいなことをされたこと。そして、3つの中から1つ、人事部が適切だと思うものを選んで、われわれ内定者に質問させていました。

この2点に共通して分かることは、やはり人事部の社員も社長をかなり恐れていることです。少しでも社長の癇(かん)に障ることを言えば怒られるため、それを恐れており、事前にきっちりと練習させたり、質問を選りすぐったりしているのだ、と感じました」

独裁の行きつく先は、過度な忖度を重ねる無能な茶坊主たちに祭り上げられ、耳障りのよい情報しか入らなくなり、「裸の王様」と化すことだ。永瀬社長は、もはやクローズドな社内会議における学生からの質問内容にまでフィルターがかけられ、社長が喜ぶような情報しか入ってこなくなっている。

ある中堅社員が、気になることを教えてくれた。

「社長はホンモノのハダカの王様であり、社長を取り巻く幹部が、社長に情報が入らないようにしている様にも思えます。貴社の記事に関しても、社長自身は読んでいないような気がします」

なぜかというと、記事の内容が、社長に婉曲・曲解されて伝わっているようだというのだ。

「全社研修会で、貴社の担任助手のブラックバイト記事に関して、怒りを露わに話していましたが、その様子は、もしかして社長は何も知らないのでは?と思うほどでした。怒りの矛先は、校舎長に対するもので、適切なアルバイト雇用を訴えていました」(同)

記事で本部による労務管理の違法性を指摘しても、取り巻きたちが、現場校舎長たちの管理責任へと歪曲して伝えてしまうため、永瀬本人は反省もしない。もちろん違法なアルバイト管理手法を決めている責任者は、唯一の決裁権者である永瀬自身にほかならないが、自分を棚に上げて校舎長を責めるという本末転倒なことが起きているのだ。

これだけ社内の心ある社員たちが取材に応じ、それが記事となって、社員はじめ関係者から熱心に読まれているにもかかわらず、「これを伝えたら社長に怒られるかもしれない」という周囲の忖度によって捻じ曲げられ、肝心の本人には届いていないのだとしたら、それこそ裸の王様そのもので、救いようがない。

“人を信じない”永瀬流

言いたいことだけ言って、聞きたいことだけ聞く。自分が言うことは有無を言わさず相手に叩き込む。

自分の話を聞いていないと見るや、実の弟にも容赦しない。数年前の『全社研修会』で、社内で「弟」と呼ばれている永瀬照久専務が一番後ろの席に座って居眠りしていたところ、「テルヒサ、寝るんじゃねー!しっかり、話きけ!」と皆の前で叱責。その場で、前方の空いている席に移動させて、座らせたことがあった

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全社研修会で参加者約500人が受ける小テスト『研修テスト』。その日の社長の話を聞いていないと解けない仕組み。

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読者コメント

 2018/08/15 15:43
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