「ポスト平成」のテクノロジー失業――残る仕事、消える仕事、増える仕事
![]() |
『週刊東洋経済』2018年12月22日発売号に、紙面の制約で本稿を約半分に短縮したバージョンを5ページ掲載(P119~123)。ウェブ版はこちら。 |
- Digest
-
- テクノロジー進化の職業への影響をマッピング
- 消えていくのは「職業」ではなく「業務」
- アパレルのレジ要員は7割減
- 宿泊、移動…観光サービス業に合理化余地
- 行政窓口は自販機仕事が多い
- 薬局の薬剤師は半減も
- 資格業を駆逐していくAI――会計士と税理士の未来
- 決算書作成と税務申告は人間業務
- 会計士の人間業務は未来判断に
- ブロックチェーンで置き換わる司法書士
- 「増える業務」の条件
もう1つ直近の話では10月、欧州から帰国したら、羽田空港の入国審査が機械化され人間は全く介さなくなっていた。代わりに数十台、パナソニックの「顔認証ゲート」が並んでいた。「人間の審査は選べないんですか?」とスタッフに聞くと、「はい、現在は全て、機械になりました。成田でも、徹底しています」。
音声案内に従ってパスポートの顔写真があるページを開いてスクリーンに置き、前をみると顔を画像認識して照合。1人10秒程度で次々と処理される。これまでは一体、何だったのか。実は入国審査官の仕事とは「ICチップの顔写真情報と目の前にいる本人が同一人物か」を目視で照合するだけの、超単純業務だったわけだ。
それならば人間より機械のほうが、はるかに迅速に正確に判定できる。アップルが『iPhone8』以降に実装した『faceID』もそうだが、既に眼の能力は人間を完全に超えている。
従来は「入国審査官」という国家公務員のメイン業務だったものが、突然、この1年でITに置き換わり、今では、まだ機械の仕様上、対応できていない身長135センチ以下の子供や、機械がはじいた人のみを二次的に審査するイレギュラー対応のみが人間の仕事として残った。
テクノロジー進化の職業への影響をマッピング
“ポスト平成”の時代に、日本人の仕事はどう変化していくのか。将来「消える」仕事についての予測は、英オックスフォード大のマイケル・A・オズボーン准教授の論文「雇用の未来」が有名だ。しかし機械学習の研究者らが、各々の職業イメージや「勘」を持ち寄ってワークショップ形式で判断したものであることがわかっている。筆者はそうしたイメージでなく、主要職種の最前線で働くワーカーへの「取材」を基に職業の盛衰を分析した。
大きな要因は2つある。1つはグローバル化で、2つめが、テクノロジー進化だ。グローバル化の影響に関しては、前著『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社)で述べた通りで、実際、日本人メリットのない技能集約的職業群(『重力の世界』と呼ぶ)は、入管法が突然変更され、「ポスト平成」元年の4月から単純労働者の解禁が決まった。
介護・外食の労働者をはじめ、このエリアの仕事の賃金は、重力に従うかのようにグローバル相場に向かって下方に引っ張られ、既存の日本人労働者の給料を確実に押し下げる。このエリアから逃げ出さない限り、どんどん食えなくなっていく。
今回は2つめの、テクノロジー進化による変化について、図にまとめた(下記参照)。
![]() |
(2~3ページ目)![]() |
縦軸は前回同様「スキルタイプ」で、上が知識集約的(ホワイトカラー系)、下が技能集約的(ブルーカラー系)である。横軸が、「人間の強み」の有無で、右に行くほど、その職業や業務に、人間固有の強みが必要不可欠となり、テクノロジー進化の影響から自由でいられることを示している。
左に行くほど、人間よりも「機械の強み」が発揮され、これまでの人間の仕事は減少しやすい。機械の強みとは、マニュアル通りの定型繰り返し作業や、100%正確無比で安定したアプトプットである。
一方、機械と比べた場合の「人間の強み」は何か。筆者が現場労働者の取材をもとに抽出した要素は、身体性(ロボティクス)でいえば圧倒的に「手先の器用さ」であり、知性でいえば「感情」「信用」「創造」の3点だ。ロボットや人工知能には感情がなく、信用力もなく、創造力もない。魂がないのだから当然だ。ここには、永遠に超えられない壁がある。
■残るのは3種類の職業群(右側)
![]() |
テクノロジー進化と職業・業務変化![]() |
今回は、まず図の右側の「残る仕事」から見ていこう。ここは3つのエリアに分かれる
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り13,517字/全文15,204字
アムステルダムのマクドナルド(2018年10月、著者撮影)
ユニクロのICタグは紙に埋め込まれ、通常は気づかない薄さ(筆者撮影)
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
日本のメディアってどうしてシリコンバレーで病気になった人たちのことだったり、セマテック(Sematech)のことをあまり伝えようとしないのだろうか?諸外国の支援策と比較するような報道もほとんど見掛けません。そして、技術者や労働者が病気になったら今までと同じように職業病だとかと言って自己責任にさせられるのでしょうか。技術進歩と陳腐化が速いから使い捨てで良いんだと言っていた上司の言葉が忘れられない。
パチンコ屋では、お客の管理に顔認証システムを使っているそうですね。もうすでに大企業正門を通る人間をカメラで撮影してラベル表示付きで管理しているかもしれない。顔認証システムを活用すれば出社時と退社時の時間を履歴に残して管理することも可能にると思いますが、サービス残業させているような会社はあえてそんなシステムは導入しないでしょうね。水面下で義務化とかさせないような攻防が始まることでしょう。
加速度的に単純労働はai、ロボットに置き換えられて
いくのに外国人労働者を増やす方向の無能な安倍政権。
しかも中身を精査・煮詰めた法案でないとこが相変わらずずの自民党クオリティー
今年(2018年)の日本国の出生者数は約92万人。止まらない少子化を考えるとAI、機械に仕事が置き換わる事は望ましいと言える。
記者からの追加情報
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい
新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)
企画「ココで働け! “企業ミシュラン”」トップページへ
企画「他のメディアへの配信/MyNewsJapanからのお知らせ」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、info@mynewsjapan.comまでご連絡下さい(会員ID進呈)