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「ポスト平成」のテクノロジー失業――残る仕事、消える仕事、増える仕事

情報提供
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『週刊東洋経済』2018年12月22日発売号に、紙面の制約で本稿を約半分に短縮したバージョンを5ページ掲載(P119~123)。ウェブ版はこちら
 平成最後の数年で、いくつかの職業が急速にITに置き換わり、消滅しつつある。2018年9月に、引っ越し先で東京電力から新電力ベンチャー「ループ電気」に切り替えようと問合せたときのことだ。「液晶デジタル画面の黒い箱でしたら、スマートメーターですのですぐに切り替えられます、今後、検針員はお伺いしません。通信でデータ取得します。支払いはクレジットのみで、明細はウェブ上からの確認となります。ネットからお申し込み下さい」――。郵送も不要で、手続きは実に簡単だった。以来、検針員は来ていない。東電は2020年までに全戸にスマートメーターを設置する計画だ。明治時代から150年近くは続いてきた「検針員」という職業は、丸ごと消えつつある。
Digest
  • テクノロジー進化の職業への影響をマッピング
  • 消えていくのは「職業」ではなく「業務」
  • アパレルのレジ要員は7割減
  • 宿泊、移動…観光サービス業に合理化余地
  • 行政窓口は自販機仕事が多い
  • 薬局の薬剤師は半減も
  • 資格業を駆逐していくAI――会計士と税理士の未来
  • 決算書作成と税務申告は人間業務
  • 会計士の人間業務は未来判断に
  • ブロックチェーンで置き換わる司法書士
  • 「増える業務」の条件

もう1つ直近の話では10月、欧州から帰国したら、羽田空港の入国審査が機械化され人間は全く介さなくなっていた。代わりに数十台、パナソニックの「顔認証ゲート」が並んでいた。「人間の審査は選べないんですか?」とスタッフに聞くと、「はい、現在は全て、機械になりました。成田でも、徹底しています」。

音声案内に従ってパスポートの顔写真があるページを開いてスクリーンに置き、前をみると顔を画像認識して照合。1人10秒程度で次々と処理される。これまでは一体、何だったのか。実は入国審査官の仕事とは「ICチップの顔写真情報と目の前にいる本人が同一人物か」を目視で照合するだけの、超単純業務だったわけだ。

それならば人間より機械のほうが、はるかに迅速に正確に判定できる。アップルが『iPhone8』以降に実装した『faceID』もそうだが、既に眼の能力は人間を完全に超えている。

従来は「入国審査官」という国家公務員のメイン業務だったものが、突然、この1年でITに置き換わり、今では、まだ機械の仕様上、対応できていない身長135センチ以下の子供や、機械がはじいた人のみを二次的に審査するイレギュラー対応のみが人間の仕事として残った。

テクノロジー進化の職業への影響をマッピング

“ポスト平成”の時代に、日本人の仕事はどう変化していくのか。将来「消える」仕事についての予測は、英オックスフォード大のマイケル・A・オズボーン准教授の論文「雇用の未来」が有名だ。しかし機械学習の研究者らが、各々の職業イメージや「勘」を持ち寄ってワークショップ形式で判断したものであることがわかっている。筆者はそうしたイメージでなく、主要職種の最前線で働くワーカーへの「取材」を基に職業の盛衰を分析した。

大きな要因は2つある。1つはグローバル化で、2つめが、テクノロジー進化だ。グローバル化の影響に関しては、前著『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社)で述べた通りで、実際、日本人メリットのない技能集約的職業群(『重力の世界』と呼ぶ)は、入管法が突然変更され、「ポスト平成」元年の4月から単純労働者の解禁が決まった。

介護・外食の労働者をはじめ、このエリアの仕事の賃金は、重力に従うかのようにグローバル相場に向かって下方に引っ張られ、既存の日本人労働者の給料を確実に押し下げる。このエリアから逃げ出さない限り、どんどん食えなくなっていく。

今回は2つめの、テクノロジー進化による変化について、図にまとめた(下記参照)。

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(2~3ページ目)

縦軸は前回同様「スキルタイプ」で、上が知識集約的(ホワイトカラー系)、下が技能集約的(ブルーカラー系)である。横軸が、「人間の強み」の有無で、右に行くほど、その職業や業務に、人間固有の強みが必要不可欠となり、テクノロジー進化の影響から自由でいられることを示している。

左に行くほど、人間よりも「機械の強み」が発揮され、これまでの人間の仕事は減少しやすい。機械の強みとは、マニュアル通りの定型繰り返し作業や、100%正確無比で安定したアプトプットである。

一方、機械と比べた場合の「人間の強み」は何か。筆者が現場労働者の取材をもとに抽出した要素は、身体性(ロボティクス)でいえば圧倒的に「手先の器用さ」であり、知性でいえば「感情」「信用」「創造」の3点だ。ロボットや人工知能には感情がなく、信用力もなく、創造力もない。魂がないのだから当然だ。ここには、永遠に超えられない壁がある。

■残るのは3種類の職業群(右側)

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テクノロジー進化と職業・業務変化

今回は、まず図の右側の「残る仕事」から見ていこう。ここは3つのエリアに分かれる

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アムステルダムのマクドナルド(2018年10月、著者撮影)

ユニクロのICタグは紙に埋め込まれ、通常は気づかない薄さ(筆者撮影)

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