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自民国会議員100人超が政治資金パーティで「ステルス領収書」発行 領収書に主催団体と異なる名を記載、収支不明の催しも

情報提供
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「西川京子さんを励ます会/永岡桂子事務所」を発行人として発行された領収書。主催した政治団体は不明だ。永岡事務所は、「余剰金が出たが政治資金パーティではない。西川京子事務所に引き渡した。そちらで収支報告をしている」と説明するが、詳細は不明。
 閣僚や参議院選挙立候補者を含む100人を超す自民党国会議員らが、政治資金パーティのパーティ券を販売した際の領収書を、じっさいに主催した政治団体とは異なる名義で発行していることがわかった。領収書の記載だけでは本当の主催団体がわからず、収支を不透明にする「ステルス」効果は絶大だ。それも主催団体が見つかる場合はマシで、いくら探してもわからない例も発覚した。領収書に記載された連絡先に主催団体はどこかを尋ねると、「どこなのかは言えない」と回答を拒否される始末。収支を管理しているのかすら疑わしい。他党についてはパーティ券代を政治資金で購入する例がほとんど見当たらないため領収書の入手自体ができていない。よって、「ステルス」方式を使っているのかどうか確認できないが、これまでのところ圧倒的に自民党議員が多いことは確かだ。政治とカネの透明化を目指して立法化した政治資金規正法は、立法者自身によって骨抜きとなっている。
Digest
  • 「政治資金でパーティ券を爆買い」で問題発覚
  • 「三原じゅん子さんを励ます会」は政治団体ではなかった
  • 水落敏栄パーティの主催団体はどこ?
  • 永岡桂子事務所発行の領収書と「ヤミパーティ」疑惑
  • 冨岡勉議員を連絡先にした謎の領収書
  • 参議院議員候補の「ステルス領収書」 
  • 閣僚5人も「ステルス領収書」
  • 自民党国会議員100人超「ステルス領収書」一覧

「政治資金でパーティ券を爆買い」で問題発覚

加藤勝信衆議院議員が代表を務める政治団体「自民党岡山県第5選挙区支部」(岡山県選管届け出)の支出を調べるなかで、発覚した。同支部が「渉外費」として支出に計上した多数の他議員に関連する政治資金パーティのパーティ券代について、領収書の写しを情報公開請求で入手して点検したところ、領収書の発行人の欄に、素性のわからない団体名が記載されていることがわかったのだ。

 本論に入る前に、政治資金パーティと政治資金規正法、領収書について若干説明しておきたい。

政治資金パーティは、立食パーティなどで政治資金を得る催しのことで、政治資金規正法8条の2で規定している。政治団体によって開催されなければならない、と定めている。同規正法はまた、政治家が寄附を受ける場合に、総務大臣や都道府県選挙管理委員会に対する政治団体の届け出を義務づけ、政治団体に対しては収支報告を義務づけている。収支報告書は公開される。政治資金パーティの内容は、政治団体を通すことで明らかになるという仕組みである。

ただ、この場合明らかになるのはあくまで開催した側の収支であって、開催団体が不特定多数に券を販売し、交付した領収書が開示されるわけではない。

今回の問題が発覚したきっかけはパーティ券の領収書だが、その内容を筆者が知り得たのは、政治団体である自民党岡山県第5選挙区支部が他の多数の自民党国会議員のパーティ券をその政治資金を使って購入し、支出計上していたからだった。2万円ほどの支出が年間ざっと200件もある。政治資金によるパーティ券の爆買いである。

政治資金から支出していれば収支報告と領収書(写し)の提出義務がある。領収書は情報公開によって入手できる。逆にいうと、政治団体がパーティ券代を支出していなければ領収書の入手は難しい。

 後段でも触れるが、自民党以外の他党の国会議員についてもパーティ券の領収書の記載状況を調べたかったが、はかどっていない。政治団体による支出がほとんどみあたらないからだ。もしパーティ券を購入して領収書をお持ちの方がいたら情報提供をお願いしたい。

「三原じゅん子さんを励ます会」は政治団体ではなかった

 本論に入ろう。

自民党議員多数のパーティ券代の領収書の何がおかいしか、である。たとえば「三原じゅん子さんを励ます会」と書かれた領収書がある。額面2万円で、日付は「(平成)27年2月12日」、但し書き欄には「会費として」と記載されている。政治資金パーティと見てよい。

政治資金パーティは、政治団体が主催するのだから、常識で考えれば、領収書の発行人も政治団体である。だから領収書に記載された「三原じゅん子さんを励ます会」は政治団体だ、と筆者は単純に考えた。そこで、この団体の収支報告書を見るために総務省のホームページを開き、国会議員関連団体のリストで調べた。

三原順子参議院議員の国会議員関連団体は、「三原じゅん子後援会」「自民党神奈川県参議院選挙区第4支部」「神奈川県三原じゅん子後援会」――とある。予想に反して「励ます会」などという団体はない。

おかしなこともあるものだと思いながら、これら3団体の収支報告書を見た。まもなく、「三原じゅん子後援会(PDF約800Kバイト)」の収支報告のなかに、当該パーティの記載があることに気づいた。領収書には「三原じゅん子を励ます会」とあるが、本当の主催者は「三原じゅん子後援会」だったのだ。収支報告書によれば、催しの名称が「三原じゅん子さんを励ます会」だった。

筆者はあきれた。但し書き欄に書くべき内容を、発行人欄に記載している。

たとえば、ラーメン店「三宅亭」で豚骨ラーメンセットを食べて代金を支払い、店から領収書をもらうとしよう。その領収書の発行人欄に「豚骨ラーメンセット」と書いていたらどうか。ふつうの人なら、「三宅亭」と書き直してもらうのではないだろうか。会社の経費であれ、税務署であれ、「豚骨ラーメンセット」ではとても通用しまい。

この非常識は三原議員だけのことかと思っていたら、ちがった。正体不明の「団体」名による領収書が続々と出てきた。真の主催者を突き止め、収支報告を確認するためには、可能性のある政治団体を探し出し、収支報告書を逐一、点検する必要があった。うんざりするような作業を強いられた。

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「三原じゅん子さんを励ます会」として発行された政治資金パーティのパーティ券領収書。本当の主催者は政治団体「三原じゅん子後援会」だった。領収書の記載だけからは主催団体はまったくわからない。また政治資金パーティであるかどうかも領収書からは判然としない。

水落敏栄パーティの主催団体はどこ?

手間をかけて調べた結果、主催団体が判明するなら、それでもまだよかった。いくら調べても主催団体にたどり着かない例がいくつもあった。

たとえば参議院議員の水落敏栄氏の関連の領収書である

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「科学未来研究会フォーラム」を発行人とする政治資金パーティ(と思われる)催しの領収書。連絡先は冨岡勉衆議院議員の議員会館となっている。科学未来研究会フォーラムという政治団体の届け出はない。冨岡議員関連の政治団体を調べても該当の記載はない。また同名で海老名市の住所が記載された別の領収書があるなど不可解な点がある。冨岡事務所の回答待ち。

丸川珠代参議院議員(現立候補者)の政治資金パーティの領収書。発行者は「珠代さんを励ます会」だが、じっさいの主催者は政治団体「丸川珠代の会」だった。

「河野太郎と21世紀の日本を語る会」名義で発行された河野太郎衆議院議員(現外務大臣)の政治資金パーティの領収書。じっさいの主催者は政治団体「河野太郎事務所」だった。

水落敏栄参議院議員の政治資金パーティの領収書。発行人は「水落敏栄君を励ます会事務局」とあるが、主催したのは政治団体「全国江栄会」だった。国会議員関連団体の指定をしていない団体なので、容易には特定できない。

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読者コメント

2019/08/09 23:50
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記者からの追加情報

永岡桂子衆議院議員(自民)の議員事務所を連絡先として発行された2015年6月 2日付領収書について、「収支は西川京子元衆議院議員の政治団体に計上しているはず 」という永岡議員秘書の説明に従い、筆者は西川京子氏(現・九州国際大学学長)に問 い合わせていた。これに対して西川氏は24日、電話でつぎのとおり回答した。「20 15年6月2日に憲政記念館で約200人を集めたパーティを永岡議員らの呼びかけで 開催した。会計は永岡事務所がやったが、のちに売り上げと経費のすべてが西川議員側 に渡された。政治団体西川京子後援会(福岡県選管)に計上しているので確認してほし い」(趣旨)。そこで、福岡県選管のホームページから「西川京子後援会」2015年 分政治資金収支報告書の要旨を確認したところ、記載があるべき「その他の収入」の項 目には57円としかなく、パーティ関連とみられる収支は確認できなかった。西川氏に その点を再度尋ねたところ「当時の私設秘書はもう辞めており、私にはわからない」と 答えた。(7月25日追記)
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