レオパレス21 家賃引き下げに一括借り上げ打ち切り、手抜き工事・・・「こんな会社があったんだ!」と言葉失うオーナー
Aさんのアパートの屋根裏(小屋裏)にあるべき防火用界壁が施工されていない状況を撮影した調査報告書。提訴時(2018年8月22日)の記者会見で公表された映写画面より。 |
- Digest
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- 飛び込み営業で「税務相談会」の勧誘
- 借り上げは「2年更新」だった
- たびたび要求された「賃料引き下げ」「修繕費」
- オーナー一家を救った「約定書」
- 「終了プロジェクト」という借り上げ契約一斉解除
- 違法建築発覚も20年の時効主張
飛び込み営業で「税務相談会」の勧誘
オーナーの男性Aさんによれば、経緯は以下のとおりである。
1994年のある日、「株式会社エムディアイ」の名刺を持った社員がAさんの自宅にやってきた。アパートを建てて一括借り上げをする建築不動産業だという。後のレオパレス21だった(以後「レオパレス」と記述する)。対応したのは父(その後死去)である。社員は、父にこう言った。
「税務相談をやっています」
相続税に関する相談会にこないか、という誘いだった。父は「行ってみる」と興味を示した。そこでAさんも同伴して参加した。それが現在まで四半世紀にわたるレオパレスとのつきあいのはじまりだった。
相談会場では、税理士が節税の話をひとしきり行い、続いてレオパレスの社員が「提案」をした。借金をしてアパートを建てて経営すれば相続税が安くなり、収入にもなる――そんな話だった。
父もAさんも、このときはなんら警戒心はなかった。それどころか、ためになったとすら感じた。というのは、先祖伝来の水田がたくさんあって、相続税のことが気になっていたからだ。
アパートをやるのにいい場所があった。水田を宅地にした場所で、空き地にしていた。いまは安くなったが当時は坪40~45万円した。このままだと、父が亡くなったときに相続税が数百万円もかかりそうだ。
相談会で耳にした「アパート話」に、父は次第に乗り気になった。年金は比較的多く、生活には困らない。しかし、出費は少ないに越したことはない。加えて、子どもたちの生活を考えれば、副収入があったほうがいいだろうと思った。
息子のAさんは特段意見はなく、「父親がそう考えるのなら」と親の選択を支持した。そのうえで、まちがいがあってはならないと、以後、レオパレスとの話し合いに同席することにした。
しばらくするとレオパレスが計画案をつくって持ってきた。木造2階建て、1DK×20戸のアパートを2棟建てるという内容だ。工事費は9600万円。ほぼ全額を銀行からの借り入れでまかなう。
レオパレス社員の物腰やわらかな説明を、Aさんはよく覚えている。
「毎月80万円以上の賃料が入り、返済後40万円ほどが残ります」
「5年で3%ずつ家賃があがります」
「管理はおまかせください。小規模修繕はすべて私どもがやります」
疑うことのない父は、最初の訪問から2~3ヶ月後、契約する決心をした。
借り上げは「2年更新」だった
田園地帯にレオパレスのアパートが乱立する(岐阜県内)。 |
Aさんが気をつけていたのは、借金返済のことだけだった。9600万円を30年で返済するという話だが、ちゃんと間違いなく返済していけるのか。そこが何よりも重要だと考えた。そこで、何度も念押しした。対するレオパレスの返事はこうだ。
「レオパレスが一括借り上げをする。空室があれば家賃保証をする。大丈夫です」
この言葉を、Aさんも疑わなかった。こうして話は「順調に」進み、契約の日がやってきた。1994年の暮れも押し迫った12月下旬、契約書類が広げられ、署名・捺印を待つばかりとなった。Aさんは丹念に契約約款に目を通した。どんな契約でも、まず書類をよく読めと、当時勤めていた会社の上司に教育されていた。その教えの実践である。
建築請負契約書につづき、一括借り上げ契約書の点検に取りかかった。読みかけてすぐに、Aさんは重要な事実に気づく。一括借り上げ契約の期間が「2年」になっていたからだ。てっきり30年間だと思っていたが、それは誤りで、2年ごとの更新だと知った。社員からは、そんなことは一言も聞かされていなかった。
「借り上げ契約は2年だけど大丈夫なの?」
契約締結を心待ちにしている様子の支店長にAさんはたずねた。支店長は悪びれることなく答えた。
「とりあえず契約は2年ですが、更新して30年間、借り上げます。うちは部屋が足りないので、もっと(一括でアパートを)借りたいくらいですよ。なのでご安心ください」
「ああ、そうなんだ」
Aさんも父親も、それ以上の疑問はもたなかった。支店長の説明に納得し、そして契約した。まだレオパレスに悪い印象はなかった。なにより、水田が多い周囲には、まだアパートはほかになかったから、レオパレス社員の言うとおり、きっとうまくいくだろうと信じていた。
契約から8ヶ月後の1995年8月、2棟のアパートが完成する。
「この会社は大丈夫だろうか?」
Aさんが違和感を覚えはじめるまでに、時間はかからなかった。まず、建物の造りが見るからに安普請だった。それに、思ったほど、入居に勢いがない。部屋が足りないという言い方をしていたのだが、ずいぶん様子が違う。
違和感が不信に発展したのは、家賃減額の提案が来たからだ。築後わずか1~2年で、「家賃を下げてほしい」と言い出した。5年で3%ずつ家賃があがる――レオパレスの社員はそう説明していたのだから、Aさんは驚いた。
「話がちがうじゃないか
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違法建築が発覚したAさんのアパート。
「こんな会社あったんだ」とレオパレスの不誠実な営業手法に対して憤るAさん(手前左端、2018年8月22日、岐阜市内で開催した提訴記者会見より)
一括借上げの一斉解約「終了プロジェクト」を指示した社内メール(LPオーナー会提供)。
Aさんの家族が違法建築の損害賠償を求めた訴訟が続く岐阜地裁。レオパレス側は、20年の時効が成立したとして賠償責任はないとの主張をしている。
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読者コメント
営業・建築・管理。この3つの部門が一体化(同じ会社)というのが問題。自ら造った建物を自らでチェックしようとすると、どうしても査定が甘くなる。また、営業がゴーサインを出しても、それにブレーキをかける他のスタッフがいない。だから「やりましょう」「適当でいいから」という風潮が蔓延し、何もかもが無責任体質となって、結果、オーナーが迷惑する。
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