2016年末に早期退職した電通部長。自身もパワハラ被害者として、新たな被害者の発生に厳正な処分を望んでいる。
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電通・新聞局の吉野純局長が、ラグビー・ワールドカップの日本―スコットランド戦を観戦後、警備員の男性に暴力を振るったとして10月13日に逮捕されていたことがわかった。酒を飲み、観客誘導用の柵に体当たりしてズラし、前の人を追い抜こうとしたところ、それを見たアルバイトの大学生警備員が吉野氏を注意。逆ギレした吉野氏が、警備員の左頬を右手で叩いた、という暴行容疑だ。衆人環視のもとでのことで、事実関係を否定するのは難しそうである。吉野氏は、今大会のマーケティングなどを担当している大会関係者だった。過労死事件を繰り返してきた歴史を持ち、体育会系・軍隊的で知られる電通カルチャーを象徴する事件ともいえるが、なぜ電通では暴力的な人物が重要ポストに出世してしまうのか。吉野容疑者(平成3年入社)の1年上の代にあたる電通OBで、2016年末に電通を早期退職して転職した人物に、話を聞いた。
【Digest】
日産スタジアム(横浜市)で2019年10月13日、ラグビー・ワールドカップの日本―スコットランド戦を観戦後、会場近くで午後10時15分ごろ、警備員の大学生(21)の顔を殴ったとして、神奈川県警港北署は暴行容疑で電通新聞局長・吉野純容疑者(51)=東京都港区三田=を逮捕した。
――各種報道より
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吉野容疑者逮捕を報じるJNN報道 |
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吉野氏は新聞社・通信社(68社)が出資する「デジタルセンド」(新聞広告のオンライン電子送稿普及を目的として平成12年に設立した会社)の代表取締役副社長にも就任している。
公式の経歴(→
削除前保存)は、以下の通り。
■代表取締役副社長 吉野 純 (よしの・じゅん)
平成3年 株式会社電通 入社
平成25年 同社 第9営業局部長 就任
平成27年 同社 第9営業局局長補 就任
平成30年 同社 新聞局長 就任(現任)
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電通の組織 |
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電通のライン局長は、数百人規模の組織のトップであり、年俸2000~2500万円のポスト(右記参照)。なかでも新聞局は、伝統ある保守本流ラインである。
――第一報を聞いて、どう思いましたか?
このニュースを知ったとき、同年代を電通で過ごした者として、全く驚きませんでした。起こるべくして起きた事だろうと感じましたから。私が早期退職した2016年末からも、電通は相変わらず、「既得権益マッチョパワハラ村」であり続けてきたことを、再確認しました。以前にもお話しましたが、電通には戦略も戦術も無く、あるのはパワハラ体質のみだからです。
→■私が電通を辞める原因になったパワハラ被害体験
電通が長年に渡るマスコミという高収益媒体の占有率を高く維持してきた既得権益ゆえ、コストを気にすることなく、クライアント企業に対して延々と接待し、企画し、提案し続けるマッチョ体質を築き上げたこと。そして、年功序列の絶対的ヒエラルキーから生じるパワハラ体質が合体して、不遜とも言える「既得権益マッチョパワハラ村」が出来上がった、というのが私の見方です。
――吉野氏はご存知でしょうか?50歳で新聞局長というのはエリートコース?
直接は知らない人物です。電通は部長までは誰でもなれます。私は43歳で部長になっています。局長ポストは30~40個しかないので、高めのハードルがあります。最近は若い人を局長にするようですが、そこそこ早いほうです。
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電通のキャリア |
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新聞局というのは、新聞広告を扱う部署で、新聞社から見たら、電通は広告スペースを買ってくれるお客さんになります。新聞の影響力がまだ大きかった時代は電通の社長を輩出していました。電通の中でもエリート中のエリート部署が新聞局で、吉野氏はそこの局長ですから、電通の栄光と、時代の変化の煽りを、まともに食らっている、電通の中枢ポストと言えます。昔ながらの電通らしい体質を持っている、と言ってよいでしょう。中枢がやはり変わっていないことがわかった、というのが今回の暴力事件だと思います。
営業から新聞へのコンバートは、今でも出世ルートだと思います。新聞局長をさせてから、更に上に、という会社側の考えが見て取れます。期待されていたのでしょう。
――これまでの電通の体質から、今回の社内処分は、どの程度になると思われますか?
シレっと、いつの間にか目立たない部署へいったん異動させて終わり、でしょう。もし、電通の体質が変わって、まともになっていれば、自浄作用として、厳しく処罰したことを、その具体的な内容とともにホームページなどで対外的にも公表するでしょうが、実際は、シレっと世間が忘れた頃に復権、というパターンだと思われます。
――吉野氏のような行動パターンは、電通の上層部では普通なのでしょうか?
私の想像では、こんな感じです。吉野氏の頭の中には、早く帰宅するという目的が毅然とあり、それを実行中に、若者に止められた事に腹を立て、手が出てしまった。ここが、本性なのです。既得権益マッチョパワハラ村の住人である吉野氏が、「普通の社会」に出てラグビー観戦し、その帰宅途中に、いつもの村の思考で行動していたら、世の中の常識的観点から、警備員さんが注意をしてきた。その常識に対して、吉野氏は酔っていたので、いつもの既得権益マッチョパワハラ村方式の対処をしてしまい、逮捕に至った、という事です。つまり、電通という村の思考、価値観と世の中の常識には大きなギャップがあって、そこが露呈してしまった。
――在籍当時に、似たような話は社内で聞きましたか?
パワハラに該当するようなことは自分も何度も経験し、それが原因で会社を辞めています。世間から見たら異常なこと、たとえば先輩の靴にビールを注いで飲まされた経験もあります。先輩から後輩に対する言葉の暴力は、常にありました。私も経験しましたが、激務で疲れて相談している後輩に対して「皆やっているんだ!何故お前は出来ないんだ?」といった同調圧力は強かったです。
→■パワハラ被害者が語る“クラッシャー上司”量産型の病的企業体質
対社外でいうと、たとえば、プレゼン前で気が立っていたりすると、タクシーで道を間違えた運転手さんに対して、恫喝しはじめたり、かなり横柄な態度や言動をする先輩は、何度も見てきました。暴力については.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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人事評価分布 |
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