B:不良企業予備軍
(仕事3.0、生活1.0、対価5.0)
本稿は対価編。仕事編は
こちら
。生活編はこちら。評価詳細と根拠は記事末尾にて。
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電通の人事処遇制度は、日本企業が戦後の高度成長期に確立した年功序列型を頑なに維持する。新入社員は、過労死と背中合わせの
激務&パワハラなカルチャーに順応し、
会社にモノ申すような言動を慎んでいれば、40歳前後で年収1300万円を超えるくらいまで同期入社組でほとんど差がつくことなく、全員が昇給。仕事で成果がなくとも、刑法に触れることでもしない限り降格はなく、仕事のない“窓際族”も、この水準以上が60歳まで保証される。さらに局長補・局長と出世できれば、仕事はハードになるが2千万円超に。このあたりは
三菱商事等の総合商社とよく似ている。よって
月給5年分の割増しを積まれても特別早期退職に応募しない社員が大多数を占める。
【Digest】
◇ライン部長への昇格リミットを6歳も引き下げ
◇40代以下にとっての希望=50代の絶望
◇全員が年収1300万円以上になる人事処遇
◇形骸化する目標設定、差がつかない個人査定
◇40代からやっと差が開き始める
◇ライン部長のほうが専任部長より月10万円高い
◇管理職層を3階層→2階層にしてみたが…
◇営業とクリエイティブの一部が高給
◇『まぁまぁだな』では切られる契約社員
◇外資ネット系に「年俸+α」で転職も
◇福利厚生は独身寮くらい
◇ライン部長への昇格リミットを6歳も引き下げ
こうした、仕事をしない人(窓際で年収1300万円)・する人(局長で2千万円超)の、双方からみた“サラリーマンパラダイス”は、その中間にいる人にとっては、それなりのストレスとなる。限られたポスト(ライン局長が全社で35個ほど、ライン部長が推定400個ほど)に就くための出世競争から、いつ降りればよいか分からないからだ。
電通の正社員には、キャリアもノンキャリもなく、一般職も存在しない。大量の40~50代社員は、全員が幹部候補という建前で採用された「総合職」だけ。出世の夢をみて、若い頃より過労死水準のブラック労働を厭わず、業務時間外の接待でも「靴ビール」を飲み、食ハラにも耐えて、猪突猛進、まさに電通が制作したリゲインCMの通り「24時間戦えますか」を体現してきた世代である。
年功序列の昇進で降格ナシの電通では、一番下の管理職クラスである部下なし部長(専任部長)までは大半が年次とともにエスカレーター式に昇格するため、誰しもに、ライン部長、局長となる可能性が残される。だが、大量の50代に定年間近まで出世を目指されると、上が詰まりすぎてしまい、40代以下にチャンスが回ってこないことから、若手のモチベーションにかかわる問題があった。
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役職定年(ポストオフ)の年齢が、どんどん若くなっている(社内資料より) |
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そこで、ここ3年ほどで急激に進められた人事改革が、「出世可能年齢リミット」の若年化だ。2014年から始まった組織若返り策により、電通では、昇格できる年齢リミットが半年ごとに1歳ずつ引き下げられ、2017年7月からは、ライン長に昇格するための審査を受けることができる最終年齢(「クラス変更審査基準切替年齢」と呼ぶ)が、52歳にまで引き下げられた。
2014年時点では、このリミットが58歳だったため、実に、わずか3年の間に、6歳も引き下げられたことになる。
さらに、ライン部長になれても.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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東京本社勤務・アラサー社員の給与明細。残業時間は規制が厳しくなっているが、依然、残業代の比率は高い。 |
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MC(メンバークラス)とLC(リーダークラス)の個人評価分布
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電通のキャリアパスと報酬水準(2015年7月~現行制度に移行) |
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2015年7月に導入された「マネジメント等級」と「局長等級」の職種と昇格コース(社内資料より) |
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