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“東北大の小保方さん”井上明久・元総長の「写真・データ使い回しまくり」論文を学会が撤回も、東北大学が頑なに「不正認定」せず擁護

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井上明久元東北大学総長の研究不正を認定するよう大学理事に要請する大村泉同大名誉教授(右から2人めと重松公司岩手大学元教授)と、要請書の受け渡し場面の取材を拒否する広報室職員ら(中央の3人、2019年9月26日、仙台市の東北大学)。
「巨大な研究不正ほど不正認定されない」。そう言いたくなる事件が起きた。2006年から2012年まで東北大学総長を務めた、合金の研究者・井上明久氏(現・城西国際大学教授)の論文多数に、写真やデータの使い回しなどの不正が指摘されている。10年以上前からくり返されてきた告発に対し、大学は「(悪意のない)ミス」などと井上氏を徹底的に擁護してきたが、今年(2019年)3月、日本金属学会の論文誌編集委員会が、井上氏の論文3本を「撤回」処分に。東北大は論文発表当時に井上氏が所属していた研究機関なので、本来なら不正を認定、もしくは再調査して結果を発表すべき立場。だが、この期に及んでなお、東北大は事件の風化を待つかのように沈黙を決め込む。
Digest
  • 撤回の3論文は一般社会なら完全クロ
  • 幻の「井上合金」
  • ジルコニウム合金の大型「金属ガラス」で綺羅星に
  • 新聞記者なら一発免職レベルの3論文
  • 告発を門前払い 
  • 説得力を欠く井上氏の釈明
  • 論文賞を受賞、学士院賞受賞理由

◇「大学は不正認定を」申し入れに取材拒否

井上氏に何ら制裁を加えない東北大の態度はじつに奇妙で、ことの深刻さは独立行政法人「理化学研究所」研究員・小保方晴子氏の不正事件どころではない。同大学の著しい信用失墜、日本の研究レベルの低下は必至だ。

井上明久・元東北大学総長(同大学公式サイトより)

「撮影させてください」

「できません」

2019年9月26日、仙台市の東北大学(大野英男総長)本部前で筆者は広報室の職員数人と押し問答をしていた。

同大名誉教授の大村泉氏と同大出身で岩手大学元教授の重松公司氏が「元総長・井上明久氏の研究不正を大学として認定せよ」という趣旨の要請文を大学理事らに出すというので、取材に訪れた。

受け渡しの場面を撮影するくらい簡単に認めるだろうと高をくくっていたところ、意外にも大学当局は頑として取材を頑なに拒んだ。

「受け渡しのところを撮影するだけです。そんなに大げさな話ですか」

筆者は食い下がった。地元のテレビ局もこれに加勢した。

「撮影だけでいいんですね」

広報室の高橋哲也室長補佐は、そう言っていったん建物の中に戻ったが、5分ほどで戻ってくると固い表情のまま結論を告げた。

「撮影はだめです。後でコメントを出しますから」

こういう事情で結局、撮影はできなかった。しばらくして建物から出てきた大村氏らによれば、秘書室長が要請文を受け取り、理事らに渡すことを約束したという。それからしばらく後、電子メールで大学の「コメント」が届いた。

三宅勝久 様

お世話になります。

東北大学広報室 高橋です。

本日午前に依頼のありました、大村先生らによる文書提出に

関する本学としてのコメント要望に対する回答ですが、

「コメントは差し控えさせていただきます。」

 とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

それだけだ。コメントは筆者が求めたわけではない。大学のほうから「出す」と言ったのである。それが「コメントは差し控えさせていただきます。」とはあまりにも人をバカにしている。まるで日本の学問の府の没落を象徴するように思えた。

撤回の3論文は一般社会なら完全クロ

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「科学的に不適切な誤り」があったとして2019年3月に日本金属学会欧文誌編集委員会から撤回処分を受けた井上元東北大学総長の論文。上から1996年、99年、2000年に発表されたもの。

2007年から12年まで東北大学総長をした井上明久氏の研究不正を認定せよ――というのが大村氏らの大学に対する要請である。なぜ、こんな要請をすることになったのか。直接のきっかけは今年3月の「事件」である。

今年3月、日本金属学会欧文編集委員会は、同学会の欧文誌に掲載されていた井上氏の論文3本を「科学的に不適切な過失」があったとして「撤回」処分にした。

撤回された3論文とは、1997年、99年、2000年にそれぞれ日本金属学会の欧文誌で発表された「金属ガラス」という合金に関するものである。文部科学省の外郭団体である国立研究開発法人「日本学術振興機構」(JST)の「ERATO」(戦略的創造研究推進事業)から10億単位の研究費が出ている「高い評価」を受けた研究である。

だが、10年ほど後になって問題が発覚する。実験結果を裏づける重要な証拠である資料写真や電子顕微鏡写真が使い回されている疑いが浮上、そして調査の結果、撤回された。

2000年の論文は、

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撤回された論文に掲載されていた使いまわされた「金属ガラス」の資料写真。上から97年論文、99年論文。下は未撤回の96年論文。それぞれまったく異なる実験のものとされるが、同じ写真が加工されて使われていた。

宮城県庁記者クラブで記者会見を開き、「東北大学は研究不正の認定をする責任がある」と説明する大村泉東北大学名誉教授ら(2019年9月26日)。

同じ写真がまったく異なる内容の論文に使いまわされている状況を記者に説明する重松公司元岩手大学教授。「最初の告発があったのは2007年だが、すぐに不正認定されると思った。それほどひどい不正だった」と言う。重松氏は井上氏が東北大学の金属材料研究所の助手時代に大学院生として同研究所に所属していた。(2019年9月26日、宮城県庁の記者クラブ)。

日本学士院のホームページに掲載された井上明久氏。2002年に学士院賞を受賞するが、その受賞理由のひとつに今回撤回された日本金属学会の受賞論文(1999年論文)があった。金属学会の賞取り消しはもちろん、学士院賞も取り消すべきだとの声が出ている。

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2019/11/30 09:03
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