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三菱電機 自殺続出も「あ~わかる、やっぱり」…クラッシャー上司はびこる残業パワハラ無法地帯

情報提供
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3年ぶり2人連続(2016年、2019年)「リバーヒルズ寮」の新入社員が自殺した伊丹事業所周辺マップ
 明らかな労災事案だけでも直近8年で5人が自殺、うち2人は独身寮まで同じ新人だったなど、高頻度で社員が自死に追い込まれる三菱電機。2019年には、新入社員に「同じ質問して答えられんかったら殺す」と脅して自殺に追い込んだとして上司が書類送検される刑事事件にまで発展したが(2020年3月、嫌疑不十分で不起訴)、複数の元社員は「あ~わかる、やっぱり、という感じ」「表面化していないパワハラ・過労死と思われる事件を、身近でもっと見ていますから」――と、驚きはないという。現役社員および、直近まで同社に在籍していた元社員らに実態や背景を聞くとともに、各種ルートから社内資料を入手して検証した。
Digest
  • 創業の地・神戸に近い中核事業所で新人が連続自殺
  • 太平寮、誠心寮、若菱寮…自転車で通勤、エンドレスな残業
  • 寮の玄関で首つり自殺、事業所では飛び降り自殺
  • 部下10人辞めさせても自分は居座る「クラッシャー上司」
  • 報告書を眼の前で破る、『徹夜してやればいいだろ』
  • 360度評価やらず、外部相談窓口もなく、歯止めなし
  • 無限サービス残業「申請は最大で40時間だけ」
  • 月に50時間の“自己啓発”で残業、人事部も黙認
  • 電通過労死事件での変化
  • 有休取得率は65%に低迷

創業の地・神戸に近い中核事業所で新人が連続自殺

2015年に24年ぶり2回目の新入社員過労自殺が発生し社会問題となった電通(※山本敏博社長が法廷で謝罪、労基法違反の罪で2017年に有罪判決が確定)。だが、並行して関西では、2016年と2019年という短期のうちに、三菱電機の新入社員が連続して自殺に追い込まれていた。

三菱電機は、パナソニックと並ぶ、関西を代表する大手電機メーカー。重電も含む総合電機としては、日立に次ぐ規模を誇る。現・三菱重工の電機部門(神戸)が独立して設立された経緯があり、新卒の入社式は例年、創業の地・神戸の「ポートアイランド」等で行われる。

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過去8年で5人の自殺が発覚した三菱電機のブラック年表。伊丹・三田地区での発生が目立つ。

同じ兵庫県内の東方面に位置する尼崎市には、5千人超が働く同社最大規模の拠点「伊丹事業所」が、甲子園球場22個分にわたって拡がり、研究開発の要となる先端技術総合研究所(三菱電機の事業全体に関わる基礎研究を実施)が置かれているほか、通信機(気象観測や防衛宇宙)・鉄道・電力向けの事業部が拠点を置く。消費者向け白モノ製品とは異なり、BtoBの古い業界向けとあって体質は古い。

この一帯が、同社〝本拠地〟ともいうべきコア事業所であり、新人の連続自殺被害者は、いずれもこの伊丹事業所に勤務していた。

同社では過去8年で、少なくとも自殺5人を含む8人の労災被害が発生しているが、その半数がこの伊丹事業所と、そこへの通勤が強制される「リバーヒルズ寮」がある三田市の三田(さんだ)事業所で発生している。

■2016年4月入社の新入社員=電子システム事業本部・通信機製作所配属、ソフトウェア開発を担当。同年11月、兵庫県三田市のリバーヒルズ寮で自殺。上司や先輩社員によるいじめや嫌がらせが原因だったとして、遺族が損害賠償を求め17年9月に提訴。

■2019年4月入社の新入社員=生産システム本部・生産技術センター配属、生産管理システムの開発などを担当。同年8月、リバーヒルズ寮近くの公園で自殺。教育主任だった30代の上司が自殺教唆の疑いで11月に書類送検。メモに「次 同じ質問して答えられんかったら殺すからな」。自殺の数日後に技術発表会を控えていた。

リバーヒルズ寮から伊丹事業所までは、JR福知山線で、通勤に1.5時間ほどかかる(トップ画像の地図参照)。ただでさえ覚えなければならないことが多い新入社員に、通勤で往復3時間も浪費させる理由は、いったい何なのか。

「うちにとっての重要顧客であるJR西日本の輸送量に貢献するのが目的だ、と社内で聞いたことがあります」――と、ある元社員は解説する。誠意を見せる意味はあろうが、若手の疲労や消耗を考えると犠牲が大きく、合理性はない。間違って作ってしまった不動産(寮)を、とにかく利用したい、最も戦力にならず右も左もわからない新入社員に押し付けてしまえ、という発想かもしれない。

別の元社員も、このリバーヒルズ寮の住人だった。「入社1年目の男性社員は全員がリバーヒルズに入ることになっていて、2年目から『太平寮』(伊丹事業所まで1㎞弱の近場)をはじめとする他の寮、もしくは自ら賃貸物件を探して引っ越すのが通例でした。1年目に遠方に住まわせる目的は不明です」

2016年、2019年からはずいぶん遡る時期の話になるが、「新入社員が階段から非常口に出て飛び降りる、という不可解な事件が起きたと聞いたことがある」と証言する、新卒入社組の元社員もいる。

独身寮は、社員が選べない。遠方の寮住まいとなることで、社会人経験がなく仕事に時間がかかりがちな新人のプライベート時間や睡眠時間が通勤によって奪われ、寮やその近くの公園で自害に至る一因となったかもしれない。

太平寮、誠心寮、若菱寮…自転車で通勤、エンドレスな残業

2年目からは、事業所から1キロ程度の近場にある寮に住む。前述の「太平寮」と、そのすぐ南にある「誠心寮」(女子専用寮)がメインだ。この2つは、まさに昭和のドミトリーで、ボロボロの年代物だという。現在は、2015年竣工の「若菱寮」、そして近接する敷地内に2018年に建設した「第二若菱寮(8階建)」がメインの独身寮となりつつある(場所はトップ画像参照)。

この「若菱」という名称であるが、「若菱町」という正式な地名にもなっている。地元・兵庫の蔵元「小西酒造」によると、「三菱電機伊丹製作所の社宅用地としてスタートした町」だから、三菱の「菱」という字がつけられたのだという。会社から帰っても、その敷地は歴史的にも周辺一帯が三菱の企業城下町なので、心休まりそうにない。近くには、あまり若手社員が利用することはない「肇国寮」もある。

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三菱電機の独身寮規定

寮費は右記のとおりで、格安でもない。独身者は「32歳に到達する年度の年末まで」入寮が原則。2016年から算式が見直され、管理料4千円、水道光熱費は住人が8割負担、駐車場は近隣相場の100%(上限2万円)など、実に細かく設定されている。

「みんな、寮から事業所までは、自転車で通います。だから終電など気にすることなく、深夜1時2時まで働くのが当り前になるんです。そのくらいの仕事量があります。当時は、22時だとほぼ全員が会社に残っていました。連日8:30~24:00過ぎまで働いて、上司からボケ、カス、死ね…とパワハラ発言されたら、精神的に病みますよ」(元中堅社員)

この閉鎖的な住生活環境のなかで、独身寮と会社を往復する日々となる。現役社員・元社員らの話を総合すると、自殺者が相次ぐ原因は「長時間労働と上司からのパワハラで心身を病むから」。上記の、労災として報道された8件は、全体の一部に過ぎないという。

寮の玄関で首つり自殺、事業所では飛び降り自殺

「表面化していないパワハラ・過労死と思われる事件は、もっとあります。2013年だったと記憶していますが、20代半ばの社員が寮で自殺をした、と事業所内で噂となり、皆の知ることとなりました。朝、寮の玄関で首を吊るという衝撃的なものだったそうです」――。この話は、複数の元社員らが確認している。周囲からもデキる人だと思われていたが、精神を病んで、ドクターストップがかかっていたという。精神疾患を患っていた可能性が高い。

同じ時期に、伊丹事業所内で、50代社員の飛び降り自殺も発生して話題になっていたという。多忙な部署だったことから、長時間労働による過労が原因といわれている。「飛び降りたのが就業時間の後だったために労災認定されなかった、というんです。それで、『飛び降りるなら、就業時間内にしような』というブラックジョークが流行った

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パワハラ防止のために講ずべき措置(2020年6月施行のパワハラ防止法より)

三菱電機のパワハラ、セクハラ、マタハラ対策(労組資料より)

三菱電機の妊娠・出産・育児・介護の制度(労組資料より)

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hiroomi2020/11/25 21:42

“この閉鎖的な住生活環境のなかで”

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