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「ぬるくて優しい」NEC 元GEら助っ人に「強くて厳しい」会社に変身できるか、ゆるキャラのまま挫折か――社員が語る変革の進捗

情報提供
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NEC社員が持ち歩くよう言われているGE流の『Code of Values』を示すインタビュイー。新人事制度に組み込まれたが、運用のほうは…。
 2年前に2170名を削減し、「オフェンスの年」と位置付ける2020年度は900人(新卒500人、中途400人)の大量採用を表明したNEC。学生時代に『これが働きたい会社だ』(2004年刊)を読み、恩返しではないですがNECの情報をアップデートしたい、もう1つは、変革により復活しつつあるNECについて話したい――そんな2つの想いから、現役のNEC中堅社員(30代)が取材に応じた。果たして、当時より「事なかれ主義」「幕の内弁当」などと評されてきた、「いろいろ手掛けてはいるが目立った特徴はない、保守的で創造性に欠ける」カルチャーは、この10年超の間に、どう変わったのか。GE,IBM,MS出身者はじめ外資人材導入の新野体制が5年目となり岐路に立つNEC、その現場で感じる変化をじっくり聞いた。
Digest
  • 「ぬるくて優しい」NEC
  • 中高年の余剰人員問題
  • GAFA台頭、「かつてと同じランクの人材が採れない」
  • 「海外勤務の意志はありますか?」
  • 社内転職制度「NECグロースキャリア」
  • 「ポスト新野」次第
  • A職とB職、「インド人欲しい」新卒1千万円
  • 所属BUの運で昇格スピードが決まる
  • 同期で部長になれる確率、難易度
  • 55歳で役職定年、定年まで厳しさがない
  • 9ブロック運用開始「評価者を教育しきれていない」
  • 主任は選択制で20時間の裁量労働勤務に
  • ドレスコード、フルフレックス…「プロジェクトRISE」でコマゴマと改善
  • 週一テレワーク→コロナで「在宅勤務が基本」に
  • 「ここは本当にITの会社ですか?」アナログな本社食堂
  • 社員の7割は首都圏にいる
  • 未達でも、怒鳴る人・罵倒する人がいない

【最近のNEC】

■2016年4月、SMBC担当の営業畑出身・新野隆氏がCEO就任。
■2018年4月1日、日本GE元社長の熊谷昭彦氏がNECの執行役員副社長に就任。熊谷氏は2017年12月に退任するまでGEに33年在籍。
■2018年4月16日、「カルチャー変革本部」を新設。日本GEに15年間勤務後に日本マイクロソフトで人事部門の責任者を務めた佐藤千佳氏が本部長に就任。
■2018年12月、早期退職優遇制度に2170名が応募して退職。
■2019年10月、「新卒年収1000万円、世界では必然」(新野社長)と、新卒でも学生時代の実績があれば1000万円超の年収で雇用する制度を導入。

※平時から毎年、下位10%を斬って入れ替えることで知られる、サッカーの世界でいえば“レアルマドリード”なGE流カルチャーが、「ぬるま湯」で有名なNECにどれだけ取り入れられるか、が目下の焦点となっている。

参考記事:日本GE 4年で社員半減、「人件費は変動費」のレアルマドリードな会社


「ぬるくて優しい」NEC

外資出身者を要職に就け、成果主義を導入しようと舵を切ったのは報道の通りですが、私の印象では、社風も変わりつつあります。

新野隆(にいのたかし)。2016年4月、代表取締役 執行役員社長 兼 CEOに就任。1954年9月8日生。右は『日本経済新聞』インタビュー(2018/02/20)記事より。

新野社長がアポ無しでランダムに事業部のオフィスを訪問する「新野のフラット(ふらっと)職場訪問」が、月一くらいで社内のイントラに動画配信されますが、新野社長が「今なら何だって変えられるんだ!」と社員に向かって、士気高揚していたりします。

これは前任の遠藤信博社長時代(2010年4月~2016年3月)にはなかったことで、私自身、遠藤時代は本人を1回しか見ていませんが、新野社長はリアルに10回は見ています。

 NECは旧電電公社の電話製造メーカーとして安定的に収益を上げていた半官半民的な“電電ファミリー”として育った歴史を持ち、現在でも利益の過半を官公需から稼ぎ出す、代表的なITゼネコン。営業利益1458億円のうち、約5割にあたる725億円は、中央省庁(社会基盤BU)と地方自治体(社会公共BU)向けの仕事で稼ぎ出している(2020年3月期、BU=ビジネスユニットについては下記組織図参照)。

ぬるいカルチャーを変えねばならない件については、新野社長の就任前から共通認識だったと思います。2008年に「SAFETY JAPAN」というサイトで、経営コンサルタントの大前研一氏が『NECは不振事業をどう解消すべきか』といった記事を書いていたのですが、NECのケータイユーザでもある大前さんが「NECは一番技術があるけど、一番経営が下手な会社だ」といった分析をしていて、「実に的確な指摘だ」と社内で話題になっていました。

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NECのビジネスユニット(BU)と組織階層

確かにNECは、各事業部の経営トップが必要なリスクをとらないし、執行役員や取締役がプロ経営者ではなく「年功序列の上がりポスト」としてのサラリーマン経営者だから、厳しさがない。上層部が結果責任をとらないから、現場社員もゆるい。会社全体が「温くて優しい」NEC、というカルチャーなんです。

だから、技術はあっても、利益を出せない。たとえば「富士通は(情報システム導入後の)保守でふっかけてくるけど、NECは安いまま」なんてネット上で評されることがあって、確かに、そういうところがある。とれるところでとっていいのに、バカ正直だな、と。もっとしたたかでいいのに、と思っています。

 ゆるキャラのまま生き残れるほど、グローバル化が進んだ世界は甘くない。GAFAはじめ、どう猛なプレイヤーたちが生き馬の目を抜く競争を繰り広げるエレクトロニクスやITの世界で、NECは競争に勝ち残れず、家電、ケータイ、DRAM(半導体メモリ)等から撤退し、この20年で売上が半分になってしまった。『週刊ダイヤモンド』はそれをタマネギ経営と呼んだ。

そんなカルチャーで、半ば諦めモードでしたから、まさかGE出身の熊谷さんが副社長としてウチに来るなんて、全く思ってもみませんでした。その点では、変わりつつあるのは間違いないんです。ほかにも上級管理職レベルにGE、IBM、マイクロソフト出身の人が増えてきました。(GE出身=江澤道広ESS事業部長、IBM出身=森英人dotData事業責任者、など)

「ぬるくて優しいNEC」のままだと、これまでと同じことの繰り返しなので、縮小してリストラして、という縮小均衡の一方です。だから、外資っぽいカルチャーを取り入れて、「強くて優しい」会社にならなければいけない。そういう全体的なメッセージは、GE出身者を副社長に迎えるような前例のない人事からも、確かに伝わってきています。

中高年の余剰人員問題

若手を中心に、新しいアイデアを提案したり、チャレンジできそうな空気は、どんどん出てきています。問題は、中堅以降〜定年前の社員の「これまでの自らのプロセス維持」と「改革しなければ生き残れない状況」とのジレンマに挟まれた部分かもしれません。 いま50歳前後で定年まで10年くらいの人は、一番複雑な気持ちでしょう。会社は変わるべきだけど、自分はできれば逃げ切りたい――と。

※余剰人員の整理については、今から8年前の2012年7月、「1万人リストラ計画」の一環で40歳以上を対象に希望退職を募集、8月28日に2393人が応募したと発表。その発表当日の朝、始業前に、三田の本社ビル『NECスーパータワー』内で飛び降り自殺者まで出た。その社員はリストラ対象外の39歳で、原因は不明。

その中堅以上の層は、2012年に続いて、2018年末に2千人超(2170人)が希望退職に応募して辞めましたが、まだ本体だけで約2万人の社員がいて、頭数の多いバブル期新卒入社組が現在50代なので、人が入れ替わるにはあと10年はかかります。

2012年の希望退職募集については、メディアで報道された通り、対象者が応募するまで何度も何度も面談を重ねるといった、陰湿なものも多かったようで、精神的にキツかったと思います。本社で飛び降り自殺があった日、私は12階の食堂にたまたま行ったのですが、その飛び降りたと思われる箇所が立ち入りできないようシャッターが閉まっていて

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キャリアパスと報酬水準

「CodeofValues」を記したカード。なんと裏表をみてもNECのNの字すら入っておらず、やる気が感じられない。裏に5行の曖昧なポエムが記されている。当り前のことばかりで、どうにでも解釈できる。

佐藤千佳カルチャー変革本部長(上)とメッセージ(下)=同社採用ページより。執行役員以上のフルタイム役職者(約50人)のなかで唯一の女性とあって「人材の多様性」については触れていない。

武蔵小杉駅に隣接するツインタワー「NEC玉川ルネッサンスシティ」(川崎市中原区)が、港区三田に続く“第二の本社”的な機能を持つ

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