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ホリエモン報道のDevil's advocate-1「見逃される公務員法違反」

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国家公務員法第100条
 我々は、当局の都合次第で、いつでも逮捕されてしまう国に住んでいる。一連のホリエモン逮捕報道を見ていて、そんなことをますます強く感じるようになった。赤信号はみんなで渡れば怖くないが、出る杭は引っこ抜かれる。イエローカードなしで一発アウトで退場、というのはどうにも解せない。
Digest
  • 検察の明白な公務員法違反
  • 裁量次第の恣意的な運用
  • 誰だって、いつ逮捕されるか分からない国
  • リスクが高い「出る杭」

 新聞記者なら一度は聞かされる有名な出来事である「西山事件」。

「いいか、毎日新聞は、あの事件で急激に会社が傾き、部数を減らして、一度は倒産したんだ…」

私は、完全に悪い事例として部長から聞かされていた。しかし新聞記者を辞めたあと、よくよく調べてみると正反対で、西山記者は事実を報じ政府の密約を暴いたのだった。西山記者は、沖縄返還に伴う軍用地の復元補償で、米国が自発的に払う事となっている400万ドルを、日本が肩代わりする旨の密約があったことをスクープした。しかし、外務省の女性事務官から情を通じて情報を入手したことが、国家公務員法111条(秘密漏洩をそそのかす罪)違反であるとして逮捕され、最高裁で有罪が確定してしまう。

ここでライブドア報道に関連して特筆すべきことは、女性事務官のほうも、1972年4月、国家公務員法100条(秘密を守る義務)違反で逮捕され、後に懲役6月、執行猶予1年の有罪が確定していることだ。公務員には守秘義務が課されているからである。秘密漏洩の罰則は「1年以下の懲役又は3万円以下の罰金」(国家公務員法第109条)と定められている。

検察の明白な公務員法違反

もうひとつ事例をあげる。検察に名誉毀損で起訴された唯一のマスコミ、『噂の真相』の95年8月号は、反撃の一環として、宗像紀夫東京地検特捜部長とお気に入りのテレビ東京女性記者のツーショットを掲載した。テレ東の女性記者がスクープを連発しており、これは宗像が、自分の気に入った女性記者にだけ捜査情報をリークしているからだ、という記事。

他社の記者によるやっかみ半分という面もあるが、この「リークさせる作業」が司法記者の一番重要な仕事とされているのが実態である。今回のライブドア問題のように、地検特捜部は扱う事件の規模が大きく、最上位の捜査機関であって、機密性も高い。まさに重要な捜査上の機密を「情を通じて」リークしているという点で、西山事件と、なんら変わりがないのだ。

私は「これが本当のマスコミだ」という本を書くにあたり、民放キー局の記者をずいぶん取材したが、TBS以外は必ず、色モノ攻撃の女性記者を警視庁や検察に配置しているという。ほぼ全員が男性である検察官や刑事にリークさせる上で、女性であることは武器になるからだ。

ある民放女性記者は、検察幹部の早朝の散歩につきあうのは日常茶飯だ、と言っていた。実際、「噂の真相」が報じたなかでも、当時の宗像特捜部長は、毎日の通勤時に記者を引き連れるのが日課だった。公式発表はしないが、非公式に、散歩の途中や通勤の途中、帰宅途中に、お気に入りの記者にリークする。それが新聞に「関係者によると…」と、あたかも確定した事実であるかのように、デカデカと一面に載る。もちろん、全て検察側の言い分なので嘘も多いが、容疑者は塀の中なので反論の場さえない。

特捜部が強制捜査に乗り込む映像は繰り返しテレビで流れているが、これも、いつ乗り込むかについて発表などしていない。国家公務員法を守ることなく、捜査上の秘密を、マスコミにリークしているのだ。特捜部としても仕事をしている模様を全国にアピールできるとあって、主要な情報は喜んでリークする。差が付くところといえば、たとえば今回、フジだけは、新宿のデータセンターへの強制捜査の模様もスクープ映像として独占で流していた。局長賞くらいは貰っているだろう。

「NHKの記者が東京拘置所前から『堀江容疑者は容疑を認めていません』などと実況中継しているが、本来は秘密であるはずの捜査情報が平気で漏れてくるのは、日本くらいだ。完全な国家公務員法違反です」(『大前研一ライブ』大前研一ライブ/2006年2月5日号より)

裁量次第の恣意的な運用

この2つの事例から分かることは、法律というのは、露骨に権力側に都合の良いように恣意的に運用される、ということだ。

だから、沖縄返還にまつわる機密が暴露されると政府としては困るから(国民としては税金の無駄遣いを監視する上でメリットがある)、違法にしてしまえ。権力者がそう判断すれば、リークした公務員は有罪になり、記者側まで有罪とすることもできる。

一方、日々の新聞記事に、国家公務員法違反に基づきリークされた捜査情報がデカデカと載っていて、これは明々白々な公務員の守秘義務違反という犯罪なのに、誰も捜査したり逮捕したりはしない。

 菅直人が、堀江逮捕について、『朝まで生テレビ』でこう言っていた。

「(ホリエモンが)違法行為をやったから捕まったんじゃない。検察が捕まえようと思ったから、捕まったんです」

その通りだと思う。要は、権力者の裁量次第、意志次第なのであって、「法の下の平等」など、お題目に過ぎないのだ。

誰だって、いつ逮捕されるか分からない国

ホリエモン逮捕は、決して、ひとごとではない。日本の権力構造というのは、昔から明確なルールを作らずに、「行政指導」(ギョーセーシドー)という官僚の裁量が幅を利かせてきた。そのほうが権力側にとって都合がよいからだ。とにかくグレーゾーンが広いから、みんなどこかで引っかかる。

車のスピード違反のようなもので、誰しも、違反するのが当たり前、といってもよい。たとえば昨年12月、自衛隊のイラク派遣に反対するビラを東京・立川の防衛庁官舎に配っただけで、市民団体の3人が、「住居侵入罪」で有罪の判決を受けている(東京高裁)。

「自衛官・ご家族の皆さんへ 自衛隊のイラク派兵反対!いっしょに考え、反対の声をあげよう!」などと書いたビラを新聞受けに入れただけで逮捕され、75日間も留置場などに入れられたのだ。つまり、新聞配達員は全員、住居侵入罪で逮捕されるリスクがある。うっかり私道を歩いていたら、逮捕の口実としては十分だろう。

テレビ東京が「特報!どうするライブドア問題!」という特番(1月28日)をやっており、ITベンチャー社長が25人ほど出演して○×に答えていたが、ライブドアと同じようなスキームを活用している企業は他にもある、という質問で、実に9割ほどが○と答えていた。私の知人のITベンチャー社長も「非上場企業は、同じことをやってますよ」。私もそう思う。ただでさえグレーゾーンが広い国で、さらに法の整備が追いついていないIT業界では、そこにビジネスチャンスが当然あるのであって、キレイゴトを言っていたら、ベンチャーは勝ち残れないだろう。

リスクが高い「出る杭」

グレーゾーンが広い国で逮捕されずに生きるには、どうすればよいのか。

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検察官は裸の王様2008/02/01 02:50
匿名2008/02/01 02:49
匿名2008/02/01 02:49
通りすがりの者ですが2008/02/01 02:49
林克明2008/02/01 02:49
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