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JT 手厚い福利厚生で実質「総合コンサル会社より高い」初任給、社長は6億円

情報提供
日本たばこ産業の給与明細表紙掲載用
JT(日本たばこ産業)の給与明細より

麻薬・ギャンブル・エロ・戦争…欲望に忠実な産業の周辺は、常にカネの臭いがする。「綺麗に稼ぐ」のは難しい。タバコもその範疇に入る特殊な産業だ。「死の商人」「ニコチン中毒患者ビジネス」と後ろ指をさされようが、「戦争支援企業」と批判されようが、国を筆頭株主とする政治力を後ろ盾に、資金力でメディアを黙らせ、冷酷冷徹に任務を遂行し、世界を舞台に稼ぐ。まるでハードボイルド小説から飛び出したような企業だ。その年収水準は、国策独占企業なのに社長が6億円、そして新卒から高く、PWCやベイカレといった人気コンサル会社を実質的に上回る。総じて、隠れた高賃金企業である。

Digest
  • なぜか海外からの出向者を含めて開示
  • いきなり高い!実質年収700万円弱スタート
  • 残業代は1分単位、特別条項の範囲内に調整
  • 社長の年俸6億円、役員クラスは利権の巣窟
  • 合格率20~5%、「新卒が有利」な次世代リーダープログラム
  • 出世コースはNLP認定からの海外赴任
  • 手厚い住宅補助
  • 女性も不利ではない
  • 時間帯は柔軟、在宅勤務は困難
  • 残業は中核部署で実質80時間程度
  • 休日出勤を「自己研鑽」にして休みに

新規採用に占める中途比率が56%(2024年度)と近年、グローバル・タバコ商社化を進め、中途採用にも力を入れているJT。気になるのは、政府系企業だけに、人事処遇が旧態依然のJTC(Japanese Traditional Company)的で、硬直的な年功序列なのではないか、という点だろう。

これが意外にも、同じ時期に民営化されたNTTやJRといったインフラ企業とは打って変わって、変革が進んでいるのだった。商材が嗜好品とあって、急速な事業環境の変化についていくためのリーダー人材を生み出せなければジリ貧あるのみ、という組織の危機感が背景にある。

中曽根内閣時代の行革によって、旧国鉄(JR)・旧電電公社(NTT)とともに、旧専売公社が民営化されて1985年に誕生したのが、日本たばこ産業(JT)である。それから40年、JRやNTTとは全く異なるスピードでグローバル展開を進めている。

なぜか海外からの出向者を含めて開示

JTは、2種類の平均年収を開示している(2024年度)。

・総合職のみの平均年収=927万円(平均41歳)就職四季報に開示
・全体の平均年間給与=951万円(平均41.3歳)有報に掲載

総合職平均よりも全体平均のほうが高くなる会社は、ほかに例がないくらい珍しい。日本企業における総合職は、一般職や技能職と区別され、その会社で最も給料が高い集団のはず、だからだ。

たとえば同じ食品業界で900万円台のカゴメでは、総合職のみが平均956万円(42歳)、有報の全体平均が891万円(42.1歳)となっており、65万円ほど総合職が高い。これがよくみるパターンである。

日本のメーカーでは、正社員採用において、主に以下3つのコース別採用が行われてきた。

総合職=大卒以上、転勤アリでどんな職種にも異動がありうる何でも屋の幹部候補。

一般職=女子大や短大卒が中心、内勤事務職で転居をともなう転勤ナシ。

技能職=高卒や高専卒、工場や物流のガテン系職場で働く現業職を指し、転居をともなう転勤ナシ。

この総合職・一般職・技能職といったコース別採用は差別的なので、外資では該当する呼び名も英訳も存在しない。そもそも「総合」も「一般」も、英語ではゼネラルになってしまう。「技能」はエンジニアなので外資では高給であることも多い。

外資は「セールス」「エンジニア」「コンサルタント」「R&D」「オペレーション」など細かい職種別採用となっており、それぞれで給与テーブルも異なる。また、終身雇用を前提としないジョブ型雇用であるため、「東京のセールス職」というように、勤務地+職種がセットで雇用され、同じランクであっても「カリフォルニアのエンジニア」と「東京のエンジニア」では給与テーブルが全く異なる。

では、なぜ、全体平均のほうが高く出ているのか。原因は、母数にあたる「従業員数」の操作にある。有報の平均年間給与は、誰を従業員とするか、その母数の定義がなく、会社によってバラバラだからだ。JTは、注で以下のように記している。

出向者入れると平均が上がる年収
海外子会社から本体への出向者が「平均年間給与」を引き上げる珍しい現象
従業員数は契約社員(30人)、休職者(180人)、当社への出向者(102人)を含み、当社からの出向者(600人)は含んでおりません。

なかなか大胆に情報操作している。まず、含むほうだが、休職者(育休や傷病休暇)を含むのは当然として、非正規雇用にあたる契約社員を含むというのは、他社では全く一般的ではない。

同じく含むとされている「当社への出向者」については、つまり、別会社の社員の給与情報までを含んでいることになり、まずありえない。投資家向けにJT本体従業員の正しい情報を提供する、という趣旨に反している。

たとえばJTは筆頭株主である財務省に自社の社員を出向させているが、財務官僚の年間平均給与を開示する際の母数に、JTからの出向社員の情報(もちろん雇用主であるJTが支払っている)を入れてしまったら、正しいデータではなくなる。投資家を欺く行為である。

次に、含まないほうだが、「当社からの出向者」を含まないケースなど、聞いたことがない。在籍していることに変わりはなく、いずれ戻ってきて定年まで雇用する義務があるからだ。何を意図してこのような操作をしているのかは不明であるが、その結果、総合職と全体の数字の逆転現象が起きている。

「JT本体採用の総合職は、若い段階から管理職まで、全世界のタバコ事業を統括するJTI(スイス)や、コーポレート部門のJTビジネスコム(汐留)、国内物流のTSネットワーク(浅草橋)といった、各種子会社に出向して仕事をするのがごく当り前で、賃金体系は一緒です。ただ、海外から来るほうの出向者は別です。

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JTのキャリアパスと報酬水準

賞与の構成比率。全社業績・個人業績(変動分)・個人業績(固定分)。

JTの内定通知書

JTの給与明細(30歳前後、スタッフ3)。残業代は30~40時間分つけられる。

次世代リーダープログラム「NLP」は4段階に分かれる

JTの借り上げ社宅制度

休日の設定、未消化年休の繰り越し、失効年休の積立制度

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