ジョンソン・エンド・ジョンソン マック&ディズニーの日色社長を輩出した「外資で成功するキャリアパス」の法則
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| 各種資料をもとに直近までを振り返るインタビュイー |
ヘルスケア業界でグローバルトップを走ってきたジョンソン&ジョンソン。時価総額はトヨタの1.5倍で、NYダウ30社のうちの1社を構成し、名著『ビジョナリー・カンパニー』でも18社のうちの1社に選ばれた(日本企業はソニーのみ)。そんな伝統ある優良企業の日本法人に、20世紀からコロナ禍が終わるまで長年にわたって在籍し50代で辞めた元ベテラン社員に、同社の主力事業であるエチコン事業本部でのキャリアパスや働き方、待遇面などについてじっくり聞いた。
- Digest
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- 『ラボ』の提供という武器
- 消費者向け事業を完全分離
- MARCHがボリュームゾーン
- 日色保にみる「外資で出世するキャリアパス」
- 市場拡大期に米国本体へ派遣
- 経営人材輩出企業
- 転職先はメドトロニックや『ダヴィンチ』の会社
『ラボ』の提供という武器
「私は土日に趣味のスポーツで指導者をやっているのですが、ドクターのトレーニングを行う『ラボ』の仕事は土日にやるので、並行して続けるのが無理になって辞めました。早期退職者優遇の募集を待っていましたが、現場はむしろ人手不足で、募集はかかりませんでした」(元社員、以下同)
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退職金明細。退職所得控除(優遇税制)で、税金が激安。![]() |
右記が、在籍の証となる退職金明細である。退職金優遇税制と、1社での勤続年数が長いほど退職所得控除の額が増える政府の〝転職防止税制〟もあって、税金は100万円台にとどまった。勤続20年まで年40万円、21年目から年70万円ずつ控除でき、控除後の額のさらに2分の1にしか税金がかからない。退職金の税制優遇は大きい。
この『ラボ』とは、ジョンソン&ジョンソンの営業部門で強力な武器となっている施設で、場所は川崎市(羽田の対岸)、福島県須賀川市、大阪市の、全国3か所にある。
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『ジョンソン・エンド・ジョンソン インスティテュート東京』(川崎市=羽田の対岸)![]() |
同社メドテックの主力ブランド『エチコン』製品である手術用の縫合糸と縫合機器などを使った手術を、無菌豚を使って練習できる施設である。平日は多忙な外科医を、土日に招いて、1日がかりで体験してもらう。
メーカーのショールームにトレーニング機能をつけたイメージだ。
「心臓外科のドクターには、豚の心臓を使って、数百万円するジョンソンの『超音波メス』と『縫合糸』を体験してもらい、縫うトレーニングを提供しています。
婦人科向けでは、『ラパロ(腹腔鏡)』で子宮の手術をする練習を、豚の臓器で行います。ラパロは技能認定テストがあって練習が必要だから、すごく喜ばれます」
いわば、J&Jの「縫合器」と「糸」の両方を使った、研修サービスである。手術用の糸だけで何千種類もあり、針と糸が一体化したデバイスも多く、様々な術式で、試して貰う。もちろん莫大なコストがかかっているが、現状、接待や便宜供与といった文脈での規制はない。
「この訓練を、ドクターに無料で提供しています。近くのホテルに泊めて、前の日は宴会を開いて接待をすることもあります。このトレーニングを提供していることで、シェアを守れている面が大きいです。ドクターからしたら、『世話になっているから、他社には代えられないよ』となるわけです」
以前は交通費まで出していたが、接待規制強化により、現在では交通費のみドクター負担になったという。
「いかに価値あるトレーニングを提供できるか、を重視しています。目的は、『病院の用度課※が院内の材料委員会で、コスト削減のために糸を安いメーカーのものに代えよう、と言ってきたけど、反対しておいたよ』――とドクターに言ってもらうこと
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J&J日本法人の全体像とメディカルカンパニーの現場組織

糸と針が一体化したデバイスも多い。使う材質によって患者の予後も変わる。

2025年4月、ウォルトディズニージャパンの社長に就任した日色保氏。1988年静岡大卒、新卒でJ&J入社し、日本法人社長→日本マクドナルド社長、というキャリア(写真はプレスリリースより)

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