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青森県警警部の自死めぐる公務災害訴訟で「隠蔽工作」か

地方公務員災害補償基金の不自然な"ちゃぶ台返し"で法廷大混乱

情報提供
1千葉真樹さん
自死した青森県警警部の千葉真樹さん。県警本部交通企画課の課長補佐に異動して3か月後のことだった。

「怒られ、怒鳴られ、必死で我慢しました」――そう書き残して青森県警本部交通企画課の課長補佐・千葉真樹さん(享年55。階級は警部)が自殺したのは2016年7月のことだ。パワハラによる自殺だと考えた遺族が公務災害を申し立てるものの、地方公務員災害補償基金青森県支部(基金)は、パワハラは確認できず公務災害にはあたらないとの判断を行う。遺族はこれを不服として訴訟を起こし、その控訴審が仙台高裁で続いている。そのなかで、被告・基金が不自然な応訴態度をみせている。事実経緯に関する説明を突如として客観的根拠も示さないまま大幅に修正する「ちゃぶ台返し」により法廷を混乱させた上に、「パワハラ」の存在を肯定する警察官の証言を得ていながらもみ消した疑いが浮上。公務災害制度を担う独立機関としての信用性を疑わざるを得ない事態となっている。

Digest
  • 控訴審での光景
  • 本部栄転から3か月目の死
  • 4日後の「結論」
  • 10日後に「発見」された遺書
  • パワハラの記載は「うつ病による過剰反応」
  • スケジュール表は物語る
  • 締め切りを強く意識していた痕跡
  • 「間に合わねえ」
  • 「7月8日/本部長への説明」の記載
  • 一審判決、被告基金の弱点とは
  • 「パワハラあった」新証人現る
  • ちゃぶ台返し
  • 事実を歪めている疑い
  • 「不本意です!」と基金代理人

控訴審での光景

8仙台高裁
公務災害認定を求めて遺族が基金を相手に起こした訴訟が続いている(2025年11月26日、仙台高裁)。

「いかにも隠しているかのように言うのは不本意です!!」

昨年11月26日、仙台高裁の法廷に女性弁護士の大声が大型液晶モニターのスピーカーから響き、満席の傍聴人の中から失笑が起きた。2016年に自死した青森県警警部・千葉真樹さん(当時55歳)の公務災害認定を求めて、遺族が地方公務員災害補償基金(基金)を相手取って起こした訴訟の控訴審でのことだ。「不本意です」と発言したのは東京からリモート出廷した基金側代理人である。

被告の基金や青森県警は誠実に調査や訴訟を行っているのだろうか、事実を隠したり歪めているということはないか――私(三宅)はそれまでの取材を通じて疑念を感じていた。その違和感をいっそう強くした場面だった。

民間企業で発生した労働災害は労働基準監督署が調査・認定などの手続きを担う。これに対して、地方公務員や地方独立行政法人の場合は「公務災害」と呼ばれ、労基署にかわって別の独立機関がそれらの業務を行う。地方公務員災害補償基金とはその独立機関のことである。地方公務員らの給料から天引きした経費で運営されている。

本部栄転から3か月目の死

11ダイヤリ表紙
千葉警部の職場である本部交通企画課の机に残されていたダイヤリー(手帳)。

千葉さんは青森市出身で、東海大学工学部(東京)を卒業後、1983年4月、大卒ノンキャリアの採用枠で青森県警に入った。職種は一貫して交通畑で、もっぱら所轄署の交通課に所属して取り締まりや事故捜査など現場の仕事に携わってきた。2013年に警部に昇任、翌14年にむつ警察署の交通課課長となる。8割方が警部補どまりのなかでの警部昇任は優秀な成績ゆえである。本部長表彰や署長表彰を多数うけていた。

県警本部交通企画課の課長補佐に異動したのは2016年4月。上司の推薦による栄転だった。もっとも本人は本部勤務を望んでいたわけではない。出世や天下りにそれほど興味はなかった。本部の仕事はデスクワークが中心だが、千葉さんは所轄署の現場のほうが好きで、むつ署で定年を迎えたいと家族に話していた。

本部の交通企画課に転勤して3か月が過ぎた7月5日火曜日の早朝6時、妻は寝過ごしたと思いあわてて起きた。いつもなら千葉さんが先に起き、洗顔などの物音で目を覚ます。だがこの日は音がしなかった。

家庭菜園のラベンダーを摘むのが日課だったので、庭にいるのかと思って玄関に向かった。だが外出した気配はない。家の中を探し、自室で縊死をはかった千葉さんを見つける。病院に搬送されたが帰らぬ人となった。走り書きの遺書があった。

職場の机の引き出しからはダイヤリー(手帳)がみつかり、警察から渡された。ダイヤリーを開いた遺族は、そこに書かれた激しい言葉に驚く。7月4日、亡くなる直前の欄の記述は以下のとおりだ。「K」というのはK警視のことで、実物では実名である。

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ダイヤリーには直属上司のパワハラを示唆する言葉が書き残されていた。

青森県警本部(青森市)

ダイヤリーや遺書に書かれたパワハラの訴えは「うつ病による過剰反応」だとする医師の意見書。基金側が依頼し、公務災害を否定する証拠として提出した。

重点枠事業のスケジュール表(青森県警警務課作成)

警務課課長補佐のN氏から聞き取った内容を記録した「N報告書」(乙20)。千葉さんがかかわった「重点枠事業」の進捗について説明している。事件から1年後の2017年7月に県警厚生課が作成した。

ダイヤリーに赤字で大書きされた「重点〆切」の文字。締め切りを強く意識して仕事をしていた様子が伺われる。また、警務課N課長補佐の報告(N報告書、乙20)内容とも整合する。

ダイヤリーの7月8日の欄には「本部長への説明」「本〆切」との記載がある。

千葉課長補佐はK管理官からパワハラを受けていた、監察課にその旨を訴えたがもみ消された、などの内容が記された青森県警元警察官の陳述書。控訴審で原告(控訴人)側から証拠提出された。

「重点枠事業」の作業状況を説明した警務課長補佐N氏の報告書(乙20)は、控訴審になって「記憶違い」を理由に大幅に修正された。あらたに作成されたN氏の陳述書(乙48)。

仏前に手を合わせる千葉警部の妻。原告として裁判をたたかっている。

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