「新聞族」議員への献金、一位は中川秀直幹事長 新聞と政界、癒着構造続く
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日販協政治連盟の2005年収支報告書より。新聞業界は、中川幹事長を中心に工作を進め、政界に借りを作っている。(総務省HP→政策・政策評価→選挙・政治資金制度→政治資金収支報告書及び…→平成17年度定期公表→その他政治団体から「二」を選択→日販協政治連盟を選択) |
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政治献金ランキング
総務省がこのほどWEBサイトに掲載した2005年分までの政治資金収支報告書を集計すると、「日販協」(日本新聞販売協会)が有力政治家に政治献金を続けていることがよくわかる。日販協とは、全国にある新聞販売店の同業組合で、新聞社と親密な関係にある組織だ。日販協の機関紙『日販協月報』に掲載された標語によると、「全国2万4千の販売店を結ぶ」としている。
2003~2005年までの政治資金収支報告書に記載された献金先と献金額(セミナー参加費)を合計しランキングしたのが下記で、新聞族議員の親玉・中川秀直幹事長を中心に、献金が行われていることが分かった。清和政策研究会とは、中川秀直・自民党幹事長が所属する派閥で、旧森派のことだ。献金の名目は、いずれも「セミナー参加費」であった。

【献金額ランキング】(03~05年)
1位 中川秀直 350万円
2位 清和政策研究会 50万円
3位 丹羽雄哉 20万円
4位 島村宜伸 18万円
5位 鴨下一郎 12万円
5位 椎名一保 12万円
内訳は、下記のとおりだ。
【2003年】20万円 2月7日 秀政会
10万円 3月13日 中川秀直関西シンポジウム
6万円 3月13日 島村宜伸君と国政を語る会
20万円 4月18日 中川秀直シンポジウム
10万円 5月9日 清和政策研究会フォーラム
20万円 5月9日 清和政策研究会フォーラム
20万円 7月22日 秀政会
6万円 8月28日 鴨下一郎君と明日を拓く会
10万円 9月12日 民主党大阪府第10区総支部
5万円 9月18日 白根の会
20万円 9月26日 秀政会
10万円 9月26日 丹羽雄哉君激励の集い
6万円 9月26日 伸誠政治研究会
20万円 11月26日 秀政会
10万円 12月10日 中川秀直シンポジウム<
【2004年】
20万円 2月26日 秀政会
6万円 2月26日 椎名一保君を励ます会事務局
10万円 3月17日 中川秀直関西シンポジウム
6万円 3月29日 島村宜伸君と国政を語る会事務局
10万円 4月16日 清和政策研究会
20万円 5月27日 中川秀直シンポジウム
20万円 7月20日 秀政会
20万円 9月29日 秀政会
6万円 10月28日 鴨下一郎君と明日を拓く会
10万円 11月10日 丹羽雄哉君激励の集い
20万円 11月10日 秀政会
【2005年】
10万円 2月1日 倉田寛之さんを囲む新春の集い
20万円 3月1日 秀政会
10万円 3月14日 中川秀直君を囲む会
10万円 4月12日 中川秀直シンポジウム
10万円 5月17日 清和政策研究会
5万円 6月6日 白根の会
20万円 6月1日 中川秀直シンポジウム
20万円 7月20日 秀政会
20万円 9月27日 秀政会
6万円 11月10日 椎名一保国政報告会事務局
20万円 11月28日 在職25年中川秀直君の会
日販協政治連盟が支出した2005年度の政治活動費は、1,379万9,671円、2004年度は702万9649円で、2003年度は、なんと1,475万9,062円にも及ぶ。
セミナー参加費ではなくて、露骨な資金提供(寄付)も行われている。たとえば2000年の場合、日販協政治連盟は、中川秀直議員と森善朗総理(当時)に、それぞれ30万円を寄付している。また、塩川正十郎議員と丹羽雄哉議員には、それぞれ10万円を寄付している。また、日販協関係者からの個人献金もある。
密室の懇話会
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98年の『日販協月報』には、当時の小池唯夫・日本新聞協会会長(元毎日新聞社会長)をはじめ、たくさんの新聞人の年頭書簡が掲載されている。![]() |
こうした癒着関係が、新聞業界の既得権の維持に果たした役割は大きい。
2006年の3月3日、自民党の党本部で、日本のジャーナリズム史に汚点を残すある会合が開かれた。自民党新聞販売懇話会である。懇話会には47人の国会議員だけではなくて、日本新聞協会と「日販協」(日本新聞販売協会)の代表、それに取材を担当する新聞記者たちが集まった。
前年の12月に公正取引委員会は新聞特殊指定の撤廃に向けて手続きを踏む方針を打ち出していた。特殊指定が撤廃されると、新聞社は新聞の定価(卸価格と定価)を指定する権限を失い、大きな打撃を受けかねないために、新聞関係者の間に危機感が広がった。
確かに同一商品・同一価格を保証する再販制度はあるが、これは選択肢であって義務づけられたものではない。ところが特殊指定とセットになると、それが義務づけられ、戦略的な安売りができなくなる。このような環境の下では、当然、新しいメディア企業の新規参入は難しくなる。
その結果、業界全体の「秩序」が維持される。(もっとも現実は、すでに公然と値引き販売がなされている)
そこで、特殊指定の撤廃により生じる混乱を恐れる日本新聞協会と日販協が旗振り人となり、政界を巻き込んで、特殊指定撤廃に反対する大キャンペーンを繰り広げた。
自民党新聞販売懇話会が開かれる3日の午前中、わたしは懇話会の事務局長を務める山本一太議員の事務所に電話して、懇話会を取材させてくれるように申し入れた。これに対して、山本議員の秘書は、
「水をぶっかけるようなひとを入れるわけにはいきません」と、答えた。
「新聞記者や業界紙の記者は入るわけでしょ」
「新聞協会の当事者ですから、当然です」
内輪的な村の寄り合いまがいの会合で、特殊指定堅持の意思統一がなされたことは言うまでもない。
その後、新聞協会と日販協は次々と政党のオルグ(勧誘行為)に成功して、最終的には自民党から共産党まで、政界全体が新聞社の立場に理解を示すようになった。しかも、言論の自由を守るために特殊指定が不可欠という、いささか飛躍した論理が幅を利かせるようになったのである。
このような状況の下で、公正取引委員会は6月に特殊指定の撤廃案を断念した。独立したジャーナリズム活動を命とする新聞社が、政界に大きな借りを作ったのである。
大物議員がめじろおし
しかし、政界工作の問題は単に新聞人たちが政界を味方につけたという程度ではすまない。新聞報道こそなされていないが、新聞業界から巧みなかたちで政治献金が行われてきたことこそ、問題視しなければならない。年代をさかのぼって新聞業界から政界への献金の歴史を追ってみよう。
わたしが知る限り、新聞業界による政界工作が始まったのは、1987年である。この年、日本経済新聞の元記者・中川秀直議員らが中心になって自民党新聞販売懇話会を結成した。この団体に所属するメンバーの中に、政治献金の受け皿になる議員がいたようだ。もちろん全員ではないが。
政治資金の献金元は、日販協である。ある新聞関係者が言う。
「新聞社が直接献金するとジャーナリズムの看板に傷が付くので、日販協から献金するルートが出来上がったのでしょう」
日販協の会費を新聞販売店から代行して集めているのは新聞社である。新聞社によっては、産経や毎日のように、新聞の請求代金から天引きのかたちで、日販協会費を徴収する。こうして集金もれを防ぐのだ。
日販協から自民党新聞販売懇話会への資金のパイプライン。これこそが長年続いてきた政界工作の布石にほかならない。日本の新聞がジャーナリズムの機能を失った大きな原因でもある。
1980年代の終わりから90年代にかけて、どのような政治家が懇話会のメンバーとして名を連ねていたのだろうか。
わたしの手元に1991年7月、東京・一ツ橋の如水会館で開かれた日販協の第40回通常総会の資料がある。その中に自民党新聞販売懇話会の議員名簿がある。
驚くべきことに、後年、政界のトップに登りつめる議員たちが続々と名を連ねている。おもな議員名を紹介してみよう。
小泉純一郎、小沢一郎、森善朗、小渕恵三、石原慎太郎、羽田孜、河野洋平、塩川正十郎・・・・・・・
全員で56名である。会長は、元NHK記者の水野清議員である。読売新聞の元記者・丹羽雄哉議員の名前もある。
中川秀直氏の名前は見あたらないが、これは同氏が落選により議員を失職していたからである。しかし、総会の資料によると、当時、中川氏は日販協の顧問を務めていた。
ちなみに山本一太議員の父にあたる山本富雄議員も、この時期、日販協の顧問だった。
「中川先生に恩返しをする機会が・・・」
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「1円募金」の実施を伝える『日販協月報』。同報は、政治資金を「軍資金」と表現![]() |
しかし、 日販協はどのようにして政治献金を捻出していたのだろうか。実は新聞人にしか考えつかない驚くべき秘策が採用されていたのだ。
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日販協は、自民党を支援する方針を取ってきた。1993年3月の『日販協月報』は、「協力体制強化へ布石」の見出しで、自民党に対する資金援助に言及している。驚くなかれ、露骨にも、「自民党新聞販売懇話会の先生方には大変お世話になっているので、選挙の折には恩返しをするのが礼儀。そのためには交通費、文書通信費に相当な額が必要となるので、部当たり一円程度のご負担をお願いしたい」という特別対策委員長の方針が報告され、了承されている。
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読者コメント
発行本社は 販売店に無理やり紙を押しつけ見せかけの部数を維持する オリコミチラシを余分に搾取し 収益とする 詐欺 窃盗 悪徳商法である 全国の販売店の悲鳴が聞こえるようです ここ岡山の山陽新聞もまったくもって ひどい
元々、強い者には弱く、弱い者には限りなく強い困った体質。日本は先進国で唯一の高級日刊紙が無い国。有るのは大衆紙ばかり。誇れるのは部数だけ。紙面は垂れ流しの低劣でも社員は高給取り、を逆転できないかな?そろそろ部数は10分の一でも、高級日刊紙を目指してよ。しかし、日本に高級日刊紙の読者が居るのかどうか疑問も。世界に冠たる大衆文化の王国。出版物の4割をコミックが占めるなんて珍しい国では所詮ムリかな?
「美しい国」・・こんな得体の知れないオブラートで丸め込む手品師紛いの空虚な哲学?に切り込めないメヂアの不甲斐なさには呆れて言葉もありません。
当人達はお付き合いといった感じなのかもしれませんが、その影響が広範囲(国民全体)に渡るだけに謹んで頂かないと困りますね。意外と政治批判記事も掲載されてはいますが。露骨に馴れ合う訳にも行かないですし、緊張関係を維持しつつ必要があれば部分的に手を組むといった処でしょうか?その必要がある重要な箇所で手を組んでしまう処が問題なんでしょうね。全体として見れば相当に癒着はあるでしょう。
表に出ているのは、特段問題ないと見做された氷山の一角の部分ではないですかね?大物政治家にとっては微々たる額の献金ではないでしょうか。甘い蜜が配られるのは大物の証でもあり、ボス的な存在に限られるのではないかなぁ?そこから、部下に配られて派閥を維持するみたいですね。この手の話は、何も新聞業界に限られた話ではないはずです。
どうも報道がおかしくなってきたなぁ?と思っていました。こう言う事が有るんですね。おかしな世の中になるはずです。
このような癒着の構造があることは、今回の記事で初めて知りました。こうした事実はもっと知られるべきではないかと思います。
「TVタックル」に代表されるような政治家の宣伝を目的とした番組は80年代前半までは少なかったですよね。「朝生」も似ていますが始まったのは80年代半ば。政治家は癒着によって知名度をアップさせ選挙での当選率をアップさせることができるし見返りに新聞社は国会で影響力を保持できる。そんな関係が出来て行く発端だったいうことでしょうかね。
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