『新聞社-破綻したビジネスモデル』著者が会見 「新聞社は寂しげな恐竜」
河内孝氏は中央。大手新聞社の元経営幹部が語る本音トークは、ジョークなのか皮肉なのか。会見場にはなごやかな笑いがあった |
- Digest
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- どうして記者に経営者が務まるのか?
- 紙資源の無駄遣いの張本人・新聞社
- 国民のレベル以上の新聞はもてない
- マネジメント不問だったのは規制産業だったから
- 聞く耳をもたない「淋しげな恐竜たち」
河内氏は、毎日新聞社で、社会部記者として出発し、外信部長、編集局次長など記者職を26年、社長室長、中部本社代表など経営側として10年を勤め、2006年6月、常務取締役で退社した人物。
要職を歴任し、経営側としての経歴も長い河内氏は、まさに新聞社の内幕を知る人物だ。河内氏の退社をめぐっては、その退社時、販売体制の改革を進めようとした河内氏の姿勢が、配下の販売店側の反発を招いたためだったとする報道が『週刊文春』でなされている。
会見は、資料をパワーポイントで示しつつ、細かな質疑以外はすべて英語で進められた。冒頭で行われたプレゼンテーションは、題して、「ロンサム・ダイナソー(淋しげな恐竜たち)」。新聞産業の危機、部数至上主義の虚妄、メディア独占体制、メディアは再生できるか?の4部構成で、著書の要点が紹介された。
どうして記者に経営者が務まるのか?
『新聞社-破綻したビジネスモデル』(新潮社) |
河内氏は、今年、アメリカに遊学する機会があった際、ある質問を何度もされたという。「なぜ日本の新聞、いや、テレビも含めたニュースメディアの経営者は、マネジメントの経験もない記者出身者がなっているのだ?」
河内氏は、「日本のメディアは、政府によるとても手厚い規制によって保護されていて、経営者の最も重要な仕事は、政府・与党の政治家や高官と、親しい関係を維持することだからだ」と答えていたという。
手厚い保護の出発点として、河内氏が指摘したのが、戦時中に成立した新聞の統合。統合の結果、いまや、全種類で107種、総発行部数は7,035万部、となった日本の新聞界の現状は、世界で類を見ない寡占体制となっている。
新聞産業がこれから直面する危機には、人口減少、多メディア化による広告の減少と新聞の地位の低下などがあるが、直近の危機は、消費税の増税だという。
現在、不透明なまま放任されている新聞社の収支決算は、消費税の増税で、勝ち組と負け組の実態がさらけ出されるという。河内氏の分析では、勝ち組は、読売、朝日、日経。ちなみに河内氏は、負け組、毎日の生き残りをかけて、産経と地域紙・中日新聞との三社業務提携の構想を提唱しており、会見でもその構想を語った。
各国の新聞発行部数のグラフ。05年、世界新聞協会調べ。グラフ上が発行部数、グラフ下が発行紙数。左から、中国、日本、アメリカ、インド、ドイツ、イギリス、ブラジル。 |
紙資源の無駄遣いの張本人・新聞社
さらに、販売部数以上に過剰に印刷される新聞、いわゆる「押し紙」の問題も言及された。部数至上主義に陥りやすい「押し紙」の問題は、黒藪哲哉氏が追及しているとおりだ。
これに関連して河内氏は、新聞産業の根幹にかかわるタブーにも言及した。新聞が大量の紙資源を無駄にしていることの暴露だ。河内氏の試算によると、2003年段階で、220万本のスギが読者のいない新聞のために消えているという。
著書では、年間の新聞用紙消費量の10%と見積もっても、年間37万トン、金額にして486億円分が闇から闇へと葬られていると計算されている。
発行する新聞社と販売店の双方にとって、部数が多く見えることは広告収入を確保するために望ましい。しかしその影で、驚くべき環境破壊が行われていることになる。河内氏は後の質疑でこう告白した。
「新聞がパッケージされたままのかたちで製紙工場に戻る状況は、ビジネスの倫理から考えても、私は受け入れることが出来ない。それを変えたいと思って、やってきた」
また河内氏は、日本では新聞とテレビが完全に系列化され、メディア間の健全な対話がないことも問題だと指摘した。「日本の新聞社は、商法によって特別扱い(日刊新聞法のこと)されているので
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本当の部数のイメージ図。購読部数、雨などに備えた予備紙、そして過剰に印刷されて販売店に卸される押し紙(excesscopies)。
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読者コメント
拝読させていただきました勇気を持って書かれたと思います。しかし、社長室長でも、この程度の認識か?と、思いました、ま、関東だから?関西の現場で調査、聞き取りをされたら、腰が抜けてしまうと思いますが。読売、朝日、毎日、産経、地方紙も含めてです。
ジャーナリズムのかけらもない編集方針 長野知事時代から 箱もの財政のちょうちん記事を書き続け 累積赤字の山を築いた責任はチボリ公園の失敗を見ても わかるだろう 最近になり 販売現場の実情を知る機会があったが 封建的な販売局の押し紙政策は まさに 破綻したビジネスモデルである いち地方紙でさえ このありさまである
ようやく本社の関係者が告発してくださいました。しかし、遅すぎます。20年おくれました。本社からの「押し紙」を断ると、新聞が搬入されなくなります。われわれ店主は、好んで「押し紙」を引き受けているわけではありません。家族を養わなければならい者の気持ちが分かりますか?
日本のメディア界の構造と太平洋戦争やGHQの情報管理とは切り離せない関係でもある。A級戦犯にも読売関係者が含まれていたり、他の業界と異なった点があることはこれまでの周知の事実。日本人の民度が上がれば変革の声は大きくなって当然でネットの地位向上と併せて質の向上と合理化は必須の課題では?
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実は、これだけ新聞界に苦言を呈している河内氏にして、著書では「私は新聞社を愛するものとして、新聞の再販制度・特殊指定は守られるべきだと思います」と主張している。既得権のインサイダーだった人物がしがらみを断ち切るのは、至難の業だ。