『定年時代』は、朝日新聞に折り込まれ東京都、横浜市の一部と川崎市、埼玉県などで配達されている。
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偽りの発行部数を示して新聞の広告営業を展開する実態が、ASA元店主の内部告発により明らかとなった。朝日新聞に折り込まれて配布される『定年時代』が、実際には122万部しか部数がないのに、150万部と表示して、大量の紙面広告を集めていたのだ。発行元の(株)新聞編集センターの役員には、朝日新聞社の元販売局長も名を連ねる。テレビCMでたとえれば、視聴率を誇張してスポンサー契約を取り付ける行為であり、詐欺に該当する。
【Digest】
◇ホームページ上の数字を操作
◇「定年時代は朝日新聞に折り込まれています」
◇『私の財産』から「150万部」が消えた
◇「全戸配布しています」という言い訳
◇発行元に新聞公正取引協議委員会の元委員長も
◇『定年時代』の広告主たち
ある内部告発がまた新聞の闇に切り込んだ。
朝日新聞社の担当員から
空領収書を書くように強要された事件をマイニュースジャパンに告発した井前隆志さんが、今度は別の問題を明らかにしたのだ。朝日新聞に折り込まれて配布される高齢者向けフリーペーパー、『定年時代』をめぐる詐欺の疑惑である。
同紙は、ウソの配達部数を誇らしげに掲げて広告営業を展開してきた疑いを免れないという。
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東京都における新聞各紙のABC部数。2007年4月の段階で、朝日新聞は
1,225,944部である。

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井前さんが言う。
「『定年時代』の東京都版の配達部数は150万部になっていますが、東京都内における朝日新聞のABC部数をよく見て下さい。約122万部しかありません。28万部も嵩上げしています。
150万部と表示して広告営業をすることは、言葉は悪いけれど、どの角度から見ても、明らかな詐欺ではないでしょうか。広告料金は例外はあるにしろ、基本的には配達部数に準じますから、事実を知れば広告主たちはかんかんに怒りますよ」
井前さんは、ASA清瀬西部を経営した職歴があり、『定年時代』など、朝日新聞に折り込まれるペーパー類についての内情には詳しい。
フリーペーパーの発行元が得る収益は、その大半を紙面広告の収入に依存している。それゆえに発行元は、紙面広告の営業に重点を置いた経営方針を採用する。
その際、広告戦略を有利に展開するためには、どうしてもより高い配達部数をセールスポイントにしなければならない。そこに、『定年時代』のケースのように、実際には朝日新聞のABC部数が約122万部しかないのに、150万部の配達部数を装った営業活動が蔓延する事情がある。
井前さんは、さらに参考資料として、『ロカッチャ』というフリーペーパーも提示した。このミニコミ紙も東京都の多摩地区などで朝日新聞に折り込まれており、しかも、『定年時代』とまったく同じ疑惑がかかっているのだ。
不透明な配達部数で行われるフリーペーパーの広告営業。これこそが広告主が気づかない意外な盲点にほかならない。
◇ホームページ上の数字を操作
内部告発を受けて、わたしは2007年の5月、『定年時代』の東京都版を対象として、広告詐欺の検証作業に入った。
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上の画像には、150万部が明記されているが、下の図では125万部に減数されている。各画像の右下の日付に注意。
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まず、『定年時代』のホームページで、同紙の東京都版の配達部数を確認する。それによると、井前さんが指摘したように5月の時点では、150万部。6月もやはり150万部で変化はない。
ところが7月になって意外なことが起こる。ホームページ上で公表されていた150万部という数字が、突如として
125万部に変更されたのだ。1ヶ月たらずの間に25万部も減数されたのである。
だがこの数字をもってしても、なお東京都における朝日新聞のABC部数、122万5944部(2007年4月の時点)を約2万5000部も超えている。
わたしは部数が大幅に減数された原因を考えてみた。まず、考え得るのは、わたしが紙面広告の詐欺について取材していることが、『定年時代』の耳に入った可能性である。わたしは自分のホームページでも、紙面広告の不透明な営業の実態を調べる旨を記したので、関係者がそれを見た可能性がある。
広告営業における不正を指摘される前に『定年時代』はみずから、配達部数を修正したのかも知れない。
念のために、わたしは直接、『定年時代』の発行元である(株)新聞編集センターに問い合わせてみた。
◇「定年時代は朝日新聞に折り込まれています」
--なぜ、『定年時代』の部数が急に25万部も減ったのですか?
電話での問い合わせに対して、男性が淡々と回答する。
「先月までは、日経新聞、産経新聞、東京新聞にも『定年時代』を折り込んでいたのですが、朝日新聞のミニコミということで、今月から中止したからです」
ASA(朝日新聞・販売店)の中には、日経新聞や産経新聞、さらに東京新聞などの配達を代行している店がある。これらの店で朝日新聞とは別の新聞に『定年時代』を折り込んでいたというのである。
しかし、わたしが都内の複数の店主さんに問い合わせた限りでは、そのような事実は確認できなかった。井前さんも、この言い訳には苦笑を禁じ得ない。
「わたしが店主をしていたASA清瀬西部では、東京新聞も扱っていましたが、東京新聞に『定年時代』を折り込んだことは一度もありませんね」
かりにASAで扱う日経新聞、産経新聞、東京新聞に『定年時代』を折り込んでいたのが事実だとしても、それは朝日グループにとっては、極めて不自然な業務だと言わなければならない。
というのも『定年時代』を朝日新聞に折り込むのは、それによって朝日新聞本紙の付加価値を高め、購読者を増やすことがひとつの目的であるはずだからだ。実際、同紙のホームページは、はっきりと次のように謳っている。
◇『私の財産』から「150万部」が消えた
実は、朝日新聞に折り込まれるフリーペーパーで東京都全域を配達対象としたものは『定年時代』だけではない。毎月、第2火曜日に配布される『私の財産』というフリーペーパーもそのひとつである。発行元は『定年時代』と同じ(株)新聞編集センター。
『私の財産』のホームページにも、同紙の配達部数が明記されている。
それによると、東京都版の部数は7月1日現在で150万部である。実際、「平成17年10月10日」付けの「発刊のごあいさつ」には次のような記述があった。
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上の画像では、「150万部」が表示されているが、下の画像では消えている。
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「私の財産」は毎月第2火曜日の朝、都内の朝日新聞に折り込んで150万部配布いたします。
ところが不思議なことに、『定年時代』が25万部減った理由をわたしが問い合わせた翌日、『私の財産』のホームページを開くと、上記引用の記述から「150万部」の箇所が消えて、
次のように変更されていた。
「私の財産」は毎月第2火曜日の朝、都内の朝日新聞に折り込んで配布いたします。.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
