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朝日新聞、販売店主にカラ領収証を強要 CDに記録された強権的「指導」の数々

情報提供
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朝日新聞担当員によるイジメまがいの「指導」が録音されたCD。昨年9月に、被害者の元販売店主から、朝日新聞社には提出済みだ。
 このほど入手した、ピンク色のごく普通のCD。その録音内容の大半は、朝日新聞社の販売局員・藤井(仮名)氏による暴言めいた「指導」だ。たとえば2005年11日15日には、井前氏にカラの領収証を書かせたときの会話が、鮮明に録音されている。こうした明らかな「優越的な地位の濫用」行為が発覚してもなお、朝日新聞社は「対等な取引」だと主張し、問題を放置している。(本記事はCDの音声つき《会員限定:ファイル形式はWMA》です)
Digest
  • 朝日新聞社への質問状
  • 沖縄タイムスにも同様の問題が
  • 京都新聞は、初七日あけに強制改廃
  • 宛名は「あ、朝日新聞社で、はい」
  • 「編集なんかも伝票処理の不祥事が・・・」
  • 「財務は3年間赤字でいいんですよ」
  • 片務契約
  • 朝日新聞の回答

録音日は、2005年の11月15日を皮切りに、2006年9月25日まで9回に及び、録音場所は、最終回を除き、すべて朝日新聞社の販売店、ASA清瀬西部(東京・清瀬市)だという。CDをわたしのもとに届けた井前隆志氏が昨年の6月まで店主を務めていた店である。

最終回の2006年9月25日の場所は立川市の居酒屋であり、藤井担当員が、カラ領収証を切らせたことについて「申し訳ないことをしたと思っている」と謝罪した場面もある。

朝日新聞社への質問状

わたしは事情を把握するために、直接、当事者である藤井担当員に取材を申し入れることにした。通常、企業の取材は広報部を窓口にするのが原則だが、広報部が仲介すると、最も重要な本人の言い分が聞けない。

そこで朝日新聞社の販売局に電話して、直接本人を呼び出すことにした。だが、藤井担当員は不在だった。そこで手短に事情を説明して、藤井担当員と接触したい旨の伝言を残した。もちろん自分の電話番号も教えた。

しかし、藤井担当員から連絡はなかった。それに代わって朝日新聞社の広報部が電話で、質問事項を書面にして、広報部へ提出してほしいと伝えてきた。

次に示すのがわたしが作成した質問状である。

 前略。

貴社の販売局員がASA清瀬西部の元所長、井前隆志氏に空の領収書を発行させたとされる件について、お尋ねします。わたしが調べた事件の経緯は次のとおりです。

2005年11月15日に担当員(藤井氏)が、ASA清瀬西部を訪店。業務の打ち合わせを行った後、井前氏に空の領収書を発行するように要求した。録音された記録によると、藤井氏が領収書の宛名を朝日新聞社にすること、A金額は書き込まないこと、B出費の名目を、店員補助にすること、C領収書の裏書きも回収することなどを指示した。

井前氏はASA清瀬西部を改廃された後、藤井氏にこの問題を問いただし、朝日新聞社としての見解を書面で示すように要求した。(書面も提出した。) これに対して藤井氏は2006年の9月25日、井前氏を立川市の居酒屋に呼び出して口頭で、「申し訳ないことをしたと思っている」などと謝罪した。

その他にも藤井氏の発言は録音されている。いずれも高圧的な発言で、たとえば、「たとえばこのお店なんかね、あの、極端な話を言うと、財務はもう3年間赤字でいいんですよ、ハイ・・ウン、そういう中で仕事を組み立てて・・・」、「店もってすぐに利益だすなどと言ったら、はっきり言って辞めてもらいますから。そういう経営だったら、ハイ・・」「利益なんかださなくても、銀行に信用されますから」など。(録音テープは、井前氏から販売局へ提出されているはずです。)

質問1、領収書の空欄に吉岡氏が書き込んだ金額はいくらだったのでしょうか。

質問2、貴社が事実関係を認められた場合、吉岡氏の処分はどうなるのでしょうか。

質問3、貴社とASAの間には、対等な商取引が存在するのでしょうか。録音を聞く限りでは、優越的な地位を濫用されているような印象を受けます。

質問4、井前氏が要求している朝日新聞社としての見解は示されるのでしょうか。

沖縄タイムスにも同様の問題が

 さて、CDの録音内容を紹介する前に、予備知識として新聞社と販売店の間にある歴然とした権限の差について述べておきたい。販売店に対する新聞社の優越的地位濫用が、単に井前氏のケースだけではなくて、新聞業界の普遍的な問題になっているからだ。

たとえば紙面では定評がある沖縄タイムスや京都新聞ですら、このあたりの事情は変わらない。

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沖縄タイムス社が販売店主に送った改廃通知。これにより店主は30年来の家業を奪われた。

少し古い事件になるが、1998年に沖縄タイムスの美田販売店を経営していた金城初子さんは、保証金の金利をめぐり発行本社とトラブルになったのを機に販売店を廃業に追い込まれた。

ほとんどの新聞社は店主から保証金を預かっている。新聞の卸代金の未払いが発生した場合、保証金から徴収するためだ。沖縄タイムスの場合、保証金の金利は6%だった。しかし、5%に引き下げる旨を販売店に伝えた。

この提案に対して金城さんは、納得できずに答を保留した。それから8ヶ月後、金城さんは沖縄タイムスから突然、商契約の更新拒否を伝える内容証明郵便を受け取り、約30年のあいだ続けてきた販売店をつぶされたのである。

京都新聞は、初七日あけに強制改廃

2001年には、京都新聞の藤ノ森販売所でも、新聞社と販売店の権限の圧倒的な違いをみせつける事件があった。発端は、藤ノ森販売所の店主が病気で亡くなったことだった。

販売店経営は40年来の家業だったこともあり、当然、奥さんは自分に販売店を継ぐ権利があると考えていた。ところが初七日が明けるとすぐに京都新聞社の担当員が藤ノ森販売所を訪店して、早々と強制改廃を告げたのである。

悲しみに打ちひしがれている遺族の心情に配慮しないやりかたに、藤ノ森販売所の読者からも非難の声があがった。

沖縄タイムスや京都新聞の例が示すように、新聞発行本社の都合だけで、販売店の経営者やその家族はいとも簡単に生活権を奪われている。その背景に横たわるのは、両者の権限の違いである。ここで紹介する朝日新聞社の販売局員による販売店イジメの背景もまったく同じと言えよう。

宛名は「あ、朝日新聞社で、はい」

カラ領収書の件を井前氏が告発する引き金となったのは、2006年6月に朝日新聞社が井前氏を解任したことである。ASA清瀬西部の引き継ぎを行うに際して、井前氏はカラ領収書の件を持ち出して、藤井担当員に謝罪を求めた。金銭の精算だけではなくて、不正行為のけりもつけようと思ったのだ。

しかし、いつまで待っても正式の謝罪はなされない。そこで最後の手段として担当員の不正行為を我々メディアに訴えたのである。

井前氏が空領収書を書かされたのは、2005年11日15日である。その時の藤井担当員の指示を井前氏は録音していた。詳しくは本記事の最後に音声を公開しているので聞いていただきたいが、抜粋で紹介しよう。

まず、領収書の宛名をだれにするのかについての指示。井前氏が藤井担当員に、

「朝日新聞本社で?」

と、尋ねる。

「あ、朝日新聞社で、はい」

業務の打ち合わせをしながら、井前氏はカラ領収書を作成したらしい。そのために会話は、突然、業務に関連したことに戻る。

と、再び領収書についての会話に切り変わる。藤井担当員が、領収書に記入する出費目的について、

「店会で、店会補助」

 と、指示を出す。
 朝日新聞社には販売店を対象とした店員補助という補助金制度があるらしい。これは新聞販売店で店員がミーティングなどを開き、それに担当員が加わったとき、コーヒーなどの飲食代を補助するのが目的である。

藤井担当員は、その店員補助を支出したことにして、井前氏に空の領収書を発行するように求めたのである。 

 改めて言うまでもなく、領収書の空欄に適当な金額を書き込み、それを自社に請求して、ウソの立替金を精算してもらい、最終的に金を自分のポケットに入れるのが目的だと思われる。

領収書の日付についても、藤井担当員が、

「今日の日付で」

と、指示している。これを受けて井前氏が、

「今日の日付で」

と、再確認する。藤井担当が、

「15(日)」

と、つぶやく。

「写しのところももらっていい?」

「写し」とは領収書の裏書きである。これを井前氏が保存すれば、藤井担当員の不正行為が発覚する可能性がある。だからどうしても回収する必要があるのだ。

「はいッ」

緊張した井前氏の声が響く。わたしは高校生が教師から厳しく叱責されている場面を連想した。藤井担当員の横柄な声が途切れるあいまに、井前氏の緊張した声が、「はいッ!」「はいッ!」としゃっくりのように繰り返される。

朝日新聞社と夏の甲子園が頭にあったわけではないが、わたした監督の前に直立不動で立っている高校球児を連想した。とても対等な大人同士の会話とは思えなかった。これこそが優越的地位濫用の現場だと思った。

その後、2006年の6月に井前氏は、店主を解任された。

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井前氏が提出した「2005年の反省と2006年度の抱負」と題する文書。

新聞社と販売店の契約書(読売新聞)。「奴隷契約」とか「片務契約」とも呼ばれている。

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匿名2008/02/01 02:51
新宿2008/02/01 02:51
当人2008/02/01 02:51
渋谷2008/02/01 02:51
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