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新聞の“折込チラシ詐欺” 広告主たちが日々、被害者に

情報提供
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図1:ある販売店における2005年5月3日から5日までの折込チラシの配送明細書(納品書)。元アルバイト社員によれば実際の配達部数は1150なので、ほとんどの広告主が詐欺にあっている(プライバシー保護のために地名は消した)。
 配達する新聞部数を超えて新聞社が新聞販売店に送り付け、しかも買い取りを強いる新聞が「押し紙」だ。長らく隠されてきたこの問題に連動したもうひとつの大問題が、「押し紙」と同時に古紙業者によって回収・破棄される折込チラシ問題。広告主の目の届かないところで日々、配達されるはずの大量の折込広告が、廃棄されている。図1は、ある販売店の一時期の広告主リストだが、8割以上の広告主が詐欺にあっていることになる。
Digest
  • 新聞界のもうひとつのタブー
  • 右翼の広告主に凄まれて
  • 元アルバイト社員の証言
  • 毎日の代理人も「押し紙」を認める
  • 広告主はブランド企業がめじろおし
  • 折込定数を決めるのは新聞社
  • 被害者は不動産業者、スーパー、パチンコ店…

新聞界のもうひとつのタブー

 根の深いこの問題について、ある新聞社のOBが言う。

「折込チラシの水増し問題は販売店にも後ろめたさがあるので、なかなか表に出ません。『押し紙』は業界内の問題ですみますが、折込チラシの問題は、業界の枠を超えていますから、発覚すればさまざまな人々を巻き込むことになります。『押し紙』問題よりもタブー視されているゆえんです」

「押し紙」問題については、マイニュースジャパンでも、2005年2月17日に、「毎日新聞140万部“水増し詐欺”の決定的資料」と題するレポートを、昨年の9月10日には、「毎日新聞『押し紙』の決定的証拠」を掲載した。いずれも毎日新聞社における「押し紙」の実態を公表したものである。

「毎日新聞140万部“水増し詐欺”の決定的資料」で暴露された毎日新聞の例に見るように、かりに1日に発生する「押し紙」が全国で140万部とすれば、原則として折込チラシは1種類につき、140万枚が過剰になっている計算になる。

もっともこの原則は、最近、水増しというトリックの発覚で急激に崩壊し始めているが、少なくとも新聞の公称部数と、「折込定数」(販売店ごとに公表されている折込チラシの必要枚数)は一致している。だから折込定数に準じてチラシの発注枚数を決定すれば、どうしても「押し紙」部数の分が水増しになってしまう。

右翼の広告主に凄まれて

折込定数のウソに広告主が気づき、トラブルになったケースもある。大阪府の毎日新聞・元販売店主が、事件について語る。

「数年前にある販売店で持ち上がったトラブルです。この店は、約4000部のうち2000部が『押し紙』でした。ところが経営が苦しくなったので、『押し紙』をカットしてもらったのはよかったのですが、それに伴い広告主に提示する折込定数も、約2000枚に落としました。その結果、広告主が今まで騙されていたことに気づいたのです。しかも、広告主のひとりにスーパーを経営する右翼の関係者がいたんです」

 今までセールスマンが「4000部でちょうど全戸に行きわたる」と説明していたのに、それが急に「2000部」になるのだから不審に思われても仕方がない。この右翼の経営者が販売店と広告代理店に抗議したところ、500万円の賠償を提案されたという。しかし、事態は解決どころか複雑になった。提示された金額が、損害額に見あっていなかったからだ。怒った右翼の経営者が、

「ゼロがひとつ足らんやろ」

と、凄み、最終的に相応の賠償をさせたという。

このような状況の下で販売店主の中には、むしろチラシ詐欺の問題が業界を蝕みつくす前に暴露してほしいという声もある。破棄するチラシの量が増えれば増えるほど、発覚したときの反動が大きいからだ。しかも、後述するように、折込定数を決定するのが新聞社なので、販売店は嫌でもチラシの水増し詐欺に加担することになるからだ。

元アルバイト社員の証言

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元アルバイト社員の女性が残していたメモ。折込広告組込機にセットする地域ごとのチラシの枚数合計は1175枚になっている。プライバシー保護のために一部の名前を消した。

具体的にチラシ破棄の実態を紹介してみよう。シミュレーションのモデルとして取りあげる販売店は、九州地区にある毎日新聞・牧野販売店(仮名)である。この牧野販売店で2005年ごろに折込チラシ組込機械を操作していた女性の元アルバイト社員によると、毎日、2300部の朝刊が毎日新聞社から送られてきたという。チラシの広告主は、たとえば図1のような会社であった。

ところが販売店で、実際にチラシを折り込んでいた新聞は、1150部前後しかなかったという。相当の「押し紙」が発生していたと推定できる。

毎日新聞社の折込広告代理店である毎日メディアサービスのHPによると、2006年11月の時点で、この販売店には2420部の新聞が搬入されている。

毎日新聞・西部本社の販売局にも「押し紙」の実態について直接問い合わせてみた。あいにく担当者とコンタクトが取れないので、同僚の方に、

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折込チラシを回収しているトラック。福岡県の販売店主が撮影したもので、毎週木曜日の午前7時から8時の間にやって来るという。

「わたしの方で把握している牧野販売店の実配部数は約1200部だが、間違いがあるようなら、連絡してほしい」

と、伝えておいた。しかし、何度も催促したにもかかわらず、結局、連絡はなかった。おそらく新聞社は、「取引先」である販売店の業務内容を関知していないということではないかと思う。

毎日の代理人も「押し紙」を認める

なお、「毎日新聞140万部“水増し詐欺”の決定的資料」によると、2002年10月の時点で、毎日新聞・西部本社が販売店に搬入している新聞部数(朝刊)は、1日に663,826部である。これに対して読者に発行された購読料の領収書は、429,715枚である。差異の234,111部は「押し紙」の可能性が高い。「押し紙」率にすると約35%である。

この数字を基準にすると、搬入される新聞とチラシの半分は破棄されているとするアルバイト店員の証言は、多少誇張されている可能性もあるが、必ずしもデタラメとは言えない。

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毎日新聞社の代理人弁護士による「押し紙」についての見解。裁判の準備書面より。本文に引用したのは「4」の部分。

毎日新聞社の代理人弁護士・江口仁氏も、昨年起きた金銭トラブルを争った裁判の準備書面で「押し紙」について次のように記述し、その存在を認めている(右記)。

「問題は、広告主(依頼者)の側からすれば、新聞紙の数に比例した広告料を支払うのであるから、残紙分については無駄な料金を支払っているというのが現実である。ただこのことは、日本における新聞販売店全体に通ずる構造的なものであり、一定の範囲ではやむを得ない問題である(一時的に数が多くなることはある)。」

このように、毎日新聞社による「押し紙」政策を裏付ける複数の証拠があるので、本レポートではこの販売店に「押し紙」が存在するという前提で論を進めたい。ただし、元アルバイト社員が言う実配数・1150部という数字は、あくまでシミュレーションための数字という点を強調しておく。

広告主はブランド企業がめじろおし

牧野販売店における2005年5月3日~5日の折込チラシを検証してみよう。枚数は休日ということもあって比較的多い。3日が25枚。4日が6枚。5日が12枚である。平均すると1日に14枚である。

5月3日に折り込まれたチラシの広告主、サイズ、枚数、新聞の実配数・1150部を基準とした水増し数、それに損害額は次の通りである。(折込手数料は、06年8月の時点、北九州地区のものを採用する。B2が7.7円、B3が4.2円、B4が3円である。)


大半の広告主は、シミュレーションに採用した実配数・1150部を大幅に超えた枚数のチラシを発注している。たとえばダイエーの場合

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元ASA関係者2010/09/11 00:14
元ASA関係者2010/09/11 00:12
むかむか子2008/02/01 02:51
中日新聞では2008/02/01 02:50
そもそも2008/02/01 02:50
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