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20代30代の無投票層は与党の支持基盤、自民党への投票と一緒

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土屋彰久(つちや・あきひさ)政治学者。1964年、東京都生まれ。早稲田大学政経学部政治学科卒。早稲田大学他にて非常勤講師。著書に「政治家にダマされないための経済学」、「政治家にダマされないための政治学」、「50回選挙をやっても自民党が負けない50の理由」、「教科書が教えられない政治学」(全て自由国民社)等多数
 選挙に行かないことで、最も損をしているのは20代、30代の若者です。無投票層は、好むと好まざるとにかかわらず自民党に「半票」程度を投票しているのと等しい効果を果たし、自民党の強力な支持基盤として存在してきました。たとえば比例区で各党の割合が、自民5:民主3:公明1:共産1なら、無投票は、この割合で各党に投票したのと同じ。「国民は現在の政治に不満があるのに、政権交代は起こらない」という状況が常態化しているのは、若者の投票率が低いことが原因なのです。
◇無投票=自民党への投票
 前回の参院選で20代、30代の投票率は30%台と、全世代で最も低く、政治に対する無関心ぶりを表していますが、実は、選挙に行かないことで、最も損をしているのが、この20代、30代です。

私が自民党の強さを一番感じる時というのは、自民党の圧勝ぶりよりも、むしろ、この投票率の低さを見たときです。自民党に投票している人々は、投票率に得票率をかけて得られる絶対支持率をみてみると、多めに見積もっても、せいぜい70%×50%=35%でしかありません。ひっくり返して言えば、有権者の65%が支持していないということです。それにもかかわらず、戦後50年以上もほぼ一貫して政権交代が起こらずに、長期政権を維持してきたキーが、この無投票層の存在です。

特に最も投票率の低い世代である20代、30代の無投票が鍵を握っています。その多くは、どうせ誰に入れても変わらないという無関心な気持ちや、今の政治全体が気にくわない、といった弱いネガティブな意思の表れですが、ここに選挙制度のトリックが仕掛けられています。無投票という行動の動機となった本人の意思とは裏腹に、これまで無投票は、実質的には半票の自民党支持票としてカウントされ、その結果、政権が維持されてきました。

無投票は、どの候補者に投票しているわけでもないので、積極的な加算効果ではありません。しかし、(現実的には可能性ゼロである)有権者全員が無投票という場合を除いて、無投票は、各候補者、政党の得票割合に応じた投票と同じ「消極的な加算効果(機械的加算効果)」をもちます。この加算効果を最小限に抑えるには、得票率に応じて当選議員数を減じるしかありませんが、現行の制度はそのような仕組みにはなっていませんので、事実上、無投票は、投票しているのと一緒になります。

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前回(2004年7月)の参議院選挙での年代別投票率

これは、たとえば、比例区で各党の割合が、自民5:民主3:公明1:共産1ならば、無投票は、この割合で各党に投票したのと同じになり、自民党に半票を投じているのと等しいことになります。これだけなら、野党にも半票入っていることになりますが、小選挙区や一人区の場合であれば、多くの選挙区で自民党にほぼ一票投票しているのと同じになるので、全体としては半票を自民党のみに投じた程度の議席配分となります。

これまでの選挙は、大まかに言うと、約30%の無投票層の半分が自民党の支持票に加わることで、自民党の絶対支持率は50%となり、加算が得られない絶対不支持率は約35%のままであるために、その割合50対35の割合で議席が配分され、政権は安定する、といった構図になってきました。

◇無投票は与党の味方

今回の選挙は野党優位と報道されていますが、図式は基本的には変わりません。それは、先日の毎日新聞で「結果を左右する投票率に関心 政局にも影響」という記事にも明らかです。

同記事には、今回の参院選について、自民党の閣僚関係者が、投票率が「60%を超えたら惨敗だ」と述べており、公明党選対幹部も「夏休みで投票率が伸びなければ、与野党互角の10カ所程度の1人区で全勝も可能だ」、「期日前投票の増加も、必ず投票する人が前倒ししただけ。最終的には50%前半に止まる」と、希望的観測として述べているのも、その証左といえます。選挙のプロ達は、「本当の味方」が誰であるか、よく心得ています。

無投票というのは、自民党が仕切る日本政治の堕落ぶりに背を向けた、潜在的不満層の票を自民党への支持票に変換するシステムであり、このシステムの構築こそが、支配勢力の総力を結集した最大の裏国家プロジェクトだったといっても過言ではありません。

もともと自民党は基本的には富裕層の利益を追求する党であり、所得でいえば、1000万円以上、資産でいえば、1億以上の富裕層全体を支持勢力としています。政策面から見ると、後述するように20、30代の、特に都市部の中・低所得層は明らかに損を被っており、実は最大の反自民党勢力になるはずなのですが、実態は、その意思とは裏腹に、選挙に行かないことで自民党の最有力の支持層となっています。「国民は現在の政治に不満があるのに、政権交代は起こらない」という状況が常態化しているのはこのためです。

◇与党、野党どちらの年金政策が得か
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前回(2005年9月)の衆議院選挙での年代別投票率

20代、30代が今の与党の政策で損を被っているのは、年金一つとってみても明らかです。投票に行く層の利益を配慮してきた自民党と、それと組んでいる公明党、この与党が勝つ限りは年金の基本的なシステムは変わりません。100年安心と言っても3年で破綻が表面化しているように、この先も掛け金はスライドでどんどん上がり、受給額は減っていきます。

どこを見ても100年安心などと言える部分は無いのが与党の政策の実態ですが、今の与党が続く限り、この基本は変えないという前提で運営されることになります。これにより、最も損をしているのが20、30代のサラリーマンなのです。

麻生太郎外相が、今月19日「アルツハイマーでもわかる」と講演の中で述べて物議を醸しましたが、私が注目したのは、むしろ、この講演の中で同氏が年金問題について、中高年の聴衆に対して、「この問題は30年後の話。今払っているやつが心配するのは分かるが、おたくらは関係ないんだ」と語った点です。これは、年金問題は実は20、30代にとって

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屋彰2009/09/20 22:41
オペレーター2008/02/01 02:51
チビブラック2008/02/01 02:51
通りすがり2008/02/01 02:51
百式2008/02/01 02:51
サンクス↓2008/02/01 02:51
>???2008/02/01 02:51
???2008/02/01 02:51
しろちゃん2008/02/01 02:51
記事への感想22008/02/01 02:51
国民の総意の反映2008/02/01 02:51
共産や社民といった2008/02/01 02:51
小泉改革の歪2008/02/01 02:51
オペレーター2008/02/01 02:51
労人2008/02/01 02:51
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この記事は、佐々木敬一が聞き書きを担当した。
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