住友銀行EXIT 春田真「『何とかなるさ』で割り切っていこう」
ディー・エヌ・エー 常務取締役総合企画部長 春田真氏 |
- Digest
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- 人材募集の広告から始まった
- 亡き父にならって住銀に進む
- 新入社員のつらさに耐えて
- 営業で仕事の神髄を学んだ
- コンサルとの議論でわかってきたこと
- 自分で決定プロセスを作りたかった
- 「もし私が嫌だと言ったら?」恋人は聞いた
- 年収は400万円ダウン
- しかし転職して失ったものはない
- キャリア年表
人材募集の広告から始まった
人間関係のネットワークがあったわけでも、もともとインターネットの仕事を手がけていたわけでもない。春田が住友銀行員の職を投げうち、いま役員を務めているディー・エヌ・エー(DeNA)に転職しようと思ったのは、ウェブに「人材募集」と書いてあるのを見たのがきっかけだった。いまや携帯電話向けSNS最大手「モバゲータウン」を運営する企業として東証一部にも上場し、IT業界では誰ひとり知らない者はいない同社だが、この当時は知名度はまだゼロに近かった。
それでもとりあえずメールを送ってみると、間髪を入れずにディー・エヌ・エーの側から電話がかかってきた。
1999年の暮れのことである。会社を終えて、大手町から代々木公園まで地下鉄に乗って出かけた。改札を出て階段を上がると、すでにあたりはうす暗くなっている。地図を見ながらオフィスを探し、富ヶ谷の交差点を渡った。NHK放送センターのそばだと聞いていたが、なかなか見つからない。ようやくそれらしい雑居ビルにたどり着いたときには、すっかり真っ暗になっていた。
ディー・エヌ・エーと書かれたドアのそばにはインタフォンのボタンがある。いままで大手銀行の中核で働いてきた30歳の男にとっては、そのボタンはあまりにも小さく見えた。「これ押していいのかな……」と一瞬気が引けたが、しかし思い切ってボタンを押した。この瞬間が、春田にとって人生の最大の転機となった。
亡き父にならって住銀に進む
春田真は大阪、奈良で生まれ育って京都大学法学部に進んだ、生粋の関西人だ。だから就職先も東京など毛頭考えていなかった。おまけに時はバブル末期の1991年。就職戦線は空前の買い手市場で、学生たちは企業を訪問すると、ホテルやフレンチレストランで毎回のように食事を奢ってもらうことができた。
春田は金融を志望していて数多くの金融機関を訪問し、そのうちのいくつかからは良い感触を得られたが、最終的には住友銀行に決めた。当時同行は、イトマン事件の余波を受けてマスメディアで連日叩かれていた時期で、就職先としての人気は急落していた。それでも彼がこの銀行に就職しようと思ったのは、自分の亡き父が住友の行員だったからだった。
父は春田が小学校五年の時に亡くなったため、彼は父のことはほとんど覚えていない。だが残された家族に対して住友銀行は手厚い援助を行い、彼が長じて大学に入るまで、生活に困窮するようなことは一度もなかった。そうした「大家族主義」が好ましいものに思えて、「ずっとお世話になってきた住友銀行で自分も働こう」と考えるようになったのである。
東京・初台にあるDeNAのオフィス風景。会社の成長に合わせて頻繁に引っ越しを繰り返している。このオフィスは2008年2月から。渋谷区の町並みを一望できる。 |
新入社員のつらさに耐えて
最初に配属されたのは、京都の四条支店だった。カウンター業務の補佐を少しばかり務めた後、ローンの担当に回された。春田は「このローン担当をしていた半年間が、住銀時代でいちばんつらかった」と今でも振り返って思い出す。この時代、金融業界ではバブルの総決算として、不良債権の最終処理が行われていた時期である。ただでさえローンの回収は厳しい作業だったのに加え、担当になって三か月もすると上司が異動でいなくなってしまい、担当はたったひとりになってしまった。
事務手続きはわからないことだらけだし、新規の契約もまとめなければならない。そしてもちろん、厳しい回収の仕事がある。それまで大学で遊んで暮らしていた若者にとっては、いきなり天国から地獄へと突き落とされたような気分だった。どんどん仕事にきつさを感じるようにあり、風邪をこじらせ、這うようにして病院に行くと「インフルエンザですね」と診断された。このときばかりは「もう辞めようか」とさえ考えたのだった。
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