【オリコンうがや訴訟14】3467万請求された山田氏「みんなで訴えた奴の馬鹿さ加減を書くしかない」
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山田厚史。1948年生れ、同志社大学法学部政治学科卒業。朝日新聞社編集委員。テレビ朝日「サンデープロジェクト」ゲストコメンテーターとしても活躍。著書に『日本経済診断』(岩波ブックレット)等 |
- Digest
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- 放送後に安倍事務所から質問状
- 支援者のおかげで裁判費用はまかなえた
- 和解勧告をすぐに受け入れた安倍事務所
- 安倍事務所の狙い通り、朝日は訴訟で萎縮
【Digest】
◇安倍事務所の訴えに朝日社内は動揺
◇放送後に安倍事務所から質問状
◇支援者のおかげで
裁判費用はまかなえた
◇和解勧告をすぐ受け入れた安倍事務所
◇安倍事務所の狙い通り、朝日は訴訟で萎縮
◇安倍事務所の訴えに朝日社内は動揺
烏賀陽氏は判決を不服として控訴し、審理は東京高裁に移った。だが烏賀陽氏の事件は氷山の一角。今回は、前首相の安倍晋三事務所の元秘書・秘書3人が、ジャーナリストの山田厚史氏を訴えた名誉毀損裁判にスポットをあてた。
--安倍事務所相手方から訴状が来た、そのとき山田さんはどのようなお気持ちで受け止められたのですか?
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安倍事務所側から提出された準備書面。「サンデープロジェクト」に出演した、田原総一朗、高野孟、須田慎一郎、そして山田厚史が、政治家と証券会社の癒着について語っているシーンから、山田氏の発言だけを取り出して、名誉毀損と主張している。![]() |
というのは訴状が来たのがすごく遅かったんです。訴状が来る前に、(安倍事務所から)提訴されたことがわかったのは、『夕刊フジ』が、うち(朝日)の広報に取材に来たときです。
『安倍事務所が山田さんと朝日新聞を訴えたようですが、コメントをください』と。広報はそんなのは知らないわけです。『なんですか? それは?』とあわてた広報から私に『山田さん訴えられたみたいですよ』と連絡がきました。
すぐに広報から司法クラブに連絡して、『そのような事実があったのかどうかあたってください』、同時に政治部に、『訴状があったら手に入れてください』と頼みました。
社会部が、すぐに東京地裁の民事に行った。安倍事務所が朝日新聞と山田を訴えているという事案は確認できたけれども、訴状はそこからはもらえなかった。裁判所は、『訴状を改めて送る、と言っている』と記者からの報告です。
損害賠償の訴えを起こされているのはわかったんだけど、何がどう訴えられたのかがわからない。
安倍事務所にうち(朝日)の記者が行ったら『訴えた』という事実は認めた。けれども、その内容について『あんたらに言う必要はないよ』と追い返されてきた。『少なくとも訴えたんだから、何で訴えたのかを言ってよ』と思うわけですが、それさえも言わない。
そうこうしているうちに(首相)官邸で、ぶらさがり(取材)で情報が出てきた。官邸記者クラブのサンケイとNHKに安倍に近い記者がいる、と言われますが、そういうことかという気がしました。
翌日、ぶら下がり取材で、『安倍さん。朝日新聞を提訴されたそうですね』と聞かれた安倍が『朝日新聞には僕のことなら、なんでも書いていい、という空気がある』と発言し、それが紙面化された。
安倍の一方的な意見だけが(メディアに)流れた。はじめから、これは嫌がらせっぽい話ですよね」
放送後に安倍事務所から質問状
--安倍事務所が訴えてくることは予測できましたか?山田「『サンデープロジェクト』(2007年3月25日放送)の放送後、1週間くらい経ってから、安倍事務所からファクスで質問状が来ていました。それは私に直接ではなく、(朝日新聞の)論説委員室に来ていました。
私が、(質問状に)答えようかと思っていたら、同僚の編集委員から、『これは安倍の常套手段だから、山田さん、ひとりで対応したらまずいんじゃないんですか』とアドバイスがあったので、(朝日の)広報に届けることにしました。
僕は、『言論への攻撃は言論で対抗するべきだ』と思い、『俺のもっているコラムで、笑止千万、と反論する』と会議で言いました。編集局は『それは困る。山田と安倍のケンカをコラムでやると話が大きくなってしまう。引き取らせて欲しい』と言う。
社の編集局の幹部は、『お気持ちはよくわかるけれども、これは安倍と山田さんの問題ではないんだ。朝日新聞の問題なんだ』とも言った。
そして『もし裁判になったら我々が会社でやりますから、引き取らせてください』と編集の幹部が言うので、『そこまで言うのならば』と下駄を預けた。ところが、裁判になったら、会社は知らぬと言う」
--裁判を引き受けなかった。山田さんを安倍事務所から守るために動かなかったということですか?
山田「そういうことですね。安倍事務所とのやりとりでは、広報はコンニャク問答をするわけです。
『それについてはお答えできません』とか。『そんなことを書いたら、むこう(安倍事務所)は怒るんじゃないの?』と広報に言ったら、『いいんです。これで。へんに説明しないほうがいい』。そんなやりとりをしていました。
そのうちに、むこう(安倍事務所)も静かになったから、『もう終わったのかな』と思っていた。それからひと月近く経ってから、急に『訴えた』という話が、『夕刊フジ』を通じてわかったんです。『ええ!? 何を考えているのかな』というのが印象でしたね」
--山田さんの裁判の資料を見ますと、日興コーディアルと安倍事務所の関係については、『サンデープロジェクト』のなかで、山田さんだけでなくほかの有識者もコメントしていますよね?
山田「そうなんです。しかもその内容は、ジャーナリストの町田徹くんを中心に月刊誌、週刊誌に書かれていることなんですね。しかも日興コーディアルの常務の実名入りで書かれているわけですよ。(『サンデープロジェクト』では)実名ではなく、ぼかして『というような噂がありますよね』と言いました。そうしたら、そこだけポンと取り出して訴えてきた。
<問題となったコメント> 【山田】日興證券に安倍事務所にすごく強い常務がおられて、まあ、その人が今度これをやって将来社長だなんていう噂がね、ありますよ。 |
山田「今回のように、まさかテレビの発言で訴えられるとは思っていなかった」
支援者のおかげで裁判費用はまかなえた
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安倍事務所側は、山田氏の発言によって「一般視聴者は、安倍事務所の秘書である原告3名は、東京証券取引所に不当な圧力をかけて日興證券の上場廃止を阻止したという印象を受けるのは明か」と主張する。しかし、山田氏は、テレビのなかで3名を特定する表現は一切していない。![]() |
山田「僕にカンパしてくれた人は、朝日新聞だけで300人近くいました
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