ソニーEXIT 青木・内田 「アラスカをさまよう狼のほうが自由で強くなれ、やりがいもある」
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左:内田和隆、右:青木崇行 →カディンチェ |
- Digest
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- リッチな人にだけ恩恵がある技術に疑問
- 社内政治で決まるのはおかしい
- 大学人脈、ソニー人脈で受託開発
- 近藤氏はI3(アイキューブド)研究所を設立、社長に
- ソニーでしか学べないものがあった
- 設立3ヶ月で自社開発サービスを受注
- ストリートビューの室内高級版
- 給料は1年以内にソニーレベルに戻せる
- 精神的にもすっきり
- 目に見えやすい仕事ができる
【Digest】
◇リッチな人にだけ恩恵がある技術に疑問
◇社内政治で決まるのはおかしい
◇大学人脈、ソニー人脈で受託開発
◇近藤氏はI3(アイキューブド)研究所を設立、社長に
◇ソニーでしか学べないものがあった
◇設立3ヶ月で自社開発サービスを受注
◇ストリートビューの室内高級版
◇給料は1年以内にソニーレベルに戻せる
◇精神的にもすっきり
◇目に見えやすい仕事ができる

リッチな人にだけ恩恵がある技術に疑問
だが青木崇行氏には、すぐにモヤモヤとした疑問が湧き出て、払拭できなくなった。
「大学時代からNGO活動でネパールやバングラデシュを見てきているので、テレビの画質が上がって何になる、誰が助かるのか、と。ハイエンド製品にしか乗らない技術開発をして、リッチな人にだけ恩恵がある技術の使い方は、つまらない」
とはいえ、会社を辞めて、即、起業するわけにもいかない。そこまでの自信はなかった。そこで大学にいったん戻って自分が得意とする技術を磨き、自分の守備範囲のなかで、どういう分野で事業化できそうなのか、模索することにした。
エーキューブド研究所の技術者というポジションを丸3年であっさり捨ててソニーを退職、2006年4月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の博士課程に進んだ。
青木の退職を聞いた周囲の反応は、「やっぱりね」。上司ともケンカしていたし、両親も「本人がよければそれでいい」と言った。当時は、大学に戻ってから、また大企業に再就職するのだろう、と思っていたようだ。
社内政治で決まるのはおかしい
その2年後、内田和隆氏も退職する。元ソニーCEO・出井伸之氏の肝いりで設立されたエー・キューブド研究所は、ストリンガー体制下でリストラ対象となり、廃止になったためだ。
「出井さんの政治力がなくなった時点で、研究所の行く末も見えていた。性能がいいから製品に乗るわけではなく、採用するか決める要素の中に、政治が入っているのはおかしい」。社内政治に左右されるよりも、自由に自分の力を試したい、と考えた。
「研究所が存続していれば自分は辞めなかった。研究所の廃止がきっかけです。自分の技術に自身があるので、35歳くらいまでなら、どこかに再就職できるはず、と思っていた」(内田氏)。父は何も言わなかったが、母は「ソニーを辞めるなんてもったいない」という反応だった。同期は「いつか辞めると思っていたよ」と言った。
内田が辞めることを聞いた青木は、一緒に起業することを打診。博士号はまだ取得していなかったが、 大学に戻って模索するなかで、ビジネス化できそうな領域も見えてきていたところだった。
「もし1人だったら、NPOをやっていたと思う」(青木氏)。青木は、子供のころよりボーイスカウト活動を始め、学部時代からネパール・バングラデシュなど途上国で環境教育を実践するなど、NPO活動を進めていた。だから、現地に仲間もいる。「途上国では200~300万円持っていけば数年は生きていける。たとえNPOで食えなくても、どこかの企業が貰ってくれるだろう、と思っていた」
大学人脈、ソニー人脈で受託開発
そうかといって、辞めた時点で、すぐにカネになる仕事が決まっていたわけでもなかった。
IPA(独立行政法人「情報処理推進機構」)の「未踏IT人材発掘・育成事業」として認定を受ければ開発費を得られるが、内田がソニーに退職届を出した2008年春の時点では、まだそれも通っていなかった。
だが、それほど不安はなかった。技術者なので、最悪、「受託開発」という手があったし、所属していた大学・企業を介したネットワークもあった。
たとえば、ウェブサイト制作。民主党が2009年総選挙のために設置したマニフェストサイト「東京ライフ」は、第4回マニフェスト大賞ベストホームページ賞を受賞(主催:ローカルマニフェスト推進地方議員連盟、共催:早稲田大学マニフェスト研究所)。その受託開発は、大学のコネクション(元SFC助教授の民主党・鈴木寛議員)から得て手がけた。
また、ソニー人脈では、ソニー出身でベンチャー支援を行う三根一仁氏(インスプラウト社長)から助言を得たり、ソニー出身者が設立した3次元ディスプレイや生体センサを開発する企業より医療・福祉用センサシステムのデータベース・ソフトウェア開発を受注している。「周りの人が仕事をくれるかんじがある」(内田氏)
それに、初期の設備投資に多額の費用が必要というわけでもない。会社を設立した際に一番かかった費用は、登記時に自動的に徴収される印紙代等の20万円ほどだった。「PCさえあればどうにかなる仕事なんです」(内田氏)
内田はソニーを退職して5ヵ月後の2008年8月、「室内3DモデリングシステムとAPIの開発」で、IPAの未踏IT人材発掘・育成事業に認定され、550万円の資金提供を受けた(2009年5月、開発した成果が認められ「スーパークリエータ」に認定)。外部から、技術力も認められ、看板ができた。
ソニー出身という信用、大学人脈にソニー人脈、そして政府機関が認めた技術力。ハイリスクな巨額投資も不要。こうして特段の困難もなく、2008年8月、2人で「カディンチェ」を設立。会社設立時のオフィスは内田氏の自宅とし、資本金100万円でスタートした。

近藤氏はI3(アイキューブド)研究所を設立、社長に
前述のとおり、2人とも、入社時より独立心を内に秘めていたわけでは、まったくなかった。
青木は学部時代、ユビキタスコンピューティング研究で有名な徳田英幸教授の研究室に所属していた。途上国でのNGO活動の影響もあり、グローバル視点で仕事をしたかった。海外営業の仕事に興味があり、商社やメーカーも受けた
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