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やはり大問題を起こしたトヨタ-3 元社員が語る、知ってる範囲で“戦死者”8人の異常

情報提供
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トヨタ自動車本社
©S.Remael / MYOP
(仏人カメラマン・ステファンルメル氏が2010年3月に撮影したものを提供して貰った)
 トヨタにとっては、メディアの指摘以上に、社内外を経験した元社員による提言は貴重なはずである。単行本『トヨタの闇』の反響として、元社員から有力な取材協力を得ることができた。トヨタ自動車で20年以上働き、数年前、働き盛りの40代で退職した元社員が、「自分が長年過ごした企業に、より良くなって欲しい、その為にはマスコミの役割も必要だ」との理由から、取材に応じることを申し出てくれた。この取材は2008年2月に行った。
Digest
  • 「先輩が幸せそうに見えなくなった」
  • 復活枠は1400~1500人いて1人だけ
  • 30年勤めないと損する退職金制度
  • 告別式で「昇格をお知らせします」
  • おまえらイスラム教、俺たちトヨタ教

「先輩が幸せそうに見えなくなった」

--トヨタを辞めた理由は?

「第一の理由として、尊敬する先輩もいたのですが、その先輩たちが、幸せそうに見えなくなった。たとえば基幹職だと、築50年ほどの独身寮の部屋を2つくっつけて改造した部屋をあてがわれる。とても住めるものではないです。

キッチンもないから、『メグリア』(利益2兆円生む「プチ北朝鮮」の実態参照)でパンを買って食べるわけですよ。ああいう生活は幸せとは思えない。自分も独身寮に入っていましたが、ぜひ見に行ってみてください。

第二の理由としては、封建的なカルチャー。中央集権で、重要なことはすべて、6~7人いる副社長が社長にお伺いを立てる『副社長会』という決定機関で決めている。その下は、各副社長をトップとしたピラミッド組織です。2万個の部品が必要だから、地方分権できない事情もある。

自分が入社したとき、社員6万7~8千人で年340~350万台でしたが、今では1千万台をうかがう勢いです(2007年度実績で単体で868万台を生産)。社員数はほとんど増えていないのに、3倍近くになっている。

そうなると、車を作ってもらうための社内政治が始まって、社内向け活動がどんどん増える。8割は内を向いてないとダメ。規模が拡大しても権限委譲をしないから、なんでもかんでも副社長会にかける。社員はそのための会議資料作成などに追われる。

章男さんはGAZOO事業(ユーザに対しITによるアフターサービス機能の充実を目指しGAZOO.comを展開)や中国事業を担当していた。章男さんが担当しているときだけは周りが何とか持たせるのですが、いなくなるとダメ。中国など、真っ赤っかの赤字です。

創業家の意向はとにかく絶大。10年ほど前は、章一郎さんが個別車種の担当者に、世界のこの地域でこれを売りたい、と指示をすると、それを受けて現場に、何台売れる見通しを示す報告書を作れ、と指示が来ていました」

※今回のリコール問題では、米国でのリコール届出も現地に権限が全くないことが米国議会で証言され、中央集権が問題視された。

復活枠は1400~1500人いて1人だけ

「三つめの理由は、人事評価に不満だったこと。言ったことは全て達成してきたのに、課長になれなかった。これはどういう意味かというと、上級専門職への昇格(キャリアパス図参照)は、入社9年目が最速の「特選」。2~3年遅れで、ほぼみんななれる。10年目が「一選」、11年目が「二選」、12年目が「三選」で、そのあとは「復活枠」となる。

その上の基幹職への昇格は、特選だと15年目です。そして同じく、一選、二選、三選と続く。つまり18年目までに基幹職になれないと、復活枠しかなくなる。復活枠というのは、各部門で年に1人とかです。1400~1500人いて1人だけだから、ほぼ絶望的になる。つまり、4年の間に昇格できなければ塩漬けになる仕組みです。毎年、1月1日付で昇格者が発表され、各自の机に紙が撒かれるから、誰が昇格したかも共有されます」

--人事評価で重要となる要素は何ですか?

「僕が入社9年目に特選で上級専門職になれなかった理由は、明確なんです。ある日、部長が、当日になって思いついたように20時から会議をやる、と言い出した。メンバーは部長、次長、課長、そして自分。20時ですよ?自分は予定が既にあったので、最初の30分だけ出て自分の意見を述べて帰った。その後、突然、評価を悪くつけられるようになったんです。属人的な人事でしょう?

昇格するには、上司の推薦を経て、妥当か否かを人事部も含めた成績査定会議で決めます。だから、部長とウマが合うかが重要。レーダーチャートでいうと、バランスがよくて円に近い人が一番損をしない。出世の秘訣は、市場や顧客よりも、とにかく社内を見ること。要するに、たとえばヨーロッパ担当の人なら、北米担当の人よりも高く評価されることが重要です」

--どんなタイプの社員が多いですか?

「いろんな意味で真面目。役人的にまじめ、営業にまじめ…。残っている人は、小役人みたいなタイプが多いです。出て行く人もいて、楽天のナンバー2として巨額の契約金でヘッドハンティングされた武田和徳氏が有名ですが、課長からユニクロの国内営業本部長に転職していった人も知っています」

--経営層まで昇格する人は?北米トヨタの大高英昭社長は、部下から訴えられていましたが(ほとんど報じられないトヨタのセクハラ問題参照)。

「大高さんについては、セクハラの事実関係は分かりません。ただ、直属の秘書の評判が悪かったのは確か。訴訟になったとき、直属の秘書から「いい気味よ、ざまあみろ」という趣旨のメールが私のところに来ましたから

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元社員が書いてくれたトヨタの退職金の仕組み。横軸が年齢、縦軸が貰える額を示す。

©S.Remael/MYOP名鉄三河線土橋駅。元町工場、本社工場、堤工場の中間に位置するが、ほとんどの社員は車で通勤するため利用しない

©S.Remael/MYOP豊田市周辺の道路は、必要以上に豪華に整備されている。ピーク時に比べ生産台数が減っていることもあり「道路はガラガラの印象」(仏人ジャーナリスト)だったという。

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ToyotaCS 2014/02/15 14:00
jb2010/05/14 06:30
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