やはり大問題を起こしたトヨタ-6 日本型統治機構の不全
![]() |
豊田市内の保見ヶ丘団地。多くの日系ブラジル人が住んでいる。©S.Remael / MYOP |
- Digest
-
- 「戦後日本システム」破たんの象徴
- 「消費者」も「政治家」も機能せず問題がグローバル化
- 「サービスキャンペーン」の台数も非公表
- 文庫版あとがき
「戦後日本システム」破たんの象徴
--日本は先進国だと思いますが、どうしてトヨタは日本で重い意味を持っているのですか?
日本が先進国なのは、物質的な豊かさにおいてのみです。欧米先進国に以下の点で劣ります。
第1に、マスコミ(ジャーナリズム)によるチェック機能が働かない。トヨタ自動車は2008年3月期に広告宣伝費を1000億円以上投じており、10年以上連続して1位の座にいました。新聞・テレビは広告を収益源の柱としているため、トップクライアントのトヨタには経営陣がビクビクしており、マスコミがコントロール下に置かれています。
特に昨年度より、日本の大手マスコミ企業(新聞・テレビ・雑誌)が続々と赤字転落し、広告収入を減らされたら会社存亡の危機です。今回のリコール問題を受けての報道も、内容がトヨタの援護射撃でないと企画が通らない。米国での動きを垂れ流すだけで、独自の調査報道はどこもやりません。だから、リコール届出台数の年次推移といった基本的なデータすら、国民はマスコミ報道を通して知ることができない。
![]()
『トヨタの闇』韓国語版を紹介する『エコノミスト』誌 第2に、労組が機能していない。日本的経営の特徴の1つである企業別労働組合(欧米は職種別)と終身雇用によって、トヨタ労組は経営側と一体化し、「カネと雇用」以外の労働時間や休暇について、経営側と戦いません。
日本は、戦後の急速な経済成長で物質的な先進国になっていく過程で、多くのものを犠牲にしてきました。
労働環境はその最たるもので、日本はヨーロッパ先進国と比べ、圧倒的に労働時間が長いうえ、「カイゼン提案」活動などの実質的なサービス残業や持ち帰り仕事も多く、時間も不規則。しかも、これは労使合意の上での強制的なものとなっており、社員に選択の余地がないために、過労死や過労自殺といった悲劇を生んでいる。
第3に、行政当局の監視が機能していない。自動車メーカーは3ヶ月ごとに国交省にリコール車の改善実施状況について報告を義務付けられますが、その情報すら国民には公開されない。国交省が国民よりもトヨタの立場でモノを考えている証拠です
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り4,626字/全文5,580字
嘘で塗りこめられた「お詫びCM」。全社改修といいながら、改修率すら非公開にしている。
本原稿は『トヨタの闇』文庫版に収録した
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
自動車業界。マスコミ。国家公務員。かれらは、あまりにも20世紀的すぎる。残念ながら、新時代の大黒柱にはなれない。
公共放送も日本経済の基幹産業だから、あからさまに批判しない。クロ現代でリコール問題をやったぐらい。日経・TXは頑張れ!万歳!だもん。長年の膿が出てきた訳か?このままだと日本沈没?
記者からの追加情報
会員登録をご希望の方は ここでご登録下さい
企画「マスコミが書けないトヨタ」トップ頁へ
新着のお知らせをメールで受けたい方は ここでご登録下さい
■企画趣旨に賛同いただき、インタビュイーを紹介または取材を受けていただける方には、会員ID(1年分)および薄謝進呈いたします。
ご連絡先E-mail:info@mynewsjapan.com