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新聞チラシ水増し請求疑惑で、広告会社が広告主に対し逆ギレ提訴

情報提供
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包装されたままの「押し紙」が、天井まで積み上げられている。岡山市内の新聞販売店で。
 広告主として新聞にチラシを出していたクリニックを営む医師が、今年7月、(株)アルファ・トレンドという広告代理店に訴えられた。チラシ35万枚分の手数料として192万円が未払いになっているから払え、というものだった。医師はこの代理店に対し、どの地域に何枚のチラシを割り当てたかを示すデータを過去にさかのぼって出すよう求めたが、代理店が応じなかったため、チラシ代金の支払いをペンディングしていたのだ。新聞社および代理店側が実売部数を隠している限り、チラシ料金の過大請求の疑いは晴れず、広告主による代金支払い拒否は続出するはずだ。(訴状は末尾でPDFダウンロード可)
Digest
  • 広告主に示す搬入部数にも疑惑

大阪市でクリニックを営む松岡潔(仮名)医師は、去る7月、大阪地裁から1通の訴状を受け取った。松岡医師を訴えたのは、(株)アルファ・トレンドという広告代理店である。

大阪読売広告社の元社員・小西達夫(仮名)氏が代表取締役を務める会社で、ミニコミ誌などへの広告も取り次いでいる。

訴状によると、未払いになっている折込チラシの手数料として192万円を支払えというのが請求内容。この裁判については「訴える側」と「訴えられる側」が逆立ちしているのではないかと考える人が少なからずいるかも知れない。

というのも、折込チラシの水増しが社会問題になっている状況のもとで損害賠償裁判が起こるとすれば、代理店か販売店、あるいはチラシ・ビジネスの「もとじめ」である新聞社が被告になるという見方が一般的になっているからだ。

松岡医師はクリニックを開業した2004年を皮切りに、宣伝媒体として新聞の折込チラシを利用してきた。これまでの支払い総額は1200万円を超えるという。

しかし、2008年11月に35万枚を発注したのを最後に新聞折込を中止した。代理店であるアルファ・トレンドに対する支払いにも応じていない。両者の対立の背景にどのような事情があるのだろうか?

◇不信感を募らせる広告主

わたしは1997年から「押し紙」とチラシの水増し問題を取材してきた。取材を通じて感じるのは、新聞業界への不信感を募らせる広告主が年々増えていることである。「押し紙」と一緒に多量のチラシが捨てられているのではないかという疑いを、かなり多くの広告主が抱いているのだ。

たとえば京都の家具チェーン店の社長は、数年前、わたしの目の前で電卓を指で叩きながら、「押し紙」が3割あるとすれば年間で900万円ぐらい騙し取られている試算になる、と打ち明けた。岡山市のあるパチンコ業者は、水増しが事実とすれば、訴訟を起こしてでも取り戻すと息巻いていた。

しかし、広告主はなかなか訴訟へと踏み出さない。その原因のひとつは、新聞の実配部数が把握できないために、チラシ水増しが立証できず、勝訴の可能性が低いことである。松岡医師も訴訟を視野にいれて、弁護士に相談したこともあるという。しかし、訴訟に踏み切らないうちに、逆に広告代理店から提訴されたのである。

◇紙袋の中にチラシの包装束

松岡医師がチラシの水増しを疑うようになった最初のきっかけは、徳島県でクリニックを開業している知人から、チラシにまつわる醜いエピソードを聞いたことだった。この医師もPRの手段として、チラシ(新聞折込ではなくて、全戸配布)を採用していた。ところがそのチラシが多量に捨てられていたことが、ふとしたきっかけで判明したのだ。

その引き金となったのは、ひとりの女性からの電話だった。女性は次のような趣旨のことを告げたという。

自宅の庭に紙袋が捨ててあった。不審に思って、中身をのぞいてみると大量のチラシがビニールに包装されたまま入っていた。そこで広告主である医師にこの件を電話通告した。

資金を投入して制作したチラシが、配布されることなく捨ててあったことに、女性は衝撃を受けた

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毎日新聞社の内部資料「朝刊発証数の推移」。

(上)08年10月度のABC部数。(下)代理店が広告主に示した新聞の搬入部数。後者が前者を上回っている。

チラシの水増しを示す山陽新聞・販売店の書類。この店の実配部数は1702部だった。しかし、広告主らは、チラシを水増しさせられていた。広告主にはブランド企業が名を連ねている。

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I112010/09/12 01:05

販売店や広告会社の姿勢にも問題はあるのだろうが、新聞社と販売店との関係が非対称で前時代的なものになっているのが根本問題。販売店や広告会社の努力やモラルだけで押し紙が無くなるとは思えない。

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