画像1:ファイザーが製造販売する禁煙補助薬チャンピックス。意識喪失、難聴、自殺、攻撃性といった重篤な副作用を引き起こすケースもあるにもかかわらず、「稀に吐き気がすることもある」とだけ説明して処方する医師もいる。
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ファイザーが日本で禁煙補助薬として販売している『チャンピックス』は、意識喪失、難聴、自殺、攻撃性といった重篤な副作用が起きるケースがあり、米国FDA調べでは重篤副作用件数ワースト1位になったこともある。なかでも危険度が高いのは、意識喪失だ。原発やパイロット、車掌、管制官など、命を預かる職業に就く人々が、チャンピックスを服用して突然意識を失った場合、大惨事になるリスクがある。にもかかわらず日本では、「副作用はせいぜい頭痛や吐き気程度」といった説明のみで患者に処方されている。(情報公開で入手した副作用事例86枚はPDFダウンロード可)
【Digest】
◇重篤副作用数で全米ワースト1
◇SSRIと似た構造
◇「副作用は吐き気のみ」医者
◇全360枚の情報公開文書
◇原発作業中に意識を失うリスク
◇ルンルン気分で死…
◇利害関係者が審議会で議決
◇「危険は承知している」ファイザー
◇タバコを楽にやめる方法
◇重篤副作用数で全米ワースト1
福島第一原発から放射性能物質が漏れ続ける異常事態が続き人体への影響が気になる人も多いが、現時点で放出されている放射性物質よりも「はるかに喫煙の方が発がんリスクが高い」(※骨髄移植の権威で、チェルノブイリ原発事故や東海村臨界事故で被ばく者治療に携わったアメリカのロバート・ゲール医師など=3月22日付時事通信より)と主張する識者もいる。
タバコは昨年10月からマイルドセブン300円→410円、セブンスター300円→440円、マルボロ 320円→ 440円など、一箱当たり100円以上値上がりし、禁煙圧力が強まった。今後ますます、禁煙したくなる人が増えることが予想される。
そこで問題なのは、医師が処方する「禁煙補助剤」に、看過できない副作用をもつ薬が公然と販売されている点だ。その薬とは、ファイザー(株)が製造・販売する「チャンピックス」である。
筆者がこの薬を知ったのは、昨年12月4日に都内で開かれた、抗うつ剤のシンポジウムでのことだった(主催:市民の人権擁護の会日本支部、場所:千代田区・星陵会館、シンポジウム名「子ども・若者の未来を守ろう~レッテルや薬に頼らない真のメンタルヘルスを考える~」)。
その席で、「精神科処方を考える会」世話人の中川聡氏が、スライドに映した「アメリカ食品医薬品局(FDA)の2008年第一四半期(1月~3月)の『副作用の重篤事例』」という表を指してこう言った。
「ファイザーが製造・販売する禁煙補助剤には、自殺や暴力といった副作用があり、今、アメリカで問題になっています。これは日本でも販売されています」。その表によると、なんとアメリカ国内での重篤事例のワースト一位はその禁煙補助剤で、1001件に上るという。中川氏がその話をした時、会場は一瞬、どよめいた。それほど日本では知られていない。
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画像2:画像上は、米国の民間団体「安全な薬物治療のための研究所」が2008年に発表したレポート。バレニクリン(チャンピックス)が1,001件でワースト1位。画像下は、チャンピックス説明図。 |
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◇SSRIと似た構造
禁煙しようとして命に危険が及ぶ…そんなことがあっていいわけがない。そう思い、筆者は後日、この薬について調べた。するとたしかに、画像2のように、アメリカではバレニクリンという薬による副作用が頻発していることがわかった。
この薬は、日本では『チャンピックス』という名で、2008年1月25日に厚生労働省により承認され、同年5月から発売されている。日本での出荷量は、ファイザー事業広報部のヤマモト氏に確認したところ、「アメリカ本社の指示により公表していません」というのみで、隠蔽されている。
ファイザーの説明によると、この薬の特徴は、次のようなものだ。脳細胞を変化させるのである。
もともと人間はタバコを吸うと、画像2下のように、脳内にある、「ドパミン作動ニューロン」という脳細胞に発現した「α4β2ニコチン受容体」に、「ニコチン」が結合する。すると、ドパミンが放出され、人は心地よいと感じるようにできている、という。
しかし、チャンピックスの成分「バレニクリン」は、ニコチンの代わりに「α4β2ニコチン受容体」に結合する。その結果、ドパミンの放出量が少なくなり、タバコを吸いたいという切望感が軽減するのだという。また、チャンピックスを飲みながらタバコを吸った場合、バレニクリンがニコチンを遮断しているので、以前よりタバコをおいしいと感じなくなる、という。
※『話題のクスリ38 α4β2ニコチン受容体部分作動薬(禁煙補助薬)チャンピックス錠0.5mg、1mg(バレニクリン酒石酸塩錠)』(著:ファイザー㈱、北海道薬剤師会雑誌26(2)2009年2月号より)
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このように、ほかの禁煙補助剤はニコチンを微量に含むのに対し、チャンピックスはニコチンを含まない。その代わり、「脳細胞に直接影響を及ぼす」というのがポイントで、これは抗うつ剤SSRIと原理が似ている。しかも後述のように、副作用もSSRIと酷似している。
◇「副作用は吐き気のみ」医者
チャンピックスは、日本では、病院に行って処方されない限り、購入することはできない。1月の記事のように、筆者は年末に一箱吸って以降、タバコは止めているが、年末には吸ったばかりなので、まだ喫煙者も同然だ。本件取材のため、喫煙者として病院に行くことにした。
まず、チャンピックスを処方している病院を調べた。ネットで検索したところ、全国禁煙外来・禁煙クリニック一覧という、おあつらえ向きのHPがあったのでクリックしていくと、近場で見つけた。
病院に入り、初診時の手続きを済ませた後、「今日はチャンピックスが欲しいのですが…」とたずねると、.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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画像3:チャンピックス副作用の情報公開開示文書。副作用により、階段を下りる途中で意識を失い転倒。その2日後には車を運転中に意識を消失し、衝突音で意識が戻った、と記載。 |
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画像4:チャンピックス副作用の情報公開開示文書。母親に対して、手がつけられないほど粗暴に振る舞い、翌日にはルンルン気分になり、死ぬと決めた、と記載。 |
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画像5:チャンピックスの安全性について「問題なし」と議決した審議会メンバー10人。なかでも悪質なのは座長の首藤紘一氏。ファイザーなどの製薬企業の会費で運営されている財団の理事長という立場。客観性、公平性はゼロといっていい。 |
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