レコード会社31社が作曲家・穂口氏を訴えた高額訴訟、証拠は128個だけ 「見せしめ」狙う
発足したばかりの「STOP!違法ダウンロード広報委員会」のサイトにアクセスすると、いきなり上記の「警告」が表示される。10月1日から施行された「改正」著作権法は、音楽とは相いれない極めて危険な側面も孕んでいる。 |
- Digest
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- ミュージックゲート裁判
- 事実とかけ離れた訴状の数字
- 訴状の記述は事実か?
- 訴状の数字と準備書面の数字の不一致
- 見せしめ裁判の可能性も
- 「改正」著作権法の悪夢
ある日、突然に警察署から出頭を命じられる。取り調べ室で、「違法ダウンロード」の疑いで詰問されたあげく逮捕。罰金、200万円――。
穂口雄右氏。作曲家。代表作に、「春一番」「夏が来た!」「微笑がえし」「年下の男の子」「わな」「林檎殺人事件」「二十才前」「ポケットいっぱいの秘密」など。 |
メールを発信したり、ウエブサイトにアクセルするのと同じ感覚でインターネットによる音楽配信を楽しんできたわれわれのだれもが、10月1日から、こんなリスクにさらされることになった。「改正」著作権法のうち「違法ダウンロード」を罰する法律が施行された。
心を癒したり、勇気を与えたり、イメージの世界へ人々をいざなうはずの音楽が、刑罰の引き金や係争の原因になりかねない状況が忍び寄ってきたのである。
違法にアップロードされた音楽や映像をダウンロードする行為を違法とする法律は、すでに2010年に施行されていたが、刑罰規定はなかった。しかし、今回の「改正」により、2年以下の懲役、あるいは200万円以下の罰金を課すことになった。しかも、刑罰化は議員立法というかたちで、ほとんど審議もせずに矢継ぎばやに成立したのである。
刑罰を伴う法律がこのような形で成立するのは異例だ。
その背景には「違法ダウンロード」が、CDなどの売り上げを抑制していると考えるレコード会社などの思惑があるようだ。
実際、日本レコード協会の調べによると、CDアルバムの生産金額は、2002年が約3713億円だったが、2011年には約1653億円に激減している。
こうした状況の下で、「違法ダウンロード」に対する音楽関係者の被害者意識はかなり強いらしく、10月1日を前に、「STOP!違法ダウンロード広報委員会」を設立した。構成メンバーは次の通りである。
日本レコード協会日本音楽事業者協会
日本音楽制作者連盟
日本音楽出版社協会
日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター
演奏家権利処理合同機構MPN
映像実演権利者合同機構
なお、日本音楽著作権協会は、「協力」という形で一定の距離を置いている。
ミュージックゲート裁判
ミュージックゲート裁判の舞台となっている東京地裁。 |
レコード会社の関係者らの焦りを象徴する裁判が、現在、東京地裁で進行している。マイニュースジャパンでも報じてきたミュージックゲート裁判である。
原告はソニー・ミュージックレコーズや日本コロムビアなど日本を代表するレコード会社31社。被告はキャンディーズの「春一番」や「微笑がえし」などを世に出した著名な作曲家・穂口雄右氏が経営するミュージックゲート社である。
同社は、YouTube上の全ての動画(ほとんどが合法)が、スマートフォンなど移動通信機器で視聴できるように、「ファイル変換」を行うTubeFireというサービスを提供してきた。(提訴後にサービスは休眠)
このサービスが「違法ダウンロード」に当たるとしてレコード会社側が、2011年8月、約2億3000万円の損害賠償を求める裁判を東京地裁で起したのである。「超」が付く高額訴訟のうえに被告が著名な作曲家なので、難解な音楽著作権問題にも公衆の関心が集まっている。
しかしこの裁判、審理が進むにつれて、訴状に書かれたことに十分な裏付けがないことが、分かってきた
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争点になっているファイルの個数を示した訴状の記述。後に原告が証拠として提出したファイル数とはかけ離れていた。
著作権違反における刑事事件追及の流れ。出典は『違法ダウンロードで逮捕されないための改正著作権法』(朝日新聞出版、鳥飼総合法律事務所著)。
日本レコード協会が公表している「音楽ソフト種類別生産金額の推移」。
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