志望動機をツリー化して整理し、うまく伝える方法
【図1】志望動機のツリー図の概要。リクルーター時代には、このような図を用いて、学生に志望動機を聞いていた。 |
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- 志望動機は「なぜそこなのか?」をツリー化してまとめる
- 志望動機のための情報リサーチの仕方
- 志望動機の書き方 サンプル
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志望動機は「なぜそこなのか?」をツリー化してまとめる
私がNTT西日本のリクルーターをしているとき、学生に志望動機を尋ねる際、ツリー図(樹形図)を書きながら、次の流れで聞いていた。
「なぜ商社や金融でなくインフラ業界なのですか?」「なぜ電気ガス、鉄道でなく通信なのですか?」
「なぜ通信キャリアなのですか?」
「なぜKDDIやSoftBankでなくNTTを選んだのですか?」
「なぜNTT東、NTTコム、NTTドコモ、NTTデータの主要五社の他のグループ会社でなく、NTT西なのですか?」
・・・これらを学生の目の前でツリーを書き出しながら、聞いていた。
この志望動機の書き方を教わったのは、私の兄の友人の友人で、三菱東京UFJ銀行で働いている人に話を伺った時であった。これはリクルーター面談でなく、個人的なOB訪問であったため、正直な話を聞くことができた。
「なぜ、商社やメーカーでなく、金融業界なのか?」「金融ならば、なぜ保険や証券でなく、銀行(メガバンク)なのか?」「なぜ、みずほ、三井住友、りそな銀行でなく三菱東京UFJなのか?」これらの質問に対して、ちゃんと「自分の答え」を用意しておくと良い、とアドバイスを受けたのがきっかけであった。
そのOBには様々なエピソードを聞いた。私が就活をしていた当時(2006年)は、東京三菱銀行とUFJ銀行が合併した年であった。そのOBは東京三菱銀行の入行組で、UFJも受かっていたが、内定を辞退すると、呼び出しを食らって、数人の銀行員に囲まれて説教をさせられ、土下座をさせられた、と言っていた。そのためか、UFJ銀行との合併に対して、強い嫌悪感があったという。まさにドラマの『半沢直樹』的な世界であった。
さらに、このOBにお礼のメールを送りたい旨を伝えたが、会社のメールアドレスに送るのは厳禁だ、と言われた。PCのメールアドレスはすべて管理されていて、もし学生のメールが会社PCに見つかってしまうと、コンプライアンスに引っかかり、人事評価的にもまずい、という。
これらエピソードはOBから聞いた事実ではあったが、さすがに志望理由で「他社の雰囲気が体育会系で自分には合わないから」や「堅苦しい雰囲気よりは自由闊達な業界がいいから」という正直な答えを使うことはできない。素直にそう感じたとしても、後付でロジカルな内容にして、「なぜ他社・他業界にしないで、そこを選択するのか」を用意したほうが良い。
これをツリー化してまとめて、自分で「なぜ」を入れると、明確に志望動機の説明がしやすくなる。そのツリー図の概要として【図1】を参照して欲しい。
とは言うものの、実際に学生相手に一緒になってツリー状の志望動機を書き出してみようと思っても、うまく進まない場面があった。うまい志望動機が出せないパターンとしては、以下であった。
(1) 「動機が定まっていない」:視野を広げるという意味でとりあえず受ける会社がたくさんエントリーしているものの、「なぜそこを選択したのか?」の答えが用意できていない。また、動機が固まっていないのはほとんどの学生で見られる。
(2) 「漠然とした抽象論になる」:「なぜインフラ業界を志望したのですか」という問いにし対して「世の中に大きな影響を与える仕事ができるから」と答える学生があまりにも多かった。確かに大きな影響を与えるが、電力、ガス、鉄道でも、さらに新幹線や航空機の重要な部位のネジを納品している大阪の小さな町工場に対してもそれは言えてしまうのではないか?と思った。
自分自身が転職活動でとりかかったはじめのころは、あまり厳密なロジック・ツリーは意識しないほうが良い。あくまで、事実ベースで「なぜ?」に対する答えを用意しておく。
【図2】NTT西日本の志望動機のサンプル。働いたことがない学生であっても、自分の動機をできるだけ正確に把握することが必要である。反面教師的に、私が新卒の就活時代のものをありのままに書いてみた。リクルーター面談をしていて、NTT東とNTT西との違いは?という問いが難しくその回答を伝えていた。 |
では、事実をどのように用意するか?私はリクルーターの時、OB訪問や会社説明会の生の情報を手に入れるとよい、とアドバイスしていた。自分がコンサルになったつもりで様々な情報源から調査するとよい。
志望動機のための情報リサーチの仕方
就職活動は、たくさん会社を受ける中で、一つ一つじっくりと取り組むのは無理があるので、ポイントだけを抑える。以下、(1)から(5)までのうち、下に行く程バリューのある事実と言える。
(1)会社が一方的に与える情報:パンフレット、採用ホームページに書かれている内容を、必要箇所だけピックアップする。パンフレットや採用ホームページは会社の校正が入った上でオープンになっているものなため、そのままコピーをすると非常につまらない内容になる。
(2)会社説明会:会社説明会で直接社員に「他社との違いは?」に関する答えを聞き出す。もしくは、他社との違い、自社の強みなどを言うことは多いので、しっかりメモを取る。面接でも、「説明会で某部署の誰々さんが言っていた」とファクトとして語ることができる。リクルーターをしているとき、「NTT東とNTT西との違いは?」という問いに応えられる学生はほとんどいなかった。私が学生時代答えていたのは、「東は東京圏一挙集中型であるのに対し、西は中核都市分散型で、西のほうが地域発展に貢献している」であったが、これは会社説明会で聞いたものを肉付けした答えであった。
(3)有価証券報告書:有価証券報告書の「会社の概況」の「事業の内容」、および「事業の状況」の「業績等の概要」・「生産・受注及び販売の状況」・「対処すべき課題」・「事業等のリスク」あたりを参考にすると情報が見つけやすくなる。
(4)ネット上の第三者による情報: MyNewsJapanの「企業ミシュラン」、「Vorkers」、「転職会議」など実際に働いている人のインタビューや転職者用のサイトから、情報を手に入れる。しかし、「Vorkers」と「転職会議」は匿名での書き込みであるため、情報の信憑性については注意が必要。
(5)社会人訪問:情報収集・人脈獲得のためのOB訪問をこなし、最新の生の情報を手に入れる。サークル、ゼミなどの先輩など大学のコミュニティだけでなく、飲み屋で仲良くなった人のツテを使うこともアリである。私の場合、大学時代の飲食店のアルバイト先のお客さんで懇意になった慶應OBの娘さんの旦那さんを紹介してもらった。早稲田OBでメガバンクから政府系機関に転職した人あったが、メガバンクの生々しい内情を聞くことができた(それでメガバンクは志望先から外した)。また、ユニークな例として、住友商事が大学OB訪問用のページを用意している。OBと直接コンタクトを取ることができる情報インフラを用意してくれる会社もある。
しかし、実際に就職活動をしている学生には、就職活動にかかる費用を工面するためにアルバイトをしている人は多いかと思うし、あまり情報収集に時間を取られてしまうのは時間の無駄になってしまうところがあると思われる。実際にどんなものを作るかイメージさえ持ってもらえればよいので、手っ取り早く志望動機の書き方を、サンプルで示してお伝えしたい。
【図3】アビームコンサルティングの志望動機のサンプル。筆者の転職活動の時のもの。ITコンサルと言っても戦略的な案件を抱えるファームもあれば、逆に戦略系コンサルでもBPR案件などのIT案件を持つファームもあるので、厳密なMECEを作るのが難しいところがある。MECEにはあまりこだわらなくてよい。 |
志望動機の書き方 サンプル
志望動機をツリー化してどのように語るか、であるが、私の新卒時代のNTT西日本のパターンと、転職活動の時にアビームコンサルティングについて書いたものを、以下に実際に示す。
【図2】がNTT西日本、【図3】がアビームコンサルティングである
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【図4】筆者の動機の変遷。自分の動機をさらけ出すが、振り返ると学生の就職活動のうちに正確に動機を把握する必要があったと考える。
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「レベル感」なる謎用語。
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